主要ニュースと経済指標
カナダ統計局が発表した6月の消費者物価指数は前年同月比で2.8パーセントの上昇となり、5月に記録した3.2パーセントから減速しました。市場予想の2.9パーセントをも下回る結果となっています。ガソリン価格の下落が主な要因であり、カナダ銀行が重視するコアインフレ指標の平均値も1.85パーセントへと低下し、およそ6年ぶりに2パーセントの大台を割り込みました。このインフレ鈍化の兆候は、中東での紛争によるエネルギー価格上昇の影響が他の分野に波及していないことを示唆しています。
米国ではトランプ大統領の関税政策が新たな局面を迎えようとしています。1974年通商法122条に基づいて課されていた10パーセントの包括的な輸入関税が7月24日に期限切れとなるのを前に、トランプ政権は同法301条を活用し、強制労働を理由としたより恒久的な関税措置への移行を計画しています。米国通商代表部は、世界の米国向け輸入のほぼすべてを占める60カ国からの輸入品に対して10パーセントまたは12.5パーセントの関税を課す案を提示しており、ブラジルからの輸入品には25パーセントの関税が課される可能性が指摘されています。
中東の地政学リスクは引き続きエネルギー市場に暗い影を落としています。米兵3人が死亡したことを受け、トランプ大統領はイランに代償を支払わせると強く警告しました。一方でイラン外務省は、緊張緩和に向けた調停者からの提案を受け取ったことを明らかにしており、ホルムズ海峡を巡る事態打開の模索が続いています。しかし、イエメンの親イラン武装組織フーシ派がサウジアラビアへの海上封鎖を即時発動すると宣言したことで、紅海ルートの安全性が一段と脅かされ、ブレント原油価格は一時1バレル89ドル台まで上昇しました。
技術分野では、中国の人工知能技術の急速な進展が世界の注目を集めています。中国のスタートアップ企業であるMoonshot AIが発表した新しい巨大モデルKimi K3は、米国の最先端モデルに匹敵する性能を示し、開発者や投資家の間で大きな話題を呼びました。また、Alibaba Group Holding Ltd.(BABA)もオープンソースの新型モデルを発表しており、米国のハイテク企業がこれまで前提としていた技術的優位性に疑義が生じています。これにより、巨額の設備投資を続ける米国の人工知能関連企業の戦略が問われる事態となっています。
米国株式市場
本日の米国株式市場は、中東情勢の緊迫化や人工知能関連の支出に対する懸念が重荷となり、主要株価指数は下落して取引を終えました。NYダウは0.59パーセント下落し307ポイント安の51839.26で引け、S&P500は0.19パーセント安の7443.28で終了しました。Nasdaq100は午前中に1パーセント以上上昇する場面があったものの、最終的には0.05パーセント安の25508.07と小幅なマイナスに転じています。決算発表を控える大手ハイテク企業の業績に対する警戒感が、投資家の積極的な買いを控えさせています。
半導体関連株は序盤に買い戻しが先行しました。フィラデルフィア半導体株指数は先週末に弱気相場入りした反動から一時3.1パーセント上昇しています。個別銘柄では、Nvidia Corp.(NVDA)が2パーセント上昇したほか、Advanced Micro Devices Inc.(AMD)やIntel Corp.(INTC)、Micron Technology Inc.(MU)、Marvell Technology Inc.(MRVL)も揃って上昇しました。投資家は、今週発表されるAlphabet Inc.(GOOGL)やTesla Inc.(TSLA)などの決算を通じて、人工知能インフラへの投資競争が持続可能かどうかを見極めようとしています。
ハイテク企業の中でも固有の材料が出た銘柄には大きな動きが見られました。Alphabet Inc.(GOOGL)は、自社の人工知能モデルを最適化するための新しいサーバーチップを開発しているとの報道を受け、株価が一時3.7パーセント上昇しています。一方、イーロン・マスク氏が率いるSpaceX(SPCX)の株価は3.3パーセント下落し、7営業日連続の下落となりました。同社の時価総額は新規株式公開後のピークから1兆ドル以上も減少し、米国企業の時価総額ランキングでMeta Platforms Inc.(META)を下回る順位へと後退しています。
