#73 6月26日(金) 相場レポート

株式市場動向

金曜日の米国株式市場では、主要ハイテク株や金融株の動きが目立ちました。特に人工知能関連企業の新規公開株であるSpaceXが、FTSE Russellによるリバランスの一環としてラッセル1000指数に採用される事実が市場の関心を集めました。SpaceXの株価は上場直後の急騰から25%下落しており、利益貢献までに数年を要するとの懸念からショートポジションが構築される一方で、今回の指数採用や約1週間後に控えるナスダック100指数への採用により、インデックスファンドから少なくとも54億ドルの機械的な買い入れ需要が発生する見通しです。また、OpenAIがハイテク株のボラティリティを背景に新規公開株の時期を2027年まで延期することを検討しているとの報道を受け、主幹事を務める大手投資銀行を中心に金融セクターの株価が下落しました。全体として、投資家の関心は将来の成長を約束する企業から、現在のボトルネックを解消し即座に利益を上げているサプライヤー企業へとシフトする傾向が強まっています。コロンビアの株式市場では、大統領選挙後の市場の期待感が剥落し、ベンチマーク株価指数が月曜日に4%超下落して2020年3月以来最悪の週間パフォーマンスを記録するなど、新興国市場でも警戒感が広がりました。

東京株式市場は、前日に日経平均株価が3,100円以上値上がりして史上最高値を更新した反動や、米国テック株の下落、アジア市場の急落が重なり、記録的な急反落となりました。日経平均株価は寄り付きから700円を超える下げで始まると、前日に大きく買われたAI・半導体関連銘柄を中心に売りが膨らみ、早々に下げ幅を1000円に広げました。後場には一時3,700円以上下落して69,000円の大台を割り込み、一時は68,639円まで下落する場面もありました。最終的な終値は前日比3,505円46銭安の69,360円88銭となり、7万円台を大きく割り込んで取引を終了しました。この3,500円を超える下落幅は、2024年8月5日の4,451円安、1987年の3,836円安に次ぐ、歴代3位の大きさとなります。

一方で、東証プライム市場全体の値上がり銘柄数は915銘柄、値下がり銘柄数は613銘柄となり、日経平均株価が急落した一方で全体の半数以上が値上がりするという地合いの歪さが際立ちました。これは、日経平均株価への影響度が極めて高い一部のネガサ半導体関連株や情報通信株に売りが集中したことが要因です。時価総額加重平均であるTOPIXは前日比1.3%安の3,900ポイント台にとどまり、日経平均株価の4.2%近い下落率に比べて底堅く推移しました。また、東証グロー市場250指数は2.5%安と大幅な反落となり、新興市場の主力株も総じて軟調な展開となりました。

為替・金利・コモディティ

【為替市場】

コロンビアの大統領選挙で親ビジネス派のアベラルド・デ・ラ・エスプリエラ氏が僅差で勝利したことを受けたペソの急上昇は一服し、厳しい財政現実や原油価格の下落への懸念から、今週のほぼすべての取引セッションでペソは下落に転じました。

【金利動向】

コロンビア政府の不透明な財政再建計画や新閣僚人事を前に投資家が慎重姿勢を強めた結果、コロンビア政府国債の対米国債スプレッドは今週連日拡大し、特に流動性の高い2036年満期国債の価格が下落しました。南アフリカのヨハネスブルグ市は財政破綻の危機に直面する中で、2016年に発行された14億4000万ランドの国内債券を完全償還し、投資家への返済を優先させました。

【コモディティ市場】

国際指標であるブレント原油先物価格は、米国とイランの暫定和平合意に伴うペルシャ湾からの供給回復を背景に下落し、金曜日には1バレル72ドル未満に落ち込んで開戦前の2月27日の水準である72.48ドルを下回りました。サウジアラビアがペルシャ湾の港からの輸出を再開し、紅海沿岸のヤンブ港からの出荷も日量410万バレルに増加させたことで供給過剰感が強まり、ウェスト・テキサス・インターミディエイト原油は一時70ドルを割り込み4%下落しました。これに伴い、大型原油タンカーの運賃も急落し、サウジアラビアから中国への輸送運賃は火曜日の514,000ドル超から金曜日には287,000ドルへと44%低下しました。一方、米国の天然ガス先物価格は、日中の気象予測が平年より低い気温を示したことから、ニューヨーク商業取引所の7月限が3.3%安の100万BTUあたり3.231ドル、8月限が0.5%安の3.279ドルと大幅に下落しました。

