主要ニュースと経済指標
本日の米国市場では、連邦準備制度理事会の政策決定集会を前にしたブラックアウト期間中であり、主要な連邦経済指標の公表は限られました。
地政学リスクの面では、米国とイランによる相互の攻撃が10日連続で発生し、中東情勢の緊迫化が一段と加速しています。特に、イエメンの親イラン武装組織フーシ派がサウジアラビアの紅海沿岸港湾に対する海上封鎖を予告し、全海運会社に対してサウジ港湾への寄港を避けるよう警告を発したことが市場に強い衝撃を与えました。ペルシャ湾からの輸出停滞に伴い重要な迂回路となっていた紅海ルートが脅かされたことで、ブレント原油先物は1バレル91.01ドルへ上昇し、WTI原油先物も84.58ドルまで急騰しました。このエネルギー価格の急昇は、米国のガソリン店頭価格を再び1ガロン4ドル台へ押し上げ、インフレ圧力の再燃懸念を急速に強めています。
通商政策においては、トランプ政権による関税強化の動きが顕著となっています。政権はカナダに対し、自動車、乳製品、アルコール業界への不当な扱いを理由に、同国からの輸入品約200億ドル分に対して50パーセントの関税を課す執行命令を発表しました。また、2月に導入された10パーセントの暫定的な均一関税が150日間の期限を迎えるにあたり、1974年通商法301条に基づく強制労働調査の結果を根拠として、数十の貿易相手国に対する10パーセントから12.5パーセントの新たな関税措置を今週末までに発動する準備を進めています。さらにベセント財務長官は、海外で開発されたオープンソースの人工知能モデルにおける米国企業の知的財産侵害を厳しく精査し、違反が確認された場合には制裁を科す方針を表明しました。
暗号資産関連の法規制については、ベセント財務長官がクラリティ法案の成立に向けた議会の動きが最終段階にある旨を言及し、関連市場の心理を改善させました。一方で、イランとの戦闘継続による軍事費の拡大に伴い、ヘグセス国防長官は議会に対し、これまでのイラン紛争におけるコストが約375億ドルに達したことを証言し、弾薬補給や装備更新のための補正予算獲得を訴えました。
米国株式市場
本日の米国株式市場は、エネルギー価格の上昇に伴うインフレ懸念が存在するものの、主要なハイテク株および半導体関連銘柄の強力な買い戻しが相場全体を押し上げました。ダウ工業株30種平均は前日比0.74パーセント高の52224.64ドルで取引を終え、S&P500種株価指数は0.89パーセント高の7509.20ポイントとなりました。ハイテク株比率が高いナスダック総合指数も1.29パーセント高の25837.21ポイントと大きく伸ばしました。中東での緊迫化や関税リスクによる下押し圧力を、ハイテク企業の業績期待と足元の株価修正が上回る形となっています。
株式市場の反発を主導したのは半導体セクターであり、フィラデルフィア半導体株指数は5.21パーセントの大幅高となりました。中国のムーンショットAIが発表した最新モデルを巡る過度な警戒感が和らぎ、むしろ計算資源需要の拡大を裏付ける材料と受け止められたほか、TSMCによる価格引き上げ報道やアジアでの好調な半導体輸出データが追い風となりました。個別銘柄では、データセンター部門の組織再編と人件費削減を発表したインテル(INTC)が8.64パーセント高と急騰しました。また、記憶装置大手のマイクロン・テクノロジー(MU)が12.17パーセント高、サンディスク(SNDK)が14.27パーセント高、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が8.11パーセント高と目覚ましい上昇を見せました。エヌビディア(NVDA)も最新のヴェラ・ルービン構造の本格生産と顧客納品が進んでいる旨を公表し、1.97パーセント高で引けました。さらに時間外取引では、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)が600億ドルを超える過去最高の受注残高を公表して15パーセント以上急騰しました。
主要企業の業績発表や固有の材料も相場を活気づけました。ゼネラル・モーターズ(GM)は、大型車および高単価車種の販売好調により市場予想を上回る決算を発表し、通期利益見通しを5億ドル引き上げたことで4.90パーセント上昇しました。スリーエム(MMM)も決算が市場予想を超え通期見通しを上方修正したことで5.90パーセント高となりました。新規上場後の下落が続いていたスペースエックス(SPCX)は、アナリストの強気判断や空売り残高の高水準に伴う買い戻しから6.16パーセント上昇し、8月4日の決算発表および8月6日に控える1160億ドル規模のロックアップ解除を前に反発に転じました。
一方で、人工知能による従来型ソフトウェアへの代替懸念が強まっている企業群には厳しい売りが浴びせられました。大手投資銀行による投資判断の引き下げを受けたアドビ(ADBE)は3.70パーセント下落し、セールスフォース(CRM)も1.60パーセント下落しました。ソフトウェア分野全体に対する収益性減退の懸念は根強く、上場投資信託であるアイシェアーズ拡張テク・ソフトウェア・セクターETFも下落基調を強めています。また、原油高による燃料コスト急増の影響を受けたアラスカ・エア・グループ(ALK)は、調整後の四半期赤字が予想より小さかったものの、今後の燃料費見通しの不透明感から上値を抑えられる展開となりました。
