#6 4月17日(金) 米国市場レポート

1. 株式市場動向

米国株式市場は、地政学リスクの後退と原油価格の急落を受けて大幅に上昇しました。S&P 500種株価指数は史上初めて7,100ドルの大台を突破し、ナスダック総合指数は13営業日連続の続伸を記録しました。これは1992年以来、約34年ぶりの最長記録となります。ダウ工業株30種平均も一時1,100ドル超上昇し、主要3指数が揃って3週連続の週間プラス圏で取引を終える極めて強い地合いとなりました。

市場の物色は、これまでのハイテク株主導から、エネルギー価格の下落が恩恵となる消費者関連や景気敏感銘柄へと広がりました。特に航空、クルーズ、ホームビルダーなどのセクターが堅調に推移したほか、中小型株で構成されるラッセル2000指数も2%を超える上昇を見せ、年初来の上げ幅を10%以上に拡大しました。投資家心理を反映するVIX(恐怖指数)は低下し、リスクオンの姿勢が鮮明となっています。

一方で、これまで上昇を牽引してきたエネルギーセクターは、原油先物相場の大幅な下落に伴い逆行安となりました。石油メジャーや掘削関連、肥料メーカーなどは軒並み売られ、週足ベースでは、2024年末以来最悪のパフォーマンスを記録しています。

2. 為替・金利・コモディティ

【金利動向】

米債券市場では、原油価格の下落を受けて期待インフレ率が低下し、長期金利が低下しました。米10年債利回りは4.3%近辺から4.24%台まで低下し、直近のレンジである4.2%台前半での推移を維持しています。高利回りが続いていた債券市場ですが、中東情勢の沈静化期待から「安全な資産」としての需要よりも、インフレ抑制を通じた将来的な利下げ期待が利回りを押し下げる要因となりました。

【コモディティ市場】

原油市場は歴史的な急落を記録しました。イランの外相がホルムズ海峡の「完全開放」を表明したことをきっかけに、WTI原油先物は一時13%超、ブレント原油も大幅に下落しました。WTIは1バレル80ドル台前半まで売り込まれ、紛争開始前の水準から約13ドル高い程度の水準まで戻しています。ただし、イラン側から「米国の封鎖が続く限り開放は無効」といった慎重な発言も出ており、物理的な供給フローの正常化には数週間から数ヶ月を要するとの見方も示されています。

COMMENT
『イラン側によるホルムズ海峡の解放に関する報道を受け、原油価格は下落しましたが、依然として戦闘開始前の水準には戻っていません。一方で、株式指数は記録的な上昇を見せ、戦闘開始前の水準を上回り、最高値を更新しています。株式市場は原油以外のさまざまな要因によって動いていることは確かですが、株式市場と原油などのコモディティ市場との間には、現状認識に乖離が生じている可能性があります。そのため、いずれかの市場において価格が行き過ぎている可能性も否定できません。仮に株式市場の上昇が行き過ぎであった場合には、今回の記録的な上昇に対する調整として、下落が生じる可能性があると考えられます。』

3. マクロ環境・政策動向

【地政学リスク・外交】

中東情勢は、イスラエルとレバノンの間での10日間の停戦合意に続き、イランがホルムズ海峡の商船通行を許可すると発表したことで、決定的な局面を迎えました。トランプ大統領は、イランが核開発の無期限停止に合意し、凍結資産の解除も求めないという内容で合意が近い旨を発言しています。一方で、米国によるイランへの海上封鎖は継続されており、イランの革命防衛隊関連メディアが反発を示すなど、完全な正常化に向けた不透明感も残されています。

【金融政策】

FRBのウォラー理事は、中東紛争が速やかに解決すれば利下げに前向きになる可能性を示唆しつつも、紛争が長期化しインフレ期待が高止まりする場合は、現在の金利水準を維持する必要があると述べました。また、石油価格のショックと関税の影響が重なることで、パンデミック時に匹敵するインフレ圧力となる懸念を表明しています。市場では年内1〜2回の利下げが依然として意識されていますが、雇用市場の強さとインフレの粘着性が判断を難しくしています。

【制度・政策】

米国国内では、トランプ政権の税制改正による影響が顕著になっています。2026年の所得税還付額は前年比で平均11%増加し、1件あたり平均3,462ドルに達しています。これはモルガン・スタンレーの予測を上回るペースであり、個人の消費余力を支える要因となっています。一方、ニューヨーク市ではマムダニ市長が500万ドル以上の第2の家を所有する非居住者を対象とした「ピエ・ダ・テール(空き家)税」の導入を発表し、富裕層への課税強化に乗り出しました。

COMMENT
『トランプ政権による税制改定の影響により、個人の消費余力が下支えされている可能性があります。一方で、先日公表された ベージュブック では、所得水準によって消費力の格差が拡大しており、富裕層は消費を増やしている一方で、比較的所得の低い層では消費力が低下しているとの指摘が見られました。このことから、現在の消費の強さは、米国経済全体の底堅さによるものではなく、一部の富裕層によって支えられている可能性があります。その場合、富裕層の消費力が低下した際には、米国の景気が悪化するリスクも考えられます。特に、富裕層が多くの資産を保有している不動産市場の動向には、注意を払う必要があると考えられます。』