マクロ環境・政策動向

【地政学リスク・外交】

米国とイランの間で先週締結された暫定和平合意は非常に脆い状況にあります。ドナルド・トランプ米国大統領は金曜日、イランがホルムズ海峡を通過する貨物船に向けて4機の攻撃型ドローンを発射し、台湾のエバーグリーン・マリンが運航するシンガポール船籍のコンテナ船エバー・ラブリーに命中させたとして、イランによる明確な停戦合意違反を非難しました。国際海事機関の推計によると、ホルムズ海峡の歴史的な航路には依然として約80個の機雷が残存しており、運航の安全確保に向けた大きな障害となっています。また、オマーン政府が環境汚染対策や航行支援のサービス名目で通過船舶に手数料を課す方針を欧州当局者に伝えたことで、米国や欧州などの間で海事法違反にあたるとの懸念が浮上しています。アラブ首長国連邦では、技術的誤作動を原因とするミサイル脅威の緊急アラートが全国の住民の携帯電話に誤配信され、一時緊迫した状況となりました。

【金融政策】

米連邦準備制度理事会のミネアポリス連邦準備銀行のニール・カシュカリ総裁は、中東情勢のみならず経済全般に広がる広範なインフレ圧力を考慮し、今年の利上げ回数を1回と想定していることを明らかにしました。5月までの1年間で個人消費支出デフレーターが4.1%上昇し、目標の2%を5年以上上回り続けている事実が背景にあります。欧州中央銀行の政策担当者がポルトガルでのシンポジウムに集まる中、ユーロ圏の6月消費者物価指数上昇率は、原油価格の下落を反映して前月の3.2%から3.0%へ減速するとの予測が示され、イラン戦争開始以来初の鈍化となる見通しですが、コア物価上昇率は2.6%での高止まりが見込まれ、追加利上げの可能性を排除していません。カナダでは第1四半期の実質国内総生産が年率換算で0.1%減少し、2四半期連続 of マイナス成長を記録したため、エコノミストは2026年の成長率予測を0.7%に引き下げ、カナダ銀行が2.25%の政策金利を年末まで据え置くと予測しています。

【制度・政策】

ドナルド・トランプ米国大統領は、米国企業を対象としたデジタルサービス税の導入を検討している欧州諸国に対し、既存 of 貿易協定を無効化してすべての輸入品に即座に100%の関税を課すと表明し、圧力を強めました。これに対し欧州委員会は、当該税制は特定の国を差別するものではなく、すべての巨大企業に適用される正当な主権の行使であると反論しています。米国国内では、トランプ政権による一時保護ステータスなどの人道支援プログラムの縮小や、ハイチおよびシリアからの保護剥奪を容認した最高裁判所の判決を受け、これまで合法的に就労していた数十万人の移民が法的就労権を失い、影の労働力へと移行する事態が発生しており、医療や建設などの現場で深刻な人手不足を引き起こしています。カリフォルニア州では、地方税を引き上げる際の可決要件を単純過半数から3分の2の賛成に引き上げる住民投票が11月に実施されることが決定しました。中国では、全人代常務委員会が深刻な規律違反を理由に軍の国会議員6人の代表資格を剥奪し、国防部門における習近平国家主席の粛清が継続していることが示されました。タンザニアでは、新憲法制定や野党指導者トゥンドゥ・リス氏の釈放を求めるZ世代アクティビストのデモを前に、パトロバス・カタンビ内務相がすべての政治集会を即時禁止する指示を出しました。国連機関の推計によると、ベネズエラで発生した地震により約200万棟の建物が被害を受け、67億ドルの直接的損害が発生しました。

米国個別銘柄動向

【テクノロジー】

・Apple Inc.:初のタッチスクリーンを搭載し、Dynamic Islandおよび有機ELディスプレイを採用した14インチおよび16インチのMacBook Proを、現行のM5 ProおよびM5 Maxチップを用いて今年末から来年初めにかけて発売する計画です。

・BlackBerry Ltd.:同社の安全認証済みオペレーティングシステムであるQNXが世界で2億7500万台の自動車に搭載され、人工知能による代替リスクが低いことをジョン・ジアマッテオ最高経営責任者が説明しました。通期の売上高見通し上方修正と好決算を受け、株価は週間で30%超上昇しました。

    【金融】

    ・Morgan Stanley:OpenAIの新規公開株延期検討の報道を受け株価が4%以上下落しました。同社が率いるグループは、シカゴ市の駐車メーターの75年間リース権残高をStonepeak Partnersに25億ドルで売却することで合意しました。

    ・Goldman Sachs Group Inc.:OpenAIが上場時期を2027年まで遅らせることを検討しているとの報道が嫌気され、株価が4%超下落しました。

