株式市場動向
2026年7月7日の米国株式市場では、主要指数がそろって下落しました。ダウ・ジョーンズ工業株平均は、前日比約131ポイント、52925.15で取引を終え、連日で最高値を更新していた勢いが一服して反落しました。S&P 500は、前日比約0.5パーセント、7503.85で終了しました。ナスダック総合指数は、前日比約1.2パーセント、25842.62で取引を終えました。 市場を動かしたマクロ要因として、韓国のSamsung Electronicsが発表した第2四半期の決算プレビューが、高まっていた市場の期待に届かなかったことから半導体およびメモリ関連株への売りが膨らんだことが挙げられます。また、中東のホルムズ海峡で商業船舶がミサイル攻撃を受けたという報道を受け、米国政府がイラン産原油の売却を認める一時的な制裁免除措置を撤回したことで原油価格が急騰し、インフレ懸念の高まりと国債利回りの上昇を招きました。ナスダック100指数は1.8パーセント、あるいは1.74パーセント落下の29418.75で終了しました。セクター別の傾向としては、大幅な価格上昇に起因する需要弾力性への懸念から半導体セクターが全体を大きく押し下げた一方、原油相場の上昇に伴ってエネルギー関連銘柄に買いが集まりました。
金利・コモディティ
【金利動向】
米国の国債利回りは上昇しました。指標となる10年物国債利回りは、前日から7ベースポイント、4.552パーセントとなりました。30年物国債利回りは5パーセント付近で推移し、6月初旬以来の高水準を記録しました。利回りが上昇した背景には、ホルムズ海峡での新たな地政学的リスクによる原油価格の反発に加え、Amazon.com (AMZN) による少なくとも250億ドル規模の大規模な社債発行の発表、さらに米国政府による580億ドルの3年物国債入札といった債券需給の悪化要因が重なったためです。 市場のヘッジ動向としては、オプション市場において、市場全体が連邦準備制度理事会の年内の利上げ確率を過大評価しているとの見方が広がり、ハト派的な金融政策へのシフトに備えるヘッジ取引が増加しました。具体的には、年内に利下げへ転じる可能性を視野に入れたSecure Overnight Financing Rateのコールオプションにまとまった買いが入りました。連邦準備制度理事会の関係者発言としては、ニューヨーク連邦準備銀行のJohn Williams総裁がFox Businessのインタビューで、直近のエネルギー価格の下落が今後数ヶ月の総合インフレ率を押し下げるとの見通しを示し、現在の金融政策は適切な位置にあるという認識を改めて強調しました。
【コモディティ市場】
原油価格は急上昇しました。世界的な指標であるロンドン・ブレント原油先物は2.09パーセント以上上昇し、1バレルあたり約75.60ドルに達しました。ニューヨークのウエスト・テキサス・インターミディエイト原油先物も一時3パーセント以上上昇し、清算値ベースで1バレルあたり72.00ドルとなりました。原油価格が上昇した理由は、イランのイスラム革命防衛隊がホルムズ海峡付近でカタール所有の液化天然ガス(LNG)タンカーを含む船舶にミサイル攻撃を行ったため、米国財務省がイラン産原油の売却を許可していた一時的な免除措置を即座に撤回し、供給途絶リスクが強く意識されたためです。 貴金属市場では金価格が下落し、継続月限の金先物は1パーセント下落の1オンスあたり4125.90ドルとなりました。金市場は、1月に最高値の5600ドル近くに達して以降、上場投資信託から約180億ドルの資金が流出するなど利益確定売りが続いており、前月にはベアマーケット入りを記録しています。ただし、JPMorgan (JPM) は年間の上場投資信託流出量を50トンと見込んでおり、従来の400トンの流入予測から下方修正したものの、中国人民銀行は6月を含めて20ヶ月連続で金を購入し続けており、中央銀行による根強い需要も示されています。
マクロ環境・政策動向
【地政学リスク・外交】
