原油高・中東情勢悪化は半導体株にどう波及するのか【後編】

KZ 著
令和8(2026)年4月20日

 【前編】では、原油高・中東情勢悪化が半導体株にどのような下押し圧力を与え得るのかを整理しました。そこでは、半導体セクターが単なる「ハイテク」や「成長株」ではなく、エネルギー・化学材料・金利・需要・物流といった複数の要因に同時にさらされる複合的な産業であることを確認しました。その意味で、ショック局面でSOXやナスダック100が下落したこと自体には十分な合理性があるといえるでしょう。

 ですが実際の市場では、その後SOXやナスダック100は大きく戻しています。しかも、原油価格(WTI)そのものがショック前の水準へ明確に戻ったとは言い難い中で、株式市場は先に持ち直しており、むしろ過去最高値を更新する勢いがあります【図表1】。ですので、本レポートでは前後編を通して、「原油高・中東供給不安ショックがなお残るなかで、なぜ市場は半導体株を買い戻したのか」、というテーマについてまとめていきます。

 以上を踏まえ、本レポート後編では、まずSOXやナスダック100がなぜ回復したのかを市場構造の観点から整理します。そのうえで、その戻りがどこまで合理的に説明できるのか、また市場がまだ十分に織り込んでいない可能性のある論点は何かを検討していきます。

【図表1】ナスダック100・半導体・原油の推移

 【前編】で確認した通り、原油高・中東供給不安ショックは半導体株に対して無視できない下押し圧力を与えています。にも関わらず、実際の市場では、中東情勢の悪化局面(米国のイラン攻撃後)でいったん売られた後、SOXやナスダック100は大きく戻しています【図表1】。この値動きを理解するうえで重要なのは、「原油高の影響がなかった」とみることではありません。むしろ、ショック直後に市場が何を織り込み、その後何を巻き戻し、何を改めて評価し直したのかを整理する必要があるといえるでしょう。

 地政学ショックが発生した直後の市場では、原油価格の上昇そのものだけでなく、供給途絶・物流混乱・インフレ再燃・金利高止まり・景気減速といった複数の悪材料が一気に意識されやすいです。とりわけSOXやナスダック100のように、成長期待の大きい銘柄の比重が高い指数は、リスクオフ局面でまず売られやすい傾向があります。ショック直後の下落は、その観点から考えると、個別企業の業績不振といった実害を投資家が確認した結果というよりも、この情勢悪化が今後どのようなシナリオを描くか未知数な中で、投資家の中で描く最悪のシナリオを先回りして織り込んでいる、と理解する方が自然なのかもしれません。

 ですが、時間の経過とともに、ショック直後に想定されていた極端なシナリオが、そのまま全面的に実現するとは限らないことも見えてくるでしょう。供給不安や中東情勢悪化が直ちに全面的な混乱へ発展しないとみられれば、市場は当初の悲観的なシナリオを部分的に修正します。つまり、株価の戻りの第一段階は、新たな強気材料の積み上がりというより、ショック直後に織り込まれた過度な悲観の巻き戻しとして捉える方が適切であると言えるでしょう。

 加えて、この巻き戻しには、地政学リスクそのものの後退だけでなく、米企業業績が想定ほど崩れていないことの確認も補助的に作用したと考えられます。金融セクターを含む一部企業の決算が市場全体の業績不安を和らげたことで、初期のリスクオフがやや行き過ぎであったとの見方が広がりやすくなったと考えております。ただし、SOXやナスダック100の戻りを説明するうえで中心的だったのは、やはり半導体・ハイテク銘柄の再評価であり、決算全般の底堅さはその補助線として位置づけるのが適切であると思います。

 以上のことから、SOX・ナスダック100の戻りは、原油高や中東情勢悪化の影響がなくなったからではなく、ショック直後に市場が織り込んだ「この先さらに悪化する」という見方がいったん後退したことから始まったとみるべきであると我々は考えています。

 2-1を踏まえると、ここで一つ疑問が生じるかもしれません。すなわち、原油価格そのものはショック前の水準へ十分戻ったわけではないにもかかわらず、なぜ市場は最悪シナリオをなお主軸に置いていないと考えられるのか、という点です。たしかに、株式市場の戻りを「原油高の解消」を織り込んだ結果とみるのはやや無理があるでしょう。ここで重要なのは、株式市場が原油高や供給不安を、恒久的・累積的な悪材料としてはまだみていない、という整理です。本節では、この点について検討していきます。