その他のセクターでも、企業の個別要因が株価を大きく動かしました。Domino’s Pizza Inc.(DPZ)は、第2四半期の売上高がアナリスト予想を上回ったことで7.7パーセントの急伸を見せました。また、映画館チェーンのAMC Entertainment Holdings Inc.(AMC)も決算内容が好感され10パーセント上昇しています。一方で、Paramount Global(PARA)は、Warner Bros. Discovery Inc.(WBD)との1110億ドル規模の合併案が反トラスト法に違反するとして連邦裁判所により一時的に差し止められ、今後の業界再編の行方に不透明感をもたらしています。
債券市場
米国の債券市場では、中東における地政学的な緊張の高まりを背景に国債利回りが上昇しました。米国のベンチマークである10年国債利回りは0.055パーセントポイント上昇し、4.597パーセントを記録しています。ホルムズ海峡での衝突やフーシ派のサウジアラビアに対する海上封鎖宣言など、イラン周辺の情勢悪化が原油価格を押し上げており、これがインフレの再燃を招くとの懸念が債券市場で売り圧力を強める結果となりました。
投資家は連邦準備制度理事会の金融政策の先行きに対して慎重な姿勢を強めており、運用期間を短くする動きが顕著になっています。マネー・マーケット・ファンドは、金利変動リスクを避けるために保有資産の加重平均満期を5月中旬の45日から40日へと短縮させました。余剰資金は翌日物レポ取引や短期証券、さらには変動金利型の国債やエージェンシー債に振り向けられており、不透明な金利動向に対する防御的なポートフォリオ構築が進められています。
運用会社は、現在の高い利回り水準が連邦準備制度理事会にとって実質的な引き締め効果をもたらすと分析しています。インフレ指標が落ち着きを見せる中であれば、金融当局は年内の追加利上げを見送る余地があるとの見方も浮上しています。ただし、原油価格の急騰という供給側のショックに対して中央銀行が金融引き締めで対応することは難しいため、投資家は今後の経済指標とインフレ動向を注視しながら慎重にポジションを調整しています。
英国の債券市場では、政治的な動向が利回りの急変動を引き起こしました。新しく首相に就任したアンディ・バーナム氏が、政府の財政ルールに関して柔軟性を活用する意向を示したことが市場の警戒感を誘っています。この発言を受けて英国の10年国債利回りは最大で7ベーシスポイント上昇し5.02パーセントに達したほか、30年国債利回りも8ベーシスポイント上昇して5.73パーセントとなりました。新政権下での巨額のインフラ投資や社会保障費の拡大が、既に国内総生産の100パーセント近くに達している国家債務をさらに膨張させるとの懸念が国債売りを加速させています。
為替市場
為替市場では、カナダドルの動きが注目を集めました。カナダ統計局が発表した6月の消費者物価指数が予想以上に鈍化したことを受け、カナダドルは米ドルに対して下落し、1ヶ月ぶりの高値から後退する展開となっています。コアインフレ指標が6年近くぶりに2パーセントを下回ったことで、市場参加者の間ではカナダ銀行が年内に追加の利下げに踏み切るとの観測が強まっており、これがカナダドルの売り要因として機能しています。
新興国通貨の中では、トルコリラの動向に関する分析が話題となりました。外資系金融機関のアナリストは、トルコ政府がインフレ抑制よりも対外収支の安定を優先するため、リラの下落ペースが加速することを容認する可能性が高いとの見方を示しました。トルコリラが対ドルで年間20パーセント台半ばのペースで下落すると予測されており、こうした為替政策が輸出競争力の回復に向けた意図的な調整であることが指摘されています。
インドルピーに関しては、通貨防衛と外貨獲得を目的とした政策が一定の成果を収めています。インド準備銀行は、非居住者インド人を対象とした外貨預金プログラムが順調に資金を集め、先週末までに174億ドルの純流入を記録したことを明らかにしました。原油価格の高騰がインドの国際収支を圧迫し、ルピーが過去最安値圏で推移する中、中央銀行がヘッジコストを負担してでも魅力的な金利を提供するこの施策は、外貨準備を補強し通貨の下落圧力を緩和するための重要な手段となっています。
米国の通商政策と移民政策も周辺国の経済や為替に間接的な影響を与えています。トランプ政権による厳格な移民取り締まりが、米国に住むヒスパニック系消費者の購買意欲を冷え込ませており、米国で事業を展開するメキシコのスーパーマーケットチェーンであるGrupo Comercial Chedraui(CHDRAUI)の株価が急落しました。こうした米国内の政策変更が移民の送金減少や二国間貿易の停滞を招くとの懸念は、メキシコペソなどの周辺国通貨にとって中長期的なリスク要因として意識されています。