#76 7月1日(水) 相場レポート

株式市場動向

    2026年7月1日の米国株式市場は、主要指数が軟調に推移し、第3四半期の初日を小幅な下落で開始しました。ダウ・ジョーンズ工業株平均は前日比13ポイント、0.1パーセント未満の下落となる52,305付近で取引を終え、一時は取引時間中の最高値を更新したものの、終値ベースでの記録更新には至りませんでした。S&P500種株価指数は0.2パーセント下落、ナスダック総合指数は0.7パーセント下落してそれぞれ終了しました。前日まで2営業日連続で上昇し、前日に発表された第2四半期の騰落率が2020年以来の最良の四半期となるなど好調を維持していましたが、当日は高値を維持してきた半導体セクターの株価が大きく下落したことが指数全体の重荷となりました。市場では、投資家がこれまでの株高を牽引してきた大型ハイテク株から、上半期に売り込まれていたソフトウェア銘柄などへ資金をシフトさせるセクター間の循環物色の動きがみられました。シタデル・セキュリティーズのデータによると、5月から6月にかけての個人投資家による取引活動は過去最高を記録しており、市場の押し目局面では下落日に平均的な日の3.5倍にのぼる買いを入れるなど、市場の下値を支える構造的な要因となっています。一方で、翌日に控えた公式雇用統計の発表や、今後の連邦準備制度理事会による利上げへの警戒感、さらには米国・メキシコ・カナダ協定の長期更新見送りといった貿易政策への懸念が投資家心理を冷やす要因となりました。

    東京市場では、日経平均株価が3日続伸し、前日比412円64銭高い70,474円96銭で終了しました。朝方は米国のハイテク株高を引き継ぎ、一時は前日比1,900円以上上昇して72,000円に迫る71,962円34銭まで買い進まれる場面もありましたが、その後は利益確定売りに押されて急激に失速しました。東証グロース市場250指数は1パーセント超下落し、3日ぶりに反落しました。

    アジア市場では、台湾加権指数が2%超上昇して3日続進したほか、上海総合指数も小幅に上昇して3日続進しました。一方で、韓国総合指数は朝方に一時2%近く上昇したものの、その後急落して一時4%近く値を下げるなどボラタイルな展開となり、最終的に2%超の下落で終了しました。なお、香港市場は休場となっています。

    為替・金利・コモディティ

      【為替市場】

      外国為替市場では、ドル・円相場が1ドルあたり162.61円の水準で推移しました。個別通貨の動きとしては、チリの経済活動を示す指標が予想外に収縮したことを受けてチリペソが売られ、対米ドルで最大0.9パーセント下落して新興国通貨の下落を主導しました。

      【金利動向】

      債券市場では、連邦準備制度理事会のケビン・ウォーシュ議長が将来の金利政策に関するフォワードガイダンスを否定する発言を行ったことを受けて、金融政策に敏感な米2年債利回りが一時セッションローまで低下し、最終的に4.15パーセント付近で推移しました。米10年債利回りは前日比0.02ポイント上昇の4.48パーセントまたは4.49パーセントと、全体として利回りは上昇して終了しました。市場では、金融政策の透明性が低下することに伴うボラティリティの上昇を見込んでタームプレミアムの上昇を警戒する動きが出ています。短期金利市場では、7月の財務省短期証券の供給増加を見込んだSecured Overnight Financing Rateと実効フェドファンド金利のスプレッド取引が活発化しており、CMEグループの先物市場における出来高が過去最高を記録しました。

      【コモディティ市場】

      原油市場では、米国とイランの間で進展している暫定和平合意および停戦交渉の進展を背景に、ホルムズ海峡の通航が再開しつつあることから供給過剰感が強まり、価格が大幅に下落しました。ロンドン市場のブレント原油先物は前日比2.4パーセント下落の1バレルあたり71.23ドル、ニューヨーク市場のWTI原油先物は前日比2.0パーセント下落の68.11ドルまたは68.06ドルで取引を終えました。これにより、米国産の Mars などの重質炭化水素やテキサス産の主要輸出原油 Magellan East Houston のスポット価格が Nymex 先物に対して数年ぶりの大幅なディスカウント水準に転落しました。貴金属市場では、金先物価格が前日比0.28パーセント上昇の4,049.90ドルで終了しました。アルミニウム市場では、中東での供給混乱から反発していたロンドン市場の先物価格が、ホルムズ海峡の通航回復に伴い落ち着きを取り戻し、年初来で3パーステンへの上昇にとどまっています。

