1. 株式市場動向
米株式市場は、ダウ工業株30種平均が約300ポイント下落し、S&P500指数およびナスダック総合指数もそれぞれ0.5%以上の下落となるなど、主要3指数が揃って下落しました。S&P500とナスダックは2営業日連続でのマイナスとなっています。
市場では、米国とイラン間の停戦合意に向けた交渉が行き詰まることへの警戒感が高まり、リスク回避の動きが優勢となりました。加えて、原油価格の上昇が企業業績や消費者に与える影響への懸念が株価の重荷となっています。一方で、第1四半期の決算発表シーズンが本格化しており、個別企業の業績に対する注目も集まっています。
2. 為替・金利・コモディティ
【為替市場】
3月の米小売売上高が市場予想を上回る強い伸びを示したことを受け、米国の経済状況が引き続き堅調であるとの見方が広がり、米ドルは上昇基調で推移しました。
【金利動向】
米10年国債利回りは4.3%付近まで上昇しました。予想を上回る小売売上高の発表直後から利回りは上昇傾向となり、原油価格の高止まりがインフレ圧力の長期化につながるとの懸念も、金利の押し上げ要因となりました。
【コモディティ市場】
中東情勢の緊迫化を背景に原油価格は上昇しました。WTI原油先物は一時1バレル94ドル付近まで上昇し、ブレント原油先物も100ドルに迫る水準で推移しました。原油供給の先行き不透明感が相場を支えています。
3. マクロ環境・政策動向
【地政学リスク・外交】
米国とイランの停戦期限が迫る中、J.D.バンス副大統領によるパキスタンでの交渉参加が保留となりました。イラン側は、圧力が続く状況下での交渉を拒否する姿勢を示しています。これを受け、トランプ大統領は、イランの指導部から統一された提案が提出されるまで、米国側として一方的に停戦を延長すると発表しました。ただし、ホルムズ海峡などにおける海上封鎖は継続する方針を示しています。
COMMENT
『トランプ大統領が停戦の延長を発表したにもかかわらず、市場がこれまでほど上昇していないことを踏まえると、買いの勢いが弱まっている可能性があります。S&P500やナスダック総合指数が過去最高値圏で推移する中、投資家は新規に買いを入れづらい状況となっており、押し目買いの機会を狙って下落を待っている可能性があると考えられます。』
【金融政策】
トランプ大統領が連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名したケビン・ウォルシュ氏の上院銀行委員会における承認公聴会が実施されました。ウォルシュ氏はFRBの独立性の重要性を強調し、大統領から金利引き下げの確約を求められたことはないと証言しました。また、インフレ抑制に向けた新しい枠組みの必要性に言及し、バランスシートの縮小と金利を通じた政策運営を重視する方針を示しました。
【制度・政策】
トランプ政権が風力および太陽光発電プロジェクトへの許可に制限を設けたルールについて、連邦裁判所がこれを差し止める決定を下しました。また、国防総省はドローンおよび対ドローン技術を対象に過去最大規模となる数百億ドル規模の予算案を策定しており、関連産業への影響が注目されています。
4. 個別銘柄動向
【テクノロジー・通信】
・Apple (AAPL):ティム・クックCEOが9月1日付で退任し、エグゼクティブ・チェアマンに就任すると発表しました。後任のCEOにはハードウェア部門責任者のジョン・ターナス氏が就任する予定です。
・Amazon (AMZN):AI企業のAnthropicに対し50億ドル(最大200億ドル)の追加投資を実施すると発表しました。また、医療サービスプラットフォームのAmazon One Medicalを通じて、月額25ドルからの肥満治療薬(GLP-1)提供プログラムを開始することを明らかにしました。
・Adobe (ADBE):250億ドル規模の新たな自社株買いプログラムを承認したことを発表しました。
・T-Mobile (TMUS):Deutsche Telekomが同社との完全な合併を検討していると報じられました。
・Amprius Technologies (AMPX):米国防総省によるドローン関連予算の拡大案を背景に、株価が上昇しました。
