1. 株式市場動向
5月1日の米国株式市場は、S&P500種株価指数が21ポイント高の7,230、ナスダック総合指数が222ポイント高の25,114で引け、ともに過去最高値を記録して5週連続の上昇を達成しました。一方、ダウ工業株30種平均は152ポイント安の49,499で引けました。市場全体としては、S&P500が4月に10%以上、ナスダックが15%以上の上昇を記録し、ともに2020年以来の月間最大上昇率となっています。AlphabetやAppleなどハイテク大手による強固な企業業績とAIインフラへの巨額投資が、中東でのイラン戦争に起因する原油価格高騰の懸念を打ち消し、相場全体を強力に牽引しました。
代替投資戦略への資金流入も顕著であり、ヘッジファンド業界の第1四半期の資金流入額は450億ドルに達しました。これにより、業界の運用資産残高は過去最高の5兆2,000億ドルに膨張しています。また、個人投資家の間では「SOXL」や「SOXS」といった半導体関連のレバレッジETFの売買が過去5年間で最高水準に達するほど活発化しています。一方、英国のFTSE100種総合株価指数は、エネルギー関連株やAstraZenecaの下落が重しとなり、0.1%安の10,363.93で取引を終えました。
COMMENT
『4月のSOX指数の記録的な上昇は、レバレッジ型ETFによる取引に支えられていた可能性があります。レバレッジを用いた取引は長期保有を前提としたものではなく、短期的な値幅取りを目的としているケースが多いため、利益確定のタイミングが模索されていると考えられます。
そのため、何らかのきっかけで半導体関連銘柄が下落を始めた場合、これらのレバレッジポジションが一斉に解消されることで、下落が加速する可能性があると考えています。』
2. 為替・金利・コモディティ
【為替市場】
5月1日、日本の通貨当局による為替介入が実施されたとみられ、円相場は1ドル=157.12円から一時155.60円まで上昇しました。ブルームバーグの分析によると、木曜日の介入規模は約345億ドル(約5兆4,000億円)と推計されています。日本の財務省の三村財務官は、投機的な動きが依然として蔓延していると指摘し、当局が市場に再介入する準備があることを警告しました。
【金利動向】
米国の10年物国債利回りは約4.4%まで上昇しました。金利デリバティブ市場では、FRBの金融政策決定会合での意見対立を受けて、2027年9月までに2回の0.25%利上げを見込むポジションや、数カ月以内の利上げリスクをヘッジする動きが活発化しています。SOFR(担保付翌日物金利)スプレッド取引(2026年12月-2027年3月)では、木曜日に12万8,000件という過去2番目の取引量が記録されました。 英国では、地方選挙を控えた政治的リスクやインフレ懸念から国債(ギルト債)が売られ、30年物利回りが12ベーシスポイント上昇して5.70%に達し、主要先進国の中で最も高い水準となりました。10年物利回りも5.03%まで上昇しています。
【コモディティ市場】
原油市場では、イランがパキスタンを介して米国の提案に回答したとのAxiosの報道などを受け、ブレント原油先物は一時1バレル=126ドルを上回る高値を記録した後、金曜日には約2%下落し108ドル近辺まで反落しました。WTI原油先物も約3%下落して101ドル近辺で推移しています。 貴金属市場では、テザー(Tether)社が第1四半期に6トン以上の金を購入し、3月末時点の金準備が198億ドル(132トン相当)に達したことが報告されました。また、金や銀の価格高騰により、サザン・コッパーは1〜3月期の銅生産のキャッシュコストが副産物収益により1ポンド当たりマイナス11セント(前年同期は77セント)になったと発表しました。
3. マクロ環境・政策動向
【地政学リスク・外交】
