#90  7月22日(水)中東情勢の緊迫化とハイテク企業の決算警戒感で米国株は反落

主要ニュースと経済指標

米国とイランの軍事衝突のエスカレーションが市場の大きな懸念材料となっています。米国はイランのミサイルやドローン関連施設などに対して12日連続で攻撃を実施し、これに対してフーシ派が紅海で石油タンカーを攻撃するなど、紛争は広がりを見せています。トランプ大統領はイランのインフラ施設への攻撃も辞さない構えを示しており、これを受けてブレント原油価格は一時1バレル96ドルを超える水準まで上昇しました。中東情勢の不確実性がエネルギー供給への脅威となり、世界的なインフレ圧力を長引かせるリスクが警戒されています。

通商政策の面では、トランプ政権の強硬姿勢が再び鮮明になっています。政権は長年使われていなかった1930年関税法第338条を用いて、カナダからの特定の輸入品に対して50パーセントの関税を課すと発表しました。ジェイミソン・グリア合衆国通商代表は議会証言において、米国の労働者保護と経済の再工業化を目的として、今後も関税を積極的に活用していく方針を強調しています。また、ブラジルに対しても不公正な貿易慣行を理由に25パーセントの関税が導入されるなど、通商摩擦が多方面で拡大しています。

経済指標に関するニュースとして、連邦準備制度理事会がインフレ指標として重視する個人消費支出価格指数の算出方法が改定されることが明らかになりました。投資顧問料やソフトウェア、法的サービスの価格測定手法が見直され、これにより今年発表されるコアインフレ率が従来よりもやや鈍化して示される可能性があります。一方、アルゼンチンでは5月の経済活動指数が前月比で0.5パーセント低下し、2カ月連続のマイナス成長となりました。農業や鉱業が前年同月比で成長を牽引したものの、製造業や小売業の落ち込みが相殺しており、経済回復の不均一さが浮き彫りとなっています。

米国株式市場

本日の米国株式市場は、主要3指数がそろって下落する展開となりました。NYダウは51711.65でマイナス0.97パーセント、S&P500は7408.30でマイナス1.21パーセント、Nasdaq100は25137.69でマイナス2.15パーセントとなり取引を終えました。中東における軍事衝突の激化を受けた原油価格や債券利回りの上昇が市場全体の重荷となりました。さらに、決算発表を控えた大手ハイテク企業の動向に対して投資家が慎重な姿勢を強め、高値警戒感からの利益確定売りが優勢となりました。

市場の注目を集めたのは、人工知能インフラへの巨額投資を進める企業の決算発表です。テスラ(TSLA)が発表した第2四半期決算は、自動車の販売価格引き下げや人工知能およびロボティクス関連の支出増加が利益を圧迫し、調整後1株当たり利益が市場予想を下回りました。この結果を受けて同社の株価は時間外取引で大きく下落しました。アルファベット(GOOGL)はクラウド部門の売上高が好調だったものの、2026年の設備投資計画を大幅に引き上げたことが警戒され、こちらも時間外取引で売りが先行する展開となりました。

その一方で、好決算を背景に買いが集中した銘柄も存在します。スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)は、四半期の粗利益率が事前の予想を大きく上回るとの見通しを示したことで、株価が20パーセント近く急騰し、S&P500の構成銘柄のなかで上昇率のトップとなりました。同様にサーバーを手がけるデル・テクノロジーズ(DELL)も9パーセントを超える大幅な上昇を記録しました。インテル(INTC)も市場予想を上回る売上高と利益を発表し、株価が反発しています。反対に、GEベルノバ(GEV)は通期の売上高見通しを引き上げたにもかかわらず投資家の高い期待に届かず株価が下落し、IBM(IBM)はメインフレーム需要の減少を背景に通期の売上高見通しを下方修正しています。サービスナウ(NOW)はサブスクリプション売上高が予想を上回り、時間外取引で株価が上昇しました。

日本株式市場

本日の日本株式市場において、日経平均株価の終値は前日比116円59銭安の66,115円60銭となり、およそ0.2パーセントの下落で反落しました。一方でTOPIXは小幅な続伸で取引を終えました。前日の米国市場でハイテク株が上昇し半導体株指数が大幅高となったことや、アジア市場で韓国株が急伸したことを追い風に、朝方は買いが先行しました。日経平均株価は一時1,300円以上上昇し、67,000円台に乗せる力強い場面も見られました。