      マクロ環境・政策動向

        【地政学リスク・外交】

        米国とイランの停戦交渉において、米国の Steve Witkoff 特使と Jared Kushner 氏がカタールにおいて技術的な協議を行い、進展がみられたことが発表されました。この暫定合意を受けて、ホルムズ海峡では commercial な商船が convoy を編成して安全に通航する動きが確認され、Persian Gulf からの石油輸出量が戦前の水準である日量1000万バレル規模まで急回復しています。欧州では、英国のベルファストなどで発生した反移民暴動について、ソーシャルメディアの X 上で発信された扇動的な投稿の約30パーセントが米国から、27パーセントが英国本土からのアカウントによる海外からの干渉であったことが Graphika などの研究で明らかになりました。また、米国財務省の外国資産管理局は、ラテンアメリカ最大の犯罪組織 Primeiro Comando da Capital の資金洗浄に関与したとして、ブラジル人2名とブラジル企業3社、ポルトガル企業1社に対して暗号資産口座凍結などの制裁を科したと発表しました。

        【金融政策】

        連邦準備制度理事会のケビン・ウォーシュ議長は、ポルトガルのシントラで開催された欧州中央銀行フォーラムにおいて、ここ数週間でインフレリスクが低下したとの認識を示しました。一方で、2パーセントの物価目標達成に向けた強い決意を改めて表明し、市場が期待する利下げを牽引するような政策シグナルを一切排除する新たな運営方針を印象付けました。欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、エネルギー価格の下落に伴いユーロ圏の6月インフレ率が2.8パーセントに減速したことを受け、インフレの上振れリスクと経済の減速リスクが数週間前よりもバランスが取れてきたと指摘しました。しかし、理事会内部ではエストニア中銀のウロ・カアシク総裁が追加利上げの継続が合理的であると主張する一方、ギリシャ中銀のヤニス・ストゥルナラス総裁が現在の金利水準を維持すべきだと述べるなど、意見の分かれる状況が露呈しています。イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、経済が減速しているもののエネルギー料金の上昇による遅行的な影響が残るため、現時点での利下げは完全に時期尚早であると明言しました。

        【制度・政策】

        通商政策において、米国のジャミエソン・グリア通商代表は、米国・メキシコ・カナダ協定の16年間の自動延長を見送り、毎年協定の見直しを行うローリング・トークスへ移行することを決定したと発表しました。これにより、自動車の原産地規則や乳製品市場のアクセス、中国による第三国経由の投資規制について毎年再交渉が行われることになり、北米のサプライチェーンを抱える企業に長期的な不確実性をもたらすことになります。テキサス州では、グレッグ・アボット知事が推進してきた教育自由口座プログラムが始動し、107,000人の学生への資金枠が確定し、そのうち73,000人に対して初回の教育バウチャー支払いが執行されました。カリフォルニア州では、ギャビン・ニューサム知事が州職員約90,000人に対して週4日のオフィス出勤を義務付ける命令を発効させましたが、職員組合による反発や環境レビューを求める訴訟に直面しています。

        米国個別銘柄動向

          【テクノロジー】

          ・Meta Platforms Inc. (META):AIモデルの運用に用いるデータセンターの余剰計算能力を外部に販売する独自のクラウドインフラ事業である Meta Compute を計画していると報じられ、株価は8.81パーセント上昇して過去1年で最大の日中上昇率を記録しました。

          ・Microsoft Corp. (MSFT):人工知能分野への投資を強化する一方で、企業向けのコスト削減を目的として数千人規模の人員削減を計画していることが社内情報として報じられました。