 市場にとって重要なのは、原油が高いという事実そのものだけではありません。その状態がどの程度の期間続くのか、さらにそこから一段と悪化し得るのかという見通しの方が重要です。言い換えれば、株価は原油価格の絶対水準だけで動くのではなく、原油高と供給不安がどれだけの期間持続するのかや、長期化する確率はどれくらいなのかを、織り込んで動きます。原油がなお高いにもかかわらず株が戻るという現象は、市場が現時点で、原油高の長期化をメインシナリオには置いていないことの表れと考えることができるでしょう。

 この意味で、足元の株価回復は「原油高の影響を無視している」というよりも、原油高と中東供給不安が時間をかけて企業収益や景気を持続的に傷めるシナリオまでは、まだ主軸として織り込んでいないとみる方が自然です。【前編】で整理したような下押し圧力が存在し得ること自体を否定しているのではなく、それが全面的かつ持続的に発現するとはまだみていない、ということです。

 したがって、株式市場の戻りは、原油高の解消というよりも、原油高と供給不安の長期化がメインシナリオではないという判断の上に成り立っている可能性が高いと考えています。

 もう一つ重要なのは、今回の戻りが市場全体に均等に起きたというよりも、指数寄与の大きい半導体・ハイテク銘柄を中心に進んだという点です。つまり、SOXやナスダック100の戻りを理解するには、単に「株式市場全体が落ち着いた」とみるだけでは不十分であり、どの銘柄が指数を押し上げたのかをみる必要があります。

 半導体株のなかでも、とりわけナスダック100やSOXといった指数の寄与度が大きい銘柄は、短期的な原油高による逆風だけでなく、AI投資、データセンター需要、先端半導体需要といった成長期待によって評価されやすいです。実際、2026年3月末時点でNVIDIAはナスダック100の8.69%、SOXの12.56%を占め、Broadcomもナスダック100で3.01%、SOXで10.30%を占めています。つまり、両指数の戻りを考えるうえで、これら主力銘柄の再評価は無視しにくいといえるでしょう。加えて、TSMCは先端AIチップの主要受託製造企業として、AI需要拡大の直接的な恩恵を受けています。実際、2026年4月にはAI半導体需要の強さを背景に通期売上見通しを米ドル建てで30%超へ引き上げ、設備投資も520億〜560億ドルレンジの上限寄りで進める方針を示しました。さらに、3ナノ製品はすでに売上の4分の1を占めており、前工程の中核企業として引き続き注目されやすい状況にあります。

 ここで誤解を解いておきたいのですが、「原油高の影響がないから買われた」という考えをしているわけではありません。この考えよりはむしろ、原油高によるマクロ面における株価への逆風を認識しつつも、それを上回る成長期待が価格形成を主導した、と整理しています。市場は、半導体株に対して単一の評価軸を当てているわけではなく、金利や原油といったマクロ要因と、AI・設備投資・需要構造の変化といった成長要因を同時にみている。その結果、指数を押し上げる主役銘柄(リード銘柄)については、マクロ逆風よりも成長期待の方が一時的に優先されたのである。

 したがって、SOX・ナスダック100の戻りは、原油高の悪影響が消えたからではなく、指数寄与の大きい半導体・ハイテク銘柄が、別の評価軸で再評価された結果とみてもよいのではないでしょうか。

 以上を踏まえますと、SOX・ナスダック100の戻りは、原油高や中東供給不安ショックの影響を否定するものではありません。ショック直後の下落には十分な合理性があり、その後の戻りは、第一に悪化の連鎖を過度に織り込んだ初期反応が修正されたこと、第二に原油高・供給不安の長期化がまだメインシナリオとみなされていないこと、第三に指数寄与の大きい半導体・ハイテク銘柄が成長期待を背景に再評価されたことによって説明できると思います。

 この意味で、足元の戻りには一定の合理性があります。ですが、それは原油高・中東情勢悪化の影響が消滅したことを意味していません。むしろ重要なのは、こうした戻りがどこまで持続し得るのか、また市場がまだ十分に織り込んでいない論点は何かを点検することです。次章では、この点をさらに掘り下げたいと思います。

