株式市場動向
米国株式市場は中東でのイランとの紛争激化への懸念が一時的に緩和され、ハイテク株への押し目買いが主導して上昇しました。ダウ工業株30種平均は139.02ドル高の52487.41へと0.27パーセント上昇し、S&P500種株価指数は60.93ポイント高の7543.64へと0.81パーセント上昇しました。ナスダック総合指数は336.24ポイント高の26206.89へと1.30パーセントの大幅高となり、ナスダック100指数も1.5パーセント上昇しました。人工知能インフラ投資ブームが継続しているとの見方が広がり、半導体株が大きく反発したことが背景にあります。その結果、フィラデルフィア半導体株指数は3パーセントを超える上昇を記録しました。また、S&P500の均等ウェイト版ETFであるインベスコS&P500イコールウェイトETFは年初来で11.4パーセント上昇し、時価総額加重型のSPDR・S&P500・ETFトラストの10.2パーセント上昇を上回るパフォーマンスを示しており、ハイテク大手への過度な資金集中から、それらの投資の受け手となる他の銘柄群への物色の広がりが確認されました。欧州株式市場についても、UBSグループのジェリー・ファウラーとスタニャ・チェッダがS&Pヨーロッパ600指数の年末目標を690に引き上げ、AI関連のアップグレードや銀行の業績上方修正などを理由に、さらなる上値余地がある事実が示されました。
7月9日の日本株式市場は、日経平均株価が4日ぶりに反発し、前日比924円80銭高の6万7743円85銭で取引を終えました。直近3日間で3000円近く下落し1カ月ぶりの安値水準まで下げていましたが、前日の米国市場でハイテク株が上昇したことや韓国総合株価指数KOSPIが上昇したことを受け、AIおよび半導体関連株を中心に買い戻しが入りました。一時は上げ幅が1600円を超える場面もありましたが、午後に入り国内の長期金利上昇などを受けて上値が重くなる展開も見られました。
東証プライム市場の最終的な売買代金は9兆6014億円となりました。値上がり銘柄数は585、値下がり銘柄数は917となり、日経平均株価が大幅に上昇した一方で、値下がり銘柄数が全体の約6割を占めました。セクター別では電気機器、非鉄金属、精密機器が上昇した一方、空運、輸送用機器、ゴム製品などが下落しました。海外投資家の売買動向については、7月第1週分で現物が3662億円の買い越し、先物が5241億円の売り越しとなり、合算で1578億円の売り越しとなりました。
為替・金利・コモディティ
【為替市場】
ニュージーランドドルは、強い国内製造業データを受けて追加利上げ観測が高まり、米ドルに対して1パーセント以上上昇し、日中高値の0.5763を記録しました。ニュージーランド準備銀行のアンナ・ブレマン総裁は、燃料価格のショックにもかかわらず国内経済が予想以上に力強く拡大していると発言し、通貨の支援材料となりました。一方、エジプトポンドは、中東の地政学リスクの再燃により、一時対ドルで約54まで下落した後の緩やかな回復基調が削がれる動きを見せました。
【金利動向】
米国債券市場では、中東紛争による原油高とインフレ懸念の高まりを背景に、長短金利の動向に注目が集まりました。指標となる10年国債利回りは0.027低下し、4.550パーセントとなりました。一方で、米国債30年物の入札では利回りが5.07パーセントに達し、2006年11月以来の高水準を記録しました。PGIMクレジットのグレゴリー・ピーターズは、AIインフラ関連の債券発行増加や米国債の供給過多が背景にあり、30年債利回りは今後5.5パーセントまで上昇する圧力がかかると指摘しました。米連邦準備制度理事会のジョン・ウィリアムズは、米国のインフレ要因としてAIによる需要の急増を最も注視しており、この需要が継続すれば利上げ対応が必要になる事実を強調しました。
【コモディティ市場】
原油市場では、米国とイランの停戦崩壊による中東情勢の緊迫化から今週に入り価格が一時9パーセント近く急騰したものの、世界的な原油在庫の需給調整への期待から下落に転じました。ブレント原油先物は2パーセント下落して1バレル76.30ドルとなり、ウェスト・テキサス・インターミディエイト原油継続限月は71.81ドルへ下落しました。ホルムズ海峡でのタンカー航行はほぼ停止状態にあり、マーシュのマーカス・ベーカーによれば、船舶の保険料率は紛争前の1パーセント未満から船舶価値の2パーセントから6パーセントにまで跳ね上がりました。米国の商業用原油在庫は前週に300万バレル増加したものの、戦略石油備蓄は1983年以来の最低水準にとどまっています。貴金属市場では、ポーランドの中央銀行が今年に入り82トンの金を買い増し、総保有量を632.4トンとした事実をアダム・グラピンスキ総裁が発表しました。
マクロ環境・政策動向
【地政学リスク・外交】