しかし、午後に入ると急速に伸び悩み、マイナス圏に沈む展開となりました。急ピッチな上昇に対する戻り待ちの売りが出たことに加え、中東情勢の緊迫化を背景とした原油価格の上昇や、およそ40年ぶりとなる1ドル163円台への歴史的な円安ドル高水準の進行が投資家心理の重荷となりました。さらに、アジア時間における韓国株の上げ幅縮小も影響を与え、強弱感が対立する不安定な相場環境となりました。また、円安進行にもかかわらず、自動車株など輸出関連への買いは限定的でした。

個別銘柄の動向としては、朝方に買われたAIや半導体関連株が明暗を分ける形となりました。アドバンテスト(6857)や東京エレクトロン(8035)、ソフトバンクグループ(9984)は買いが続かず下落に転じました。また、ファーストリテイリング(9983)やリクルートホールディングス(6098)も下落し、相場の押し下げ要因となりました。一方で、金利上昇を背景に銀行株が堅調に推移し、三井住友フィナンシャルグループ(8316)などが上場来高値を更新しました。本日グロース市場に新規上場したティアフォー(593A)は、公開価格を下回る初値をつけました。

債券市場

米国債券市場では、長期金利の高止まりが顕著な動きとして現れています。特に30年国債利回りは5パーセントを上回る水準での推移が継続しており、この水準に留まる日数は金融危機前の2007年以来の多さとなっています。インフレの粘り強さに対する懸念に加えて、国家債務の膨張や、人工知能関連のインフラ整備に向けた企業による資金調達需要の急増が、長期的な借入コストを押し上げる要因として働いています。投資家は、巨額の債券供給が市場の需給バランスに与える影響を注視しています。

指標となる10年国債利回りも4.7パーセント台で推移し、金利上昇圧力がかかっています。来週に予定されている連邦公開市場委員会の会合に向けて、スワップ市場が織り込む金利動向は、0.25パーセントの利上げ確率が約30パーセント、金利据え置きの確率が約70パーセントと見方が割れています。新たに連邦準備制度理事会の議長に就任したウォッシュ氏が、これまでの慣例であったフォワードガイダンスを廃止する方針を示しているため、市場参加者は次回の政策決定に関する手がかりを失い、金利の先行きに対する不確実性が高まりやすい環境となっています。

海外の債券市場に目を向けると、日本の政策動向に関心が集まっています。日本は国内総生産の200パーセントを上回る債務を抱えつつ、野心的な経済成長戦略を掲げています。巨額の財政出動と資金調達コストの抑制を両立させるため、日本の当局が政策の重点を為替介入からイールドカーブの管理へと移行させる可能性があると指摘されています。一方、欧州では欧州中央銀行が次回の政策理事会で金利を据え置く見通しとなっており、各国の金融政策スタンスの違いが債券市場の動向に影響を与え続けています。

為替市場

本日の為替市場では、地政学リスクの増大と各国の金融政策の先行きに対する見方が交錯し、神経質な値動きとなりました。米国とイランによる軍事衝突のエスカレーションや、紅海でのタンカー攻撃といった中東情勢の緊迫化がリスク回避のセンチメントを刺激しています。加えて、トランプ政権がカナダやブラジルに対して厳しい関税措置を発動するなど、予測困難な通商政策が投資家の警戒感を高めており、安全資産としてのドルの需要を下支えする背景となっています。

米ドルは主要通貨に対して底堅い展開を示しました。米国内のインフレ指標が依然として高水準にあり、米国債の長期利回りが上昇を続けていることが、ドルのサポート要因となっています。次回の連邦公開市場委員会で利上げが実施される可能性が市場で完全に排除されていないことも、ドルの買い安心感につながっています。投資家は、連邦準備制度理事会がインフレ抑制を優先し、政策金利を長く高く維持するとのシナリオに基づいてポジションを調整しています。

日本円に対する米ドルの動きも注目されました。日本円は今週、一時40年ぶりとなる安値水準まで下落しましたが、その後、日本銀行が市場の予想を上回るペースで利上げに踏み切る可能性が報じられたことで、わずかに反発する動きを見せました。日本の当局が為替介入による円安阻止から、国債の利回り管理へと政策の軸足を移すとの観測が浮上しており、これが為替市場における円のボラティリティを高めています。今後も日米の金利差の動向がドル円相場の方向性を決定づける主要な要因になると見られます。