          ・Bending Spoons SpA (BSP):AOLやVimeoなどのソフトウェア資産を精力的に買収してきたイタリアのテクノロジー企業がナスダック市場に上場し、公開価格の29ドルを6.9パーセント上回る31ドルで初値をつけ、時価総額は19.7 billionドルに達しました。

          ・Lime [Neutron Holdings Inc.] (LIME):Uber Technologies Inc.が22パーセントの株式を保有する電動マイクロモビリティ大手がナスダックに株式公開し、IPO価格の25ドルから8パーセント高い27ドルで初値をつけ、時価総額は1.73 billionドルとなりました。

          ・Alibaba Group Holding Ltd. (BABA):同社の電子商取引プラットフォームを通じた違法医薬品の流入を防げなかったとして、米国司法省との間で600 millionドルの制裁金を支払う非訴追合意に達したほか、ブラジルのサンパウロで独自のAIワークロード用データセンターを Ascenty から賃貸する計画が浮上しました。

          ・Apple Inc. (AAPL):メモリチップの供給不足を背景に、マック製品などの価格を引き上げたばかりの同社が、国防総省の軍事支援ブラックリストに掲載されている中国の長信メモリテクノロジーズおよび長江ストレージからのコンポーネント調達に向けてトランプ政権のスコット・ベセント財務長官らにロビー活動を展開していることが報じられました。

          【金融】

          ・BlackRock Inc. (BLK):同社が保有する公開ビジネス開発会社である BlackRock TCP Capital Corp. (TCPC)において、投資先企業のマークダウンが相次ぎ株価が年初来で39パーセント下落したことを受けて、最高経営責任者の Phil Tseng 氏が更怠を含む退任の途にあることが関係者の話として報じられました。

          ・Lloyds Banking Group:グループ内のポートフォリオを簡素化するため、173年の歴史を持つ Halifax ブランドを廃止し、2027年中に全ての顧客口座および高街の店舗を Lloyds ブランドへ再ブランディングすることを発表しました。

          ・Brightline:フロリダ州の民間高速鉄道を運営する同社は、5.5 billionドルの債務再編の期限である7月1日を迎え、リザーブ資金からのクーポン支払いを進める一方で、経営権の掌握を狙う Nuveen などの municipal 債権者グループと Redwood Capital などのヘッジファンド勢との間で破産融資を巡る緊迫した交渉を継続しています。

          【エネルギー・素材】

          ・Magnitude 7 Metals LLC:2024年から電力コスト高騰で操業を停止していたミズーリ州のアルミニウム製錬所について、トランプ政権による通商拡大法232条に基づく関税措置を追い風として、年間75,000トン規模の生産ラインを年内に部分再開する方針を社内メモで通知しました。

          ・Shell Plc (SHEL):同社の業績の屋台骨であるエネルギー・コモディティ取引部門を4年間統括してきた David Wells エグゼクティブ・バイス・プレジデントが退任し、後任として欧州・アフリカ取引部門責任者の Bob Kijkuit 氏が昇格する人事を従業員向けに発令しました。

          【生活必需品・その他】

          ・General Mills Inc. (GIS):発表された第4四半期決算において、調整後の1株当たり利益が市場予想を上回ったほか、 Jeff Harmening 最高経営責任者が先行して実施した値下げが消費者の獲得に結びついたと言及したことで、同社の株価は4.3パーセントまたは8.5パーセント上昇し、連動して Campbell’s も5.4パーセント上昇しました。

          ・Nike Inc. (NKE):経営陣が消費者の購買意欲の減退と不安に基づく慎重な業績見通しを示したことで、株式市場の取引開始前に株価が1.1パーセント下落しました。

          ・Unknown Worlds Entertainment:大ヒットゲーム Subnautica 2のインセンティブ報酬250 millionドルを巡り、親会社である韓国の Krafton Inc.との間で泥沼の法廷闘争を展開していましたが、開発スタッフ全員に報酬を分割支給する条件で和解が成立し、これに伴い Ted Gill 最高経営責任者が退任することに合意しました。