米国とイランの暫定和平合意は事実上崩壊し、米国のドナルド・トランプ大統領はイランに対する攻撃を2日連続で命じ、同国中心部の約90カ所の標的を攻撃しました。これに対抗し、イランはペルシャ湾の米国同盟国であるバーレーンとクウェートに向けてミサイルを発射しました。イランでは暗殺された最高指導者アリ・ハメネイの葬儀がマシュハドで執り行われ、後継者である息子のモジタバ・ハメネイの今後の動向に焦点が当てられています。カナダのマーク・カーニー首相はサウジアラビアを訪問し、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子らと会談し、10億カナダドル以上の投資協定に署名しました。
【金融政策】
米連邦準備制度理事会のケビン・ウォーシュ議長は、政策決定の主要な側面を見直すための5つの特別委員会の指導部を発表しました。コミュニケーション、バランスシート、データ、生産性と雇用、インフレ枠組みの5分野について、元イングランド銀行総裁のマービン・キングやウォルマート元最高経営責任者のダグ・マクミロンらが各委員会の共同リーダーに指名されました。イングランド銀行のヒュー・ピルは、生産性の低下を指摘しつつインフレを抑制するために年内の利上げが必要になる可能性があると発言しました。フランス銀行は、6月の全セクターでの活動改善を受け、第2四半期の成長率予測を0.2パーセントへと引き上げ、景気後退を回避するとの見方を示しました。欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、フランスの次期大統領選挙への立候補を否定し、欧州中央銀行での職務に専念する意向を明らかにしました。
【制度・政策】
米国のトランプ政権はAIモデルの審査において積極的な役割を担い始めており、商務省が外国からのアクセスを禁止する輸出規制を課した結果、AnthropicはFable 5とMythos 5のモデルを一時無効化する事態が発生しました。OpenAIもGPT-5.6の公開に向けて商務長官のハワード・ラトニックや財務長官のスコット・ベッセントら米政府高官と協議を重ね、サイバーセキュリティ対策などの変更を余儀なくされました。ドイツではフリードリヒ・メルツ首相の連立政権が年金制度や健康保険の変更を含む新たな改革案を承認しましたが、フィッチ・レーティングスは中期的な成長見通しを根本的に改善する可能性は低いと評価しました。英国では、アンディ・バーナムが労働党議員403人中322人の指名を受け、次期首相に就任する事実が確定しました。
米国個別銘柄動向
【テクノロジー】
・Meta Platforms (META) 同社は初の有料AIコーディングモデルであるMuse Spark 1.1を発表しました。また、Nvidiaへの依存を減らしデータセンター費用を削減するため、独自のカスタムチップであるIrisの大量生産を9月に開始する計画が明らかになりました。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は、外部に計算能力を貸し出すAIクラウドビジネスの検討が理にかなっていると述べました。これらの発表を受け、株価は4.70パーセント上昇しました。
・Micron Technology (MU) 米国の半導体サプライチェーン構築に向けて30億ドルを投資する計画を発表しました。GlobalWafersに対して5億ドルの戦略的融資を約束し、最先端シリコンウェハーの10年間の供給契約を結びました。また、米国工場への投資計画を2035年までに2500億ドル以上へと引き上げました。株価は7.06パーセント急伸しました。
・SK Hynix 米国での米国預託証券の上場価格を149ドルに設定し、1779万株の普通株に相当する1億7790万単位の米国預託証券を発行しました。この取引により約265億ドルを調達する計画であり、外国企業による米国の新規株式公開としては過去最大規模となります。
・Broadcom 同社とAnthropicによるAIインフラ拡張を支援するための350億ドルの資金調達パッケージの一部について、Apollo Global Managementなどが手配したクレジット取引が市場での取引開始に向けた準備を進めている事実が報じられました。
・Salesforce キーバンク・キャピタル・マーケッツが同社の投資判断をオーバーウェイトからセクターウェイトへと引き下げたことを受け、株価は最大6.1パーセント下落しました。
・International Business Machines Starbucksが同社から購入しているソフトウェアアプリケーションの一部を置き換える可能性のある自社製AIツールを開発しているとの報道を受け、株価が下落しました。
【金融】