中東では、米国とイランが6月に合意した一時的な和平合意が大きく揺らいでいます。イランのイスラム革命防衛隊の海軍がホルムズ海峡近海でカタール所有の液化天然ガス(LNG)タンカーやサウジアラビアの石油タンカーを含む複数の商業船舶をミサイルやドローンで攻撃したため、米国との間で再び軍事的な緊張が高まっています。イランは国際海事機関に対し、ホルムズ海峡の一部は自国の領海であり、沿岸国として主権と管轄権を行使する権利があると主張しています。これに対し、英国とフランスはオマーンの領海内における限定的な機雷撤去作戦の開始に向けて部隊を配置していますが、現地の安全が確保されていないため、作戦開始の時期は不透明です。 欧州では、カナダのMark Carney首相がNATOサミットの開幕に合わせて、Albania、Belgium、Greece、Latvia、Luxembourg、Romania、Turkey、Ukraineの計8ヶ国が初期メンバーとして参加する、防衛産業へ長期・低コストの資金を提供する防衛・安全保障・回復力銀行の設立をカナダに誘致することで合意したと発表しました。一方、英国、Poland、Netherlands、Finlandの4ヶ国は、同様の防衛資金調達イニシアチブである多国間防衛メカニズムの構築で大きな進展があったと発表し、英国が初期費用として6億ポンドを拠出しました。また、フィンランドのAlexander Stubb大統領は、ロシアによる民間ビルへのミサイル攻撃に対抗するため、欧州と米国が協力してウクライナへより多くのパトリオットミサイルなどの空軍防衛手段を提供するよう呼びかけました。 アフリカでは、コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱のアウトブレイクが拡大しており、感染者が約1600人、死者が500人を超えています。これを受けて南アフリカのAaron Motsoaledi保健相は、航空ハブであるヨハネスブルグ経由の感染流入に備え、国内36箇所の病院を指定して医療従事者のシミュレーション訓練を開始しました。また、南アフリカ国内での不法移民に対する大規模な抗議活動の激化に伴いガーナ人男性が殺害されたことを受けて、ガーナ政府は南アフリカのCyril Ramaphosa大統領に対し、8月に予定されていた公式訪問の延期を要請しました。
【金融政策】
米国では、連邦準備制度理事会の金融政策の先行きに対する見方が激しく交錯しています。ニューヨーク連邦準備銀行のJohn Williams総裁は、インフレや経済見通しの不確実性が極めて高いことから、6月の会合において金利の将来的な経路を示すフォワードガイダンスを削除した決定について、Open Market Committeeメンバー間で強い一致があったと述べました。現在、 swaps 市場では年内に1〜2回の25ベースポイントの利上げが織り込まれており、6月発表の経済予測でも9人の当局者が年内少なくとも1回の利上げを予測しています。しかし一方で、連邦準備制度理事会のKevin Warsh議長がポルトガルのシントラで開催されたシンポジウムでインフレリスクの低下に言及したことや、直近の6月雇用統計が弱い内容であったことから、オプション市場では年内の利下げ転換を想定したハト派的なポジションへの移行とヘッジ取引が増加しています。
【制度・政策】
米国財務省の外国資産管理局は、ホルムズ海峡での商業船舶への攻撃に対抗し、イラン産原油の取引を60日間限定で認めていた制免除措置であるGeneral License Xを7月7日付で即座に撤回しました。これにより、同日以降の新たなイラン産原油の取引は全面的に禁止され、市場への供給懸念を再び引き起こしました。 連邦準備制度理事会は、米国内の銀行に対する反マネーロンダリング要件の変更案を提示しました。この変更案は、金融機関に対してよりリスクの高い顧客や活動に規制資源を集中させることを求めるものですが、Michael Barr連邦準備制度理事会副議長は、導入される新たな重大またはシステム的という基準がもたらす影響が不透明であるとして、この提案に対して明確に反対を表明しました。 チリの年金規制当局は、総額約2500億ドルの運用資産を持つAFPと呼ばれる年金基金の投資規則に関する62ページの改革案を公表しました。現行のAからEのリスク別システムを廃止し、年齢に応じて国内外の株式やハイイールド債といった成長資産への投資比率を段階的に引き下げる10の世代別ファンドの創設を求めています。 