          日本個別銘柄動向

          【半導体・電子部品】

          ・太陽誘電(6976):積層セラミックコンデンサーの生産ペース引き上げが伝わったほか、外資系証券による目標株価引き上げを背景に株価が急騰しました。取引時間中に初めて2万4000円台に乗せて過去最高値を更新し、大引けでも13%超の上昇となりました。

          ・イビデン(4062):半導体パッケージ関連としての成長期待から株価が急騰し、過去最高値を更新して前日比8%高で終了しました。

          ・東京エレクトロン(8035):米国市場での半導体製造装置株の上昇を引き継ぎ、連日で年初来高値を更新しました。取引時間中には一時81,260円まで買われ、日経平均株価を大きく押し上げました。

          ・J.フロント リテイリング(3086):発表した3から5月期決算において、純利益が前年同期比7%減の120億円となり、営業利益とともに市場予想を下回りました。前年の固定資産売却益の反動によるもので、併せて大丸下関店の閉店を発表したこともあり、株価は一時10%安と6日ぶりに急反落しました。

          ・高島屋(8233):3から5月期決算を発表し、国内富裕層向けの外商や訪日外国人向けの販売が堅調だったことから、純利益が前年同期比58%増の大幅増益を達成しました。しかし、株価は直近の上昇に対する利益確定売りに押され、3%安で終了しました。

          【小売・食品・サービス】

          ・韓和工業(7409):米国の鉄骨構造物メーカーであるASGを約560億円で買収することを発表しました。同社にとって過去最大の買収規模となり、北米市場での高付加価値サービスの展開が期待され、株価は堅調に推移しました。

          ・日清紡ホールディングス(3105):空調用ファンなどの製品事業を投資ファンドに売却する構造改革を発表しました。株価は取引時間中に昨年来高値を更新したものの、その後は利益確定売りに押される展開となりました。

          ・くら寿司(2695):北米市場において毎年店舗数を2割ずつ増加させ、長期的に300店舗の体制を構築する方針が伝わりました。株価は前日終値近辺での小幅な値動きにとどまりました。

          ・ブルボン(2208):原材料費や人件費の高騰を背景に、9月から主力商品であるプチシリーズを初めて値上げすることを発表しました。株価は気配値段階で堅調さを見せたものの、その後は値を下げて終了しました。

          ・ネイス(192A):前日に東証グロース市場へ新規上場しストップ高となった勢いを引き継ぎ、この日も買い気配のまま制限値幅上限のストップ高まで買われました。会見で5年以内に530教室を展開する目標を発表したことも材料視されました。

          【機械・インフラ・その他】

          ・ブシロード(7803):上限20億円、発行済み株式数の6%弱に構造する自社株買いの実施を発表しました。また、傘下の新日本プロレスの株式をテレビ朝日やサイバーエジェントに売却したことも明らかになり、株価は5.4%高と急伸しました。

          ・バローホールディングス(9956):公募増資などにより最大180億円の資金調達を行うと発表し、株式価値の希薄化や需給悪化への警戒から株価が急落、東証プライム市場の値下がり率トップとなりました。なお、ホームセンターのコーナン商事との資本業務提携および株式2分割も同時に発表しています。

          ・モスフードサービス(8153):和食チェーンを運営する企業の買収を目的として、約112億円を投じる計画が報じられました。モスバーガー以外の収益基盤多様化を狙う動きですが、当面の費用負担への懸念などから株価は小幅に下落しました。

          ・川崎重工業(7012):公募増資と転換社債を組み合わせ、総額2,000億円規模の資金調達を行う方向で最終調整に入ったとロイター通信が報道しました。新株発行による株式価値の希薄化を警戒した売りが膨らみ、株価は急落しました。

          ・TBSホールディングス(9401):U-NEXT HOLDINGSとの資本業務提携契約の強化を発表しました。コンテンツ配信事業での連携進展による過去資産の有効活用などが期待され、株価は4日続進し年初来高値を更新しました。