米国によるイランの港湾に対する海上封鎖が継続しています。トランプ米大統領は5月1日、パキスタンの仲介によるイランからの新たな提案に対して「満足していない」と述べ、ホルムズ海峡の「100%の封鎖」を維持する意向を示しました。また、米財務省はイラン産原油の取引や資金洗浄に関与したとして、イランの通貨両替所3カ所と、中国の石油ターミナル運営会社であるQingdao Haiye Oil Terminal Co.に制裁を科しました。キューバに対しても、トランプ大統領は同国政府の安全保障機関を支援する個人や団体を対象とした新たな制裁の大統領令に署名しました。 一方、アラブ首長国連邦(UAE)は5月1日付で石油輸出国機構(OPEC)から脱退しました。これにより、中東における産油国間の競争環境に大きな変化が生じると予想されています。
【金融政策】
5月1日、米連邦準備制度理事会(FRB)のミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、クリーブランド連銀のハマック総裁、ダラス連銀のローガン総裁は、水曜日に発表されたFOMC声明に反対票を投じた理由を説明する声明を発表しました。3氏は、米国経済の底堅さやイラン紛争による原油高など広範なインフレ圧力を挙げ、次の政策変更が「利下げ」に傾斜したガイダンスはもはや適切ではなく、利上げの可能性も示唆すべきだと主張しました。
イングランド銀行(BOE)のピル首席エコノミストは、5月1日のオンラインブリーフィングにおいて、イラン戦争前からインフレ低下の動きが停滞していたことを懸念し、金利をより迅速に引き上げるべきだと主張して据え置き決定に反対票を投じた理由を説明しました。
COMMENT
『世界各国の政策金利の決定会合において反対票が多く見られ、意見が分かれていることがうかがえます。特に米国では、ハト派とタカ派の双方から反対票が出ており、不確実性が高まっていると考えられます。
また、FOMC後に金利のデリバティブ取引が活発化していることからも、運用者の間で先行きの不透明感が強く意識されていることが表れていると考えられます。
そのため、今後の政策金利の動向は、CPIなどのインフレ指標や雇用統計に大きく左右される可能性があります。特に、8日に発表される雇用統計はFOMC後の重要な経済指標であるため注目度が高く、市場がこれまで以上に大きく変動する可能性があると考えています。』
【制度・政策】
米トランプ政権は5月1日、欧州連合(EU)が通商合意を完全に遵守していないとして、米国国内工場で生産されたものを除くEUからの自動車およびトラックの輸入に対する関税を来週から25%に引き上げる方針を発表しました。一方で、チャールズ国王の訪米を受け、英国産のスコッチウイスキーなどに対する10%の関税は撤廃することが発表されました。
米証券取引委員会(SEC)が上場企業の業績報告を四半期ごとから半期ごとに緩和する案について、ホワイトハウスの審査を通過したことが明らかになりました。 メリーランド州では、食料品店やデリバリーサービスにおいて顧客データに基づきAIで価格を引き上げる「ダイナミックプライシング」を禁止する法律(Protection From Predatory Pricing Act)が成立し、10月1日に施行されます。違反企業には1万ドル、再犯の場合は2万5,000ドルの罰金が科されます。
4. 個別銘柄動向
【テクノロジー・通信】
・Apple Inc. (AAPL):第2四半期決算において、売上高が前年同期比17%増の1,112億ドル、1株当たり利益が2.01ドル(予想1.96ドル)を記録しました。iPhoneの売上高は569億9,000万ドル、中国での売上高は204億9,000万ドルに達しました。AI需要によるプロセッサ供給不足を理由に、Mac miniの256GBモデルを廃止して最低ストレージを512GBに変更し、開始価格を599ドルから799ドルに引き上げました。また、9月にティム・クックCEOが退任し、ジョン・ターナス氏が新CEOに就任することが発表されました。
・Roblox Corp. (RBLX):児童保護のための安全対策(年齢認証やコンテンツ監視の拡大など)により新規ユーザー獲得が鈍化したとして、通期の予約売上高見通しを82億8,000万ドル〜85億5,000万ドルから、73億3,000万