#14 4月23日(木) 米国市場レポート

1. 株式市場動向

米国株式市場は、S&P500とNasdaqは一時最高値を付けましたが、その後は利益確定売りや地政学的な不透明感から押し戻されました。終値ではダウ工業株30種平均が前日比約200ドルの値下がり、S&P500が約0.4%の下落、ナスダックは約0.6%の下落を記録しました。市場では、好調な企業決算を背景とした買いと、イラン情勢を巡る不透明感や原油価格の上昇に伴うリスク回避の動きが交錯しています。

セクター別では、半導体関連銘柄が引き続き好調で、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は17営業日連続の続伸を記録し、この期間に約42%上昇するという記録的なパフォーマンスを見せました。これに対し、ソフトウェアセクター(IGV)は過去1年で最悪の下落率を記録し、8日間の連騰が止まりました。サービスナウやIBMの決算発表を受け、AIによる既存ビジネスの破壊や中東情勢による契約遅延への懸念が広がったことが要因です。また、公共事業や生活必需品、資本財セクターなどは比較的堅調に推移した一方、金融や一般消費財、テクノロジーセクターは出遅れる形となりました。

市場全体のセンチメントとしては、企業の収益成長が強固であるとの見方が下支えとなっています。S&P500採用企業の第1四半期決算は、これまでに報告された分を統合すると2桁増益のペースを維持しており、実現すれば6四半期連続の2桁増益となります。一方で、バリュエーションの高さや、今後のエネルギー価格の上昇が消費に与える影響について、投資家の間でも慎重な見方が台頭し始めています。

COMMENT
『SOX指数は17日連続で上昇しており、非常に強い上昇トレンドが続いています。しかし、本日の半導体セクターの騰落率を見ると、時価総額の大きいNVIDIAやBroadcomは下落しており、必ずしもセクター全体が一様に上昇しているわけではありません。

実際には、決算を発表したTexas Instrumentsが約20%上昇するなど、一部の銘柄の大幅上昇に支えられた動きとなっていました。このことから、半導体セクター内では上昇銘柄と下落銘柄が混在しており、上昇の広がりにやや欠ける状況であると考えられます。

そのため、今後、決算を背景とした上昇圧力が一巡した場合、SOX指数の上昇は鈍化、あるいは下落する可能性があります。さらに、今回の相場上昇を牽引してきたSOX指数が下落に転じた場合には、S&P 500などの主要株価指数にも波及し、全体として大きな下落につながる可能性があると考えます。』

2. 為替・金利・コモディティ

【為替市場】

ドルが主要通貨に対して買われ、1週間ぶりの高値を付けました。中東での停戦交渉に目立った進展が見られないことや、米国の長期金利の上昇を背景に、安全資産としてのドルの需要が高まっています。また、円安傾向も続いており、一時は1ドル159.8円台に乗る場面も見られました。

【金利動向】

米債券市場では、長期金利が上昇しました。10年物国債利回りは一時期4.34%から4.36%付近まで上昇し、4月中旬以来の高水準を記録しました。これは原油価格の急騰を受けたインフレ期待の高まりや、来週に控える連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした警戒感が影響しています。利回りの動きは原油価格と強い相関性を示しており、原油高が続く限り金利にも上昇圧力がかかりやすい状況が続いています。

【コモディティ市場】

原油価格が急騰しました。国際的な指標である北海ブレント原油先物は一時1バレル=107ドル台まで上昇し、100ドルの大台を超えました。ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)も前日比約4%上昇しています。中東の地政学的リスクに加え、イランの交渉責任者の辞任報道や、ホルムズ海峡への機雷敷設の懸念が供給不安を煽っています。ガソリン先物価格も2022年7月以来の高水準を付け、ディーゼル燃料価格も上昇しています。また、金価格についても、地政学リスクを背景とした底堅い推移が続いています。

3. マクロ環境・政策動向

【地政学リスク・外交】

中東情勢の緊張が一段と高まっています。トランプ大統領は、ホルムズ海峡に機雷を敷設する船舶に対し、海軍へ「撃沈」を命じたことを明らかにしました。これを受けて、イラン側も追加の機雷敷設を行ったとの報道があり、一触即発の状態が続いています。また、イスラエルメディアは、イランの交渉責任者であるモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長が交渉チームから辞任したと報じました。これはイラン革命防衛隊(IRGC)など硬派勢力の圧力を受けたものとみられており、停戦交渉が難航するとの懸念が強まっています。一方で、イスラエルとレバノン間の停戦については3週間の延長が合意されました。

【金融政策】

市場の関心は来週のFOMCに集まっています。インフレ率が依然として目標の2%を上回る中、エネルギー価格の上昇が新たな押し上げ要因となっており、早期の利下げ期待は後退しています。一部の専門家からは、堅調な経済指標を背景に「利下げの必要はない」との意見も出されています。また、銀行規制当局はコミュニティバンクのレバレッジ比率要件を9%から8%に引き下げる規制緩和を決定しました。これにより、約4,000の地方銀行が対象となり、約650億ドルのバランスシートが解放され、融資余力が高まることが期待されています。