日本株式市場
本日の日経平均株価は前営業日比2091円70銭高の66232円19銭と大幅に反発し3.26パーセントの上昇を記録しました。またTOPIXも前営業日比で2.44パーセント上昇し節目の4000ポイントを回復して取引を終えています。先週末にかけて記録的な急落を演じていた反動から、週明けの東京市場では幅広い銘柄で買い戻しが先行する展開となりました。
株式市場全体の動きの背景として米国市場における半導体株指数の小幅反発や韓国総合指数の大幅上昇が投資家心理を大きく改善させました。特に韓国市場ではレバレッジ型上場投資信託に対する規制への警戒感などから先週急落していましたが、本日は反発を狙う買い戻しが優勢となりました。加えて中国の新たな人工知能モデルに対する過度な脅威論がやや後退したことや値頃感からの買いが入り、日経平均株価は午後にかけてショートカバーを巻き込みながら上げ幅を2000円近くまで広げる強い動きを見せました。一方で中東情勢の緊迫化による原油価格の上昇やインフレ懸念は依然として残っており、市場の警戒材料として意識されています。
主な個別銘柄の動向としては証券会社による投資判断と目標株価の大幅な引き上げが好感されたイビデン(4062)が10パーセント近い急騰を見せました。また中東の地政学的リスクの高まりを受けた原油高の恩恵からINPEX(1605)が5パーセント超の上昇となったほか、持続可能な航空燃料の生産検討が報じられた三菱商事(8058)もバリュー株物色の流れに乗り4パーセントを超える上昇を記録しています。半導体関連では四半期決算の観測報道を受けて朝方は売られたディスコ(6146)が午後にプラス圏へ切り返しました。一方で証券会社による目標株価の引き下げが嫌気された任天堂(7974)は4パーセントを超える下落となり全体相場が急反発する中で逆行安となりました。
債券市場
本日の米国債券市場は全面的に売られる展開となり、国債利回りは主要な年限で大きく上昇しました。中東情勢の悪化に伴う原油価格の急騰がインフレ圧力を再燃させるとの警戒感が広がり、長長期ゾーンを中心に売りが優勢となりました。指標となる10年物国債利回りは前日比で上昇し、節目の4.60パーセントを突破して約2カ月ぶりの高水準となる4.64パーセント近傍まで達しました。30年物国債利回りも同様に約2カ月ぶりの高値圏へ上昇しています。
短期金融市場および政策金利に敏感な2年物国債利回りも4.20パーセントの節目を上回り、高止まりを続けています。連邦準備制度理事会が7月29日の政策決定集会を控え公式発言を控える期間に入るなか、金利先物市場では次回会合での追加利上げ確率を約20パーセントと試算する動きが出ています。今月初旬に発表された物価指数の鈍化を受けて広がっていた利回り低下の波は、原油高と堅調なサービス業景況感の双方によって事実上相殺された形となっています。
海外の債券市場においても、各国の個別事情やマクロ環境を反映した動きが見られました。英国の債券市場では、バーナム新首相のもとでの財政規律への懸念や防衛費増額圧力、さらにはエネルギー価格高騰によるインフレ懸念が意識され、10年物英国債利回りが2カ月ぶりの高水準に達したのち、新財務相の財政規律強調を受けて小幅な動きにとどまりました。一方、ロシア債券市場では、相次ぐ国債入札の不成立と流動性の悪化を受け、ロシア財務省が市場の安定化を図るため国内国債の定期オークション一時停止を発表する事態に至っています。
為替市場
本日の外国為替市場において、米ドルは主要通貨に対して全面高の展開を示しました。原油価格の上昇に伴う米国のインフレ再燃リスクと、それに伴う米国債利回りの上昇が強力なドル買い要因となりました。また、中東での軍事衝突が拡大の一途をたどるなかで、国際的な決済通貨および安全資産としての米ドルに対する需要が改めて高まり、市場全体でドル選好の動きが強まりました。
主要通貨別では、欧州通貨や新興国通貨に対して米ドルが優勢に推移しました。米連邦準備制度理事会による追加利上げの可能性が20パーセント程度意識される一方で、他国の主要中央銀行との金融政策の方向性の違いや金利差の拡大観測がドルを後押ししています。低金利通貨とされる日本円に対しても、米国の債券利回り上昇に伴う日米金利差の拡大が意識され、ドル高円安の方向性が維持されました。ユーロに対しても、欧州のエネルギー輸入懸念や経済成長の鈍化懸念を背景にドル高が進行しています。
為替相場を動かしたマクロ的背景には、地政学リスクとトランプ政権の通商動向が複雑に絡み合っています。トランプ政権による対カナダ50パーセント関税の発表や、全世界に対する新たな関税枠組みの適用予告は、貿易摩擦の激化を通じてグローバルなインフレ圧力を維持させるとの見方を強めました。これにより米国の高金利環境が長期化するとのシナリオが支持され、為替市場でのドル高基調を強固なものとしています。カナダドルは一時売られたものの、カーニー首相が米国との交渉を加速させる意向を示したことで調整が入る場面もありました。