    【暗号資産・SPAC】

    ・Cantor Equity Partners I Inc.:暗号資産市場の冷え込みを背景に、ビットコイン蓄積企業であるBSTR Holdings Inc.との合併取引において、投資家に対し当初の約束の約3分の1への減額を容認しました。

    ・BlackRock Inc.:同社の現物ビットコイン上場投資信託であるIBITから今週8億6000万ドルの資金が流出し、過去最長となる7週連続の流出超過を記録しました。

    ・TLGY Acquisition Corp.:デジタル資産財務企業であるStablecoinX Inc.を吸収合併した事実が発表された後、株価が前日の14.90ドルから3.87ドルへと約60%急落しました。

    【自動車】

    ・Tesla Inc.:ヨーロッパ市場において価格引き下げと2%の低金利ローン施策が功を奏し、イーロン・マスク最高経営責任者への政治的反感があるにもかかわらず、1から5月の販売台数が前年同期比77%増加しました。一方で、税制優遇の廃止により第2四半期の米国販売台数は20%減少したと推計されています。

    日本個別銘柄動向

    【情報通信・半導体・大型ハイテク】

    ・ソフトバンクグループ(9984):前日比14%近い急落となりました。出資先である米OpenAIが、2026年秋頃に計画していた新規上場(IPO)を2027年へと延期することを検討しているとニューヨーク・タイムズ紙が報じたことが主因です。OpenAI社内では財務基盤の脆弱さや、競合であるアンソロピックの「クロード」、グーグルの「ジェミニ」との激しい顧客獲得競争による苦戦、チャットGPTの利用者数が9億人付近で停滞していることなどが懸念されていると伝わりました。また、保有する米アーム株が米国市場で3%安(4日続落)となったことも響き、日経平均株価を1銘柄で700円近く押し下げました。

    ・アドバンテスト(6857):前日比10%安と急反落しました。前日は15.1%高と急騰して実質的な上場来高値を更新し、日経平均株価を1,130円押し上げる牽引役となりましたが、本日は利益確定売りや売り方の買い戻し一巡に伴う売りが膨らみ、日経平均株価の最大の押し下げ要素となりました。

    ・キオクシアホールディングス:11%〜12%の大幅反落となり、10万円の大台を割り込み93,000円あたりまで下落しました。前日は、米マイクロン・テクノロジーの好決算(売上高が前年同期比4倍、純利益が15倍)を好感して12%急騰していましたが、直近の急ピッチな上昇に対する加熱感や、過去の巨大な大陰線レンジでの戻り待ちの売りに押される形となりました。なお、株主総会において、CFOが早期の株式分割の発表や大胆な株主還元(配当重視)の意向を示したことが確認されています。

    ・東京エレクトロン(8035):大幅に下落しました。同社の川井社長が番組に出演し、AI実装の進展(エージェントAIやフィジカルAIへの拡大)に伴うGPU、CPU、高帯域幅メモリ(HBM)、最先端NAND(270層から400層へ)、先端ロジック(3ナノから2ナノへ)の需要の強さを強調しました。同社が世界シェア91%(最先端EUV用ではほぼ100%)を誇る塗布現像装置(コーターデベロッパー)の今期売上高が前期比50%以上増加する見通しであり、前工程製造装置市場全体(20〜25%増予測)を大きく上回る41%の増収を計画していると明かしました。

    ・任天堂(7974):4%近い下落となり、年初来安値を更新しました。競合であるマイクロソフトの「Xbox」の値上げ発表を受け、任天堂が展開する「ニンテンドースイッチ2」(5月に1万円値上げ実施)についても、部材・メモリ価格の高騰によるさらなる採算悪化や、再値上げによる顧客離れの懸念が連想されました。

    【バリュー株・その他】

    ・ニップン(2001):年初来高値を突破する強い動きをみせ、上場来高値(2,880円)に接近しました。アクティビストとして知られるストラテジック・キャピタルが、同社株を5.09%保有したことが大量保有報告書で判明しました。保有目的として、2026年8月末までに有利子負債の活用や株主資本の抑制による資本構成の改善、保有する有価証券や賃貸不動産(253億円規模)の処分を求める意向が示されており、経営効率化への思惑から買いが集まりました。

    ・近鉄グループホールディングス(9041):アクティビストの野村氏(村上ファンド系)が5月下旬に2.7%の株式を保有していることが判明し、注目されています。19日の株主総会では株主からスピード感のない経営への批判が出ました。同社の不動産事業の総資産利益率(ROA)は3年平均で2.3%にとどまり、大手私鉄15社の中で最下位グループとなっています。大阪上本町駅や東京・白金台(シェラトン都ホテル東京)の大規模再開発が構想段階で遅れている実態があり、市場からはホテルなどの資産売却も含めた抜本的な見直しが期待されています。