COMMENT
『4月初旬から先週末にかけて、株式指数は記録的な上昇を見せました。一方で今週は、高値を更新しているものの、ラリー(レンジ)を形成しています。このため、先週までの急激な上昇に対する調整局面のきっかけを探している運用者は多いと考えられます。しかし現時点では、イランとアメリカの戦闘終結に向けた交渉の後退といったネガティブなニュースが出ても、株価は大きく下落していません。したがって、相場が本格的に調整に入るためには、別の材料が必要である可能性があります。

来週の火曜日と水曜日にはFOMCが開催されます。現在は、イラン情勢を背景とした原油価格の上昇により、インフレ再燃の懸念が高まっています。また、雇用関連の経済指標も労働市場の堅調さを示しています。こうした状況を踏まえると、水曜日に予定されているパウエル議長の記者会見において、今後の利下げに慎重な姿勢、すなわちタカ派的なメッセージが示される可能性があります。その場合、これまで続いてきた上昇相場に対する調整のきっかけとなる可能性があるため、同会見の内容には十分に注視する必要があると考えます。』

4. 個別銘柄動向

【テクノロジー・半導体】

・Intel Corporation (INTC):第1四半期決算が市場予想を大幅に上回りました。調整後1株利益(EPS)は0.29ドル(予想0.01ドル)、売上高は135.8億ドル(予想124.2億ドル)となり、第2四半期のガイダンスも強気な内容でした。AI向けのCPU需要の急増が寄与しました。また、エヌビディアが同社株の5%を取得したほか、テスラの「テラファブ(TerraFab)」への参画なども報じられ、時間外で株価は15%以上急騰しました。

・Tesla (TSLA):第1四半期決算は売上高が予想を下回った一方、利益は予想を上回りました。しかし、設備投資(CapEx)の年間見通しを従来の200億ドルから250億ドルへ引き上げたことが嫌気され、株価は下落しました。イーロン・マスクCEOは、ロボタクシーや人型ロボット「オプティマス」への投資を強調しました。

・Texas Instruments (TXN):第2四半期の強気な売上見通しを発表し、株価は約19%上昇しました。データセンター部門の売上高が前年同期比で90%増加するなど、アナログチップの需要回復が鮮明となっています。

・Meta Platform (META):AI投資の継続と効率化を理由に、全従業員の約10%にあたる約8,000人の人員削減を発表しました。

・Microsoft (MSFT):創業51年で初となる希望退職(70ルール:年齢と勤続年数の合計が70以上の社員が対象)を発表しました。米国従業員の最大7%が対象となる可能性があります。

COMMENT
『Meta Platformsは、当該施策について「れは経営の効率性を高めるための継続的な取り組みの一環であり、他の投資分を相殺するためでもある」と説明しています。このことから、同社は資本および人員を特定の重点事業に集中的に配分している可能性が高いと考えられます。

こうした戦略のもとでは、AI関連事業の高い成長率が企業全体の成長をさらに押し上げる可能性があります。一方で、市場の一部で指摘されているように、AIへの巨額投資が十分に回収できないといった問題が顕在化した場合には、業績への懸念が急速に高まり、これまでにない規模で企業価値の毀損や株価下落が生じるリスクも存在していると考えられます。』

・ServiceNow (NOW):決算で中東情勢による契約遅延を報告し、サブスクリプション収益の伸びが懸念されたことで、株価は17%以上下落し過去最悪の下げを記録しました。

・IBM (IBM):売上高と利益は予想を上回りましたが、マクロ経済の不透明感を理由に通期の売上高ガイダンスを据え置いたことが嫌気され、株価は約8%下落しました。

【金融・不動産】

・Blackstone (BX):第1四半期決算で分配可能利益が25%増加し、運用資産残高(AUM)は1.3兆ドルを突破しました。AIインフラへの戦略的投資がリターンを牽引しています。

・Pinnacle Financial Partners (PNFP):決算は好調で、通期ガイダンスを据え置きました。プライベートクレジットへの露出についても健全性を強調しています。

・CBRE Group (CBRE):第1四半期決算は予想を上回る増収増益でした。データセンター関連事業が前年比50%超の成長を見せています。

【運輸・航空】

・American Airlines Group (AAL):第1四半期は赤字でしたが、赤字幅は予想より縮小し、売上高は過去最高を記録しました。一方で、燃料費高騰を理由に通期利益見通しを下方修正しました。Spirit Airlinesの買収には否定的な考えを示しています。

・Southwest Airlines (LUV):第1四半期決算で1株利益が予想を下回り、株価は5%下落しました。

・Spirit Airlines:政府による5億ドル規模の救済策(政府による株式取得やワラント取得)が検討されていると報じられています。

・Avis Budget Group (CAR):記録的なショートスクイーズにより一時847ドルまで急騰した反動で、50%を超える暴落となり229ドルで引けました。

【小売・消費財・その他】

・lululemon athletica (LULU):次期CEOに元ナイキ幹部のハイディ・オニール氏を任命しましたが、就任が9月となることや戦略転換への不透明感から株価は12%下落しました。

・NIKE (NIKE):グローバル・オペレーション部門を中心に約1,400人の人員削減を発表しました。 ・ユナイテッド・レンタルズ:通期の売上高見通しを引き上げ、株価は約22%急騰しました。非居住用建設やインフラ需要の強さが背景にあります。

・Thermo Fisher Scientific (TMO):通期ガイダンスを引き上げましたが、中東情勢によるインフレ圧力への懸念から株価は約10%下落しました。