欧州では、フランスのRoland Lescure財務相が、中東での戦争によるインフレ高進と景気悪化を理由に、2026年のGDP成長率予測を従来の0.9パーセントから0.7パーセントへ下方修正しました。これに伴い、財政赤字を国内総生産の5パーセント以内に抑える目標を達成するため、年内に30億ユーロの追加予算削減を実施すると発表しました。 ハンガリーでは、Peter Magyar首相率いる新政権が、Viktor Orban前首相の政権下で16年間にわたり行われていたプロパガンダ報道を終結させるため、国営放送の経営陣を刷新し、一時的に放送とウェブサイトを停止して謝罪文を掲載しました。新政権は国営メディアの集中持ち株会社を解体する法律を通過させ、今後は独立性と信頼性を備えたニュースメディアへの刷新を進める方針です。 ジンバブエでは、Emmerson Mnangagwa大統領が、自身の現在の5年の任期を2年間延長して2030年までとする憲法改正案に署名し、公式ガゼットに掲載されました。
個別銘柄動向
【テクノロジー・通信・半導体】
・Samsung Electronics (005930):2026年第2四半期の暫定営業利益が前年同期の19倍となる89.4兆ウォン、あるいは約58.5億ドルに達し、市場予想の87兆ウォンを上回ったと発表しました。しかし、暫定売上高が市場予想にとどまったことや、従業員向けの特別ボーナス支給のコストが含まれていたことが嫌気され、韓国市場における株価は6.92パーセント急落しました。
・Micron Technology (MU):競合であるSamsung Electronics (005930) の決算内容を受けて、メモリ市場がすでにサイクル天井に達したのではないかという投資家の警戒感が広がり、株価は6.47パーセント下落しました。
・Sandisk (SNDK):メモリおよびストレージ製品の大幅な価格上昇が市場の需要弾力性に悪影響を及ぼしているとの指摘が嫌気され、株価は9.88パーセント下落しました。
・Western Digital (WDC):半導体およびストレージ関連株全体の売り圧力に押される形で、株価は8.77パーセント下落しました。
・Seagate Technology (STX):メモリサイクルのピークアウト懸念が波及し、前日の上昇から反転して、株価は6.09パーセント下落しました。
・Apple (AAPL):人工知能関連の投資支出において他社に比べ保守的な姿勢を維持していることや、GoogleのGeminiとの提携、さらにBroadcom (AVGO) との間でカスタムシリコン部品の供給契約を結んだことが評価され、年初来の株価は15パーセント上昇しています。当日は0.64パーセント下落し、時価総額は4.56兆ドルとなりました。
・Nvidia (NVDA):時価総額が4.78兆ドルに達し、Apple (AAPL) との時価総額の差が約2000億ドルに縮小しました。年初来の株価上昇率は6パーセントにとどまっており、株価収益率は2年先予測ベースで15.63倍という歴史的な割安水準に圧縮されています。当日は0.71パーセント上昇しました。
・Microsoft (MSFT):人工知能への巨額の資本支出が今後の収益に結びつくかという懸念から、時価総額は3兆ドルを下回る水準に低迷しています。当日は0.54パーセント上昇しました。また、コスト削減のためにExcelやOutlookなどのオフィス製品において、OpenAIやAnthropicのAIモデルから自社開発のMAIモデルへの置き換えを毎週数万プロンプト規模で進めていることが判明しました。
・Meta Platforms (META): Chief AI Officer である Alexandr Wang 氏が率いるMeta Superintelligence Labsが開発した、新しい画像生成AIモデルであるMuse Imageを発表し、InstagramやWhatsAppのチャットボット内への実装を開始しました。
・SpaceX (SPCX):ナスダック100指数への新規採用初日を迎え、インデックスファンドによる強制的な買い需要が期待されましたが、利益確定の売りに押されて下落し、149.47ドルで取引を終えました。これは新規公開株価格の135ドルは上回るものの、上場初日の値動きを下回る水準です。社債市場でも2036年満期債の利回りスプレッドが1.40パーセントから1.65パーセントへ拡大しました。