 前章で見ました通り、SOXやナスダック100の戻りは、悪化の連鎖を過度に織り込んだ初期反応の巻き戻し、原油高・供給不安の長期化がまだメインシナリオとみなされていないこと、そして指数寄与の大きい半導体・ハイテク銘柄が成長期待を背景に再評価されたことによって、一定程度説明することができます。ですので、足元の戻りそのものを直ちに非合理と断じる必要はないでしょう。

 もっとも、それは原油高・中東情勢悪化の影響が消滅したことを意味しません。むしろ重要なのは、現在の株価回復が、どのような前提の上に成り立っているのかを確認することであるといえるでしょう。言い換えれば、市場は何をすでに織り込み、何をまだ十分に織り込んでいない可能性があるのかを整理しなければなりません。本章ではこの点に焦点を当てて説明していこうと思います。

 足元の株価回復を考えるうえで、最も重要な論点の一つは、原油高が金利高止まりの長期化へつながるかどうかです。【前編】で整理したように、原油高が半導体株に与える即時的な下押し圧力としては、製造コストの増加以上に、インフレ再燃懸念を通じた金利面の逆風が大きいです。したがって、現在の戻りを評価する際にも、原油価格の水準そのものより、それが金融環境にどう接続するかをみる必要があるといえるでしょう。

 現時点で市場が株価を戻しているのは、原油高そのものを無視しているからではなく、むしろ少なくとも現段階では、原油高が持続的な金利高止まりへ直結するとの見方を、まだ主軸には置いていないからだと考えられmます。実際、Fed当局者からは、高油価が続けば基調インフレを押し上げ、利下げ開始を遅らせ得るとの見解が示されている一方で、市場金利自体は中東情勢の緩和期待に応じて低下する局面もみられており、市場が「原油高の存在」そのものよりも「その持続性」と「金利への接続」を見極めようとしていることがうかがえます。

 ですが逆に言えば、原油高が長引き、インフレ懸念が再び強まるようであれば、利下げ期待の後退や金利高止まり観測の再燃を通じて、半導体株には再び逆風が及びやすいです。とりわけSOXやナスダック100のように、将来の利益成長に対する期待で支えられている部分の大きい指数では、このリスクは小さくありません。市場が現在の戻りを維持できるかどうかは、原油高が金融面でどこまで持続的な影響を持つのかに大きく左右されます。したがって、足元の戻りをみる際にも、単に株価の強さを確認するだけでなく、金利高止まりがどこまで長期化し得るのかを見極める必要があると考えております。

 次に注意すべきなのは、原油高や中東供給不安の影響が、株価より遅れて企業収益に表れてくる可能性です。ショック直後の市場では、まず金利やセンチメントが価格形成を左右しやすく、実際のコスト増加や利益率への影響は、やや遅れて確認されることが多いです。したがって、半導体株が先に戻しているからといって、それだけで企業収益への影響が軽微だと結論づけることはできません。

 【前編】で見た通り、半導体製造は電力・ユーティリティや石油化学由来材料への依存度が高く、原油高は中期的にコスト上昇圧力として波及し得ます。こうしたコスト増は、直ちに全面的な業績悪化として表れるとは限りませんが、利益率にはじわじわと影響しやすいです。実際、(2024年の例で今回の事例と直接は関係しませんが、)TSMCは2024年1Q決算説明会で、台湾の電力料金引き上げが2Qの粗利率を70〜80bp押し下げ、下期も60〜70bp程度のマージン希薄化要因になるとの見通しを示していました(【出典】ー1)。とくに製造能力の大きいファウンドリやメモリメーカーほど、エネルギーや材料の価格上昇にさらされやすいと考えられます。

 市場が現在の株価回復を正当化している背景には、少なくとも現時点で、利益率の大幅な悪化がまだ確認されていないという事情もあると考えられます。しかし、このことは影響が存在しないことを意味せず、むしろ売上が維持されていたとしても、コスト上昇が粗利率や営業利益率を徐々に圧迫する可能性は残っています。

 したがって、今後の焦点は、売上の強弱だけではなく、利益率がどこまで維持できるかに移っていく可能性が高いです。現在の戻りが続くかをみるうえでも、原油高・中東情勢悪化の影響が企業のマージンにどの程度表れてくるのかは、無視できる論点ではないでしょう。