・Anthropic:同社のAIモデル「Mythos」に対して、未承認のユーザーによるアクセスがあったと報じられました。
【ヘルスケア・医薬品】
・UnitedHealth Group (UNH):第1四半期決算において売上高と利益がともに市場予想を上回り、通期の利益見通しを上方修正しました。医療費の管理改善が寄与し、株価は約7%上昇しました。
・Eli Lilly (LLY) / Novo Nordisk (NVO):Amazonが肥満治療薬市場への参入を発表したことを受け、両社の株価は下落しました。
【資本財・産業・航空】
・3M (MMM):第1四半期決算を発表し、1株当たり利益が2.14ドルと市場予想を上回りました。通期の業績見通しは維持されています。
・GE Aerospace (GE):決算発表を行いましたが、下半期の業績見通しを引き上げなかったことが嫌気され、株価は下落しました。
・Alaska Air Group (ALK):第1四半期決算で予想以上の赤字を計上しました。ジェット燃料価格の高騰を理由に、通期の業績ガイダンスを取り下げました。
・United Airlines (UAL):第1四半期の売上および利益は予想を上回りましたが、ジェット燃料コストの上昇を理由に、通期のEPSガイダンスを下方修正しました。
【小売・消費】
・Tractor Supply (TSCO):第1四半期の売上・利益ともに市場予想を下回りました。ペット関連商品の販売不振などが響き、株価は11%以上下落しました。
【金融・不動産】
・Capital One Financial (COF):第1四半期決算で売上・利益がともに予想を下回りました。貸倒引当金が予想以上に増加したことが影響しています。
COMMENT
『Capital One Financial は、中低所得者層の利用者が多いクレジットカード会社です。同社の貸し倒れ引当金が市場予想を上回っていることは、中低所得者層の生活が逼迫している可能性を示唆しています。
また、連邦準備制度理事会 が公表したベージュブックにおいても、高所得者の消費は堅調に伸びている一方で、中低所得者の消費は伸び悩んでおり、両者の格差が拡大していることが指摘されています。さらに、Bank of America のレポートでも、高所得世帯の支出の伸びが中所得層および低所得層を引き続き大きく上回っているとされています。加えて、低所得者層の3月の支出は一見増加しているものの、その主因はガソリン価格の上昇であり、ガソリンを除いた支出はむしろ鈍化していると報告されています。さらに、税還付の増加が短期的に支出を押し上げているものの、その恩恵は主に高所得世帯に偏っており、結果として所得階層間の消費格差は一層拡大しています。
これらを踏まえると、現在の景気は主として富裕層の消費によって支えられている可能性があります。富裕層の多くは株式や不動産といった資産を多く保有しているため、これらの市場が下落し始めると、その影響で消費が冷え込み、結果として米国経済全体に波及するリスクがあると考えられます。もっとも、このような経済の低迷は短期間で生じるものではなく、段階的に進行する可能性が高いため、継続的な監視が必要です。また、この所得格差に起因する経済のアンバランスな状態が長期化すればするほど、その調整局面における影響は大きくなり、最悪の場合には、リーマン・ショック のような深刻な経済危機につながる可能性も否定できません。したがって、今後は所得階層別の消費動向を継続的に注視し、このアンバランスが是正に向かうのか、あるいは崩壊のきっかけとなる事象を市場が大きく動く前に捉えられるよう、分析を継続していきます。
参考
https://institute.bankofamerica.com/content/dam/economic-insights/consumer-checkpoint-april-2026.pdf』
・Interactive Brokers (IBKR):第1四半期決算を発表しました。1株当たり利益は予想と一致しましたが、売上高はわずかに予想に届きませんでした。一方で、顧客口座数は前年比で31%増加しています。
・DR Horton (DHI):四半期決算が市場予想を上回り、受注の増加が牽引したことで株価が約6%上昇しました。