・SK Hynix:米国市場への280億ドル規模のアメリカ預託証券の新規上場に向けた売り出しにおいて、国内外の機関投資家約1000社がマーケティングコールに参加し、すでに募集枠の複数倍の申し込みを集める過剰注文状態にあることが明らかになりました。
・Norm:Khosla Venturesが主導し、BlackstoneやBain Capital Venturesなどが参加したファンディングラウンドにおいて、1億2000万ドルを調達し、評価額が12億ドルに達したと発表しました。人工知能を活用した独自の法律事務所であるNorm Lawを運営しています。
【自動車・機械・エネルギー】
・Tesla (TSLA):SpaceX (SPCX) との間で、年間に1テラワットの計算ハードウェアを製造できる工場の共同開発プロジェクトが進んでいることを背景に、将来的な合併の可能性が浮上したとして、RBCのアナリストが目標株価を475ドルから500ドルに引き上げました。買収は全株式交換の形式が最有力視されていますが、当日の株価は3.07パーセント、あるいは2パーセント下落しました。
・Rivian Automotive:米国エネルギー省からの融資に関連する出資資金を調達するため、7500万株の普通株を新規に売却する計画を発表したことで株式価値の希薄化が懸念され、株価は18パーセント以上急落しました。
【ヘルスケア・医薬品】
・Crinetics Pharmaceuticals:Vertex Pharmaceuticalsから1株あたり85ドルの現金、総額約100億ドルでの買収提案に合意したことを受けて、株価が99パーセント暴騰しました。
・AbbVie:Jefferiesのクオリティスコアで高評価を獲得し、2026年から2027年にかけて年平均28パーセントの利益成長が見込まれています。先週、次世代免疫疾患治療薬の開発パイプライン強化のため、Apogee Therapeuticsを109億ドルで買収することに合意しました。
・Santé Cie:過半数株主であるプライベートエクイティのArdianのもと、債権者との法的整理外の機密交渉手続きであるmandat-ad-hocの開始をリヨン商業裁判所に申請しました。これを受けて、8億2000万ユーロ、あるいは約9億4000万ドル規模のタームローンの取引価格が、前週末の1ユーロあたり50セントから80セントへと急騰しました。
【金融・不動産・小売】
・JPMorgan Chase (JPM):バンク・オブ・アメリカやウェルズ・ファーゴとともに、デビットカードの加盟店手数料の上限規制を回避するため、Fiservが保有するカードネットワークの買収を検討していることが明らかになり、株価は0.25パーセント、あるいは0.14パーセント上昇しました。
・Walmart:傘下のSam’s Clubにおいて、ひき肉やアイスクリーム、ポテトチップスを含む数千品目の値下げを発表し、インフレ下での需要喚起策として市場で好感されました。
・CBIZ:主要株主であるReference Equityから、自社株買い計画の中止とM&A戦略への復帰を求める書簡を受け取ったことが明らかになりました。過去1年間で株価は52パーセント下落しており、現在の時価総額は19億ドル、負債を含む企業価値は39億ドルとなっています。
・Autodoc Holding SE:Apollo Global Managementの保有する約15パーセントのマイノリティ持分を買い戻すため、5億3000万ユーロ、あるいは6億6000万ドル規模の7年物タームローンBによるデットファイナンスを開始しました。中東情勢の緊迫化による市場環境悪化を理由にIPOを延期したため、この資金調達手段が取られました。
・Getty Images Holdings:Shutterstockとの合併計画が英国の規制当局の判断によって撤回されたことを受け、S&Pグローバル・レーティングが格付けをBからCCC+に引き下げ、19億ドルを超える負債を抱える同社の資本構成が持続不可能であると警告しました。これを受けて債権者団が対応策の協議を開始しました。