 足元の株価回復をみる際、もう一つ注意が必要なのは、SOXの上昇がそのまま半導体セクター全体の強さを意味するとは限らないという点です。第2章で見たように、今回の戻りは指数寄与の大きい半導体・ハイテク銘柄を中心に進んでいます。これは、構造的な成長期待を持つ一部銘柄が指数を強く押し上げている可能性を意味します。

 この点は重要です。というのも、指数の強さが目立つ局面では、投資家がセクター全体も同じように底堅いと受け取りやすいからです。ですが実際には、AI関連やデータセンター関連が相対的に強くても、民生向けや循環色の強い領域まで同じように耐性を持つとは限りません。Reutersは、TSMCやASMLの強気見通しがAI需要の強さを示している一方で、スマートフォンやPC向けではコスト上昇を背景に販売見通しの下押しが意識されていると報じています(【出典】ー2,3)。ですので、SOXの戻りをそのまま「半導体全体が原油高に強い」と読むのは、やや粗い見方であると思います。

 したがって、現在の戻りを評価する際には、指数の強さだけを見るのではなく、どの領域が相対的に強く、どの領域がなお脆弱なのかを見分ける必要があります。SOXの上昇はたしかに重要ですが、それはセクター内部の非対称性を覆い隠す可能性もあることに注意しておく必要があると考えております。

 さらに、需要と供給網への影響も、足元では十分に織り込まれていない可能性があります。原油高は、家計や企業の負担増を通じて、スマートフォン、PC、自動車、産業機器など景気に敏感な最終製品の需要を徐々に弱め、その影響が半導体需要にも波及する可能性があるでしょう。実際、OECDは原油高を受けて2026年の世界成長見通しを引き下げており、Reutersでも、原油高は購買力を削り需要を傷め得ると報じられています(【出典】ー4,5)。

 もっとも、半導体需要は一様ではありません。AIサーバーや一部データセンター関連のように、短期的には契約や投資計画の継続性が強く、需要が比較的底堅い分野もあります。実際、TSMCやASMLは2026年4月にAI需要の強さを背景として強気の見通しを示しています(【出典】ー2)。

 しかし、だからといって需要面のリスクが消えたとみるのは時期尚早といっても差し支えないように感じます。AI関連が相対的に底堅くても、それ以外の領域が弱含めば、セクター全体には重石となり得ます。実際、SK hynixはメモリー価格上昇を受けてPC・モバイル向け顧客が購入数量を調整していると述べており、先ほども述べた通り、Reutersも2026年のスマートフォンやPC販売の下押しを報じています(【出典】ー3)。したがって、足元で需要悪化が全面化していないことは、需要リスクが存在しないことを意味するのではなく、むしろ分野ごとに異なる形で遅れて表れてくる可能性を示しているといえるでしょう。

 供給網についても同様です。中東情勢悪化やホルムズ海峡をめぐる緊張は、原油価格の上昇にとどまらず、輸送コスト、戦争保険料、納期の不確実性、材料調達の摩擦といった形で、時間差を伴って企業活動に影響し得ます。実際、Reutersは中東紛争の拡大を受けて、戦争保険料が急騰し、タンカー運賃やLNG輸送コストも大きく上昇したと報じています。さらに、世界の製造業では、物流の混乱による納期遅延や投入コスト上昇がすでに観測されています(【出典】ー6)。

 こうした影響は、ショック直後の株価に直ちに全面反映されるとは限りません。むしろ当初は、原油価格や金利といったわかりやすい指標が先に意識され、物流摩擦や調達難の影響は、時間差を伴って業績やセンチメントに表れやすいです。自動車業界でも、中東情勢悪化が生産、投入コスト、運賃に悪影響を与えうるとの懸念が示されており、供給網リスクがエネルギー市場の外側へ波及し得ることを示しています。

 この意味で、現在の戻りは、需要や供給網の悪化がまだ本格化していないことにも支えられている可能性があります。したがって、足元の株価回復を評価する際には、今見えている強さだけでなく、遅れて表面化し得る需要・供給網リスクにも目を向ける必要があるといえるでしょう。