・Goldman Sachs Group (GS) 従業員に対して、同社を含む特定企業に関連するイベント契約や選挙、金融市場のパフォーマンスに関する予測市場での取引を禁止する新たなポリシーを導入しました。また、Verizon CommunicationsおよびLockheed Martinと合計700億ドルの退職資産を管理する契約を獲得しました。
【消費財・小売】
・PepsiCo (PEP) 北米部門での販売量は増加したものの、全体的な収益が減少したことを報告しました。経営陣はガソリン価格の上昇による家計への負担が影響したと説明し、株価は3.3パーセント下落しました。
・Costco Wholesale 6月の既存店売上高が前月から減速したことを発表し、株価は4パーセント以上下落してS&P500の中で最大の下落率を記録した銘柄の一つとなりました。
・Levi Strauss 業績がアナリスト予想の平均を上回ったものの、通期の見通しが期待外れだったことから、株価が一時下落した後に損失を埋める動きを見せました。
【物流・運輸】
・United Parcel Service (UPS) Amazonが第三者の顧客に対して安価で迅速な配送サービスを提供している事実を受け、従来型配送企業への脅威が高まっているとのモルガン・スタンレーのラビ・シャンカーによる指摘により、株価が下落しました。
・FedEx (FDX) Amazonによる物流サービス拡大の動きが、電子商取引にとどまらずヘルスケアなどの高収益分野にも競争をもたらすとの懸念から、UPSと同様に株価が下落しました。
日本個別銘柄動向
【小売・外食】
・吉野家ホールディングス(9861):第1四半期の連結純利益が前年同期比2.4倍の18億円となりました。牛丼と油そばのセット商品が150万食を突破したほか、ゲームとのコラボ商品も販売が好調です。
・ツルハホールディングス(3391):第1四半期の営業利益が前年同期比94%増の242億円、売上高が2.3倍となりました。ウエルシアホールディングスとの経営統合に伴う仕入れの効率化により営業利益率が改善しました。
・エービーシー・マート(2670):第1四半期の純利益が前年同期比10%増の142億円となりました。韓国事業が回復基調にあるほか、韓国のアパレル大手から靴専門のセレクトショップ事業を買収すると発表しました。
・ヨンドシーホールディングス(8008):2027年2月期の営業利益が従来予想の36億円を上回り40億円程度になる見通しであると報道されました。高級時計の中古販売がインバウンドや富裕層の需要を取り込んでいます。
・ファーストリテイリング(9983):第3四半期の純利益が前年同期比25.6%増の4260億円となりました。通期の売上収益を3兆9700億円、当期純利益を5000億円へそれぞれ上方修正しました。
・セブン&アイ・ホールディングス(3382):第1四半期の純利益が前年同期比23.6%増の606億円となりました。米国でのガソリン価格高騰などが利益を押し上げ、通期の純利益予想を2780億円へ上方修正しました。
【IT・半導体・精密機器】
・東京エレクトロン(8035):半導体製造装置の顧客への導入期間を半減させる方針であると報じられました。今後2年間で主要顧客のほぼすべてが新たな製造拠点の建設を計画しているとしています。
・キオクシアホールディングス(285A):主要株主である投資ファンドのベインキャピタルが、保有する全株式を売却したと報じられました。
・パナソニック ホールディングス(6752):データセンター向けの分散型蓄電池システムで世界シェアの8割を占めており、AI事業の営業利益を3年間で2.4倍に引き上げる計画を発表しました。
・アスタリスク(6522):東京証券取引所が信用取引による新規の売付および買付に係る委託保証金率を50%以上とする信用規制の実施を発表しました。
【金融・不動産】
・りそなホールディングス(8308):JCBなどと提携し、バスの運賃をスマートフォンと車載機器の無線通信で自動決済する手ぶら決済の実証実験を秋から開始すると報じられました。
【その他製造・サービス】
・ispace(9348):米国のスペースXが開発する大型の月面着陸船事業で連携すると発表しました。大型ロケットの搭載枠のうち500キログラムを確保し、契約総額は約81億円となります。
・キリンホールディングス(2503):オーストラリアの健康食品大手などを傘下に収めるなど、医薬や健康食品などのヘルスサイエンス事業の拡大を進めています。
・小田原機器(7314):りそなホールディングスなどが進めるバスの手ぶら決済システムにおいて、同社の無線技術が活用されると報じられました。
・三菱マテリアル(5711):ユーロ建の転換社債を発行し、約700億円を調達すると発表しました。調達資金は金属リサイクル事業を中心とする事業構造の転換に必要な投資に充てるとしています。