 以上を踏まえますと、SOXやナスダック100の戻りには一定の合理性があるとしても、それをもって原油高・中東情勢悪化の影響が消滅したとみるのは早いといえるでしょう。市場は現時点で、悪化の連鎖を過度に織り込んだ初期反応の修正や成長期待の再評価を織り込んでいる一方で、金利高止まりの長期化、利益率への遅行的な圧迫、セクター内部の非対称性、需要や供給網への遅れて出る影響については、なお十分に織り込んでいない可能性があります

 したがって、現在の戻りは全面的に否定すべきものではありませんが、その前提となっている楽観がどこまで維持されるかは、なお慎重にみる必要があると言えるでしょう。重要なのは、原油価格の水準だけを見ることではなく、それが金利・利益率・需要・供給網へどのような形で接続していくのかを追うことであると考えております。

 本レポート【前編】では、原油高・中東情勢悪化が半導体株にどのような経路で波及し得るのかを整理しました。確認したのは、半導体セクターが単なる「ハイテク」や「成長株」ではなく、エネルギー・化学材料・金利・需要・物流といった複数の要因に同時にさらされる複合的な産業であるという点です。したがって、イラン情勢の悪化局面においてSOXやナスダック100が下落したこと自体には十分な合理性があり、少なくとも原油高や中東情勢悪化が半導体株にとって無関係であったとは言い難いでしょう。

 そのうえで後編では、原油価格がなお高止まりしているにもかかわらず、なぜSOXやナスダック100が大きく戻したのかを検討しました。そこから見えてきたのは、足元の株価回復が原油高の悪影響消滅を反映したものではなく、主としてショック直後に織り込まれた悲観の巻き戻しと、指数寄与の大きい半導体・ハイテク銘柄に対する成長期待の再評価によって支えられているという構図です。言い換えれば、市場は原油高や供給不安の存在そのものを否定しているのではなく、それらが企業収益や景気に持続して悪影響を及ぼすシナリオを、現時点ではまだ主軸に置いていないとみる方が自然だと考えております。

 ただし、この戻りには一定の合理性がある一方で、それをもって安心材料とみなすのは早いとも考えております。【前編】で整理した下押し圧力、すなわち金利高止まり・利益率圧迫・需要鈍化・供給網の摩擦といった論点は、足元ではまだ十分に顕在化していない、あるいは株価に全面的には織り込まれていない可能性があります。とりわけ、指数の強さがそのままセクター全体の強さを意味するとは限らず、AI関連や指数寄与の大きい一部銘柄の強さが、半導体全体の実態を覆い隠している可能性には注意が必要です。

 以上を踏まえますと、現時点での結論は明確です。SOXやナスダック100の戻りは、過度な悲観の修正と成長期待の再優先という観点から一定程度説明可能であり、全面的に非合理と断ずる必要はありませんが同時に、それは原油高・中東情勢悪化の影響が消滅したことを意味しません。したがって、今回の戻りは「影響なし」の確認ではなく、なお検証を要する回復局面として捉えるのが適切でしょう。

 今後の相場をみるうえで重要なのは、原油価格の水準そのものだけを追うことではありません。むしろ、原油高が金利の高止まり、企業利益率の圧迫、民生・循環系需要の鈍化、物流や供給網の摩擦といった形で、どこまで実体面に接続していくのかを見極めることです。焦点は、「原油が高いかどうか」ではなく、原油高がどの経路を通じて、どの程度持続的に半導体株の前提を揺るがすかにあります。この点を引き続き点検していくことが、今後の半導体株と株式市場全体を評価するうえで重要になる、と我々は考えております。

 最後に、一見すると不思議に見える相場の動きも、このレポートのように背景を一つずつ整理していくと、「なぜそう動いたのか」が少しずつ見えてきます。市場を見る面白さは、まさにこうした複数の要因をつなげて考えるところにあります。本レポートが、その見方に触れるきっかけになれば幸いです。

  1. Q1 2024 Taiwan Semiconductor Manufacturing Co Ltd Earnings Call (Chinese, English)
  2. Strong ASML, TSMC forecasts signal AI spending boom is intact | Reuters
  3. Surging memory chip prices dim outlook for consumer electronics makers | Reuters
  4. OECD: Iran war erases global growth upgrade, fans inflation | Reuters
  5. Macro Matters: ‘Higher oil prices will destroy demand’ | Reuters
  6. Apple warns memory costs are starting to bite as Samsung, SK Hynix prioritise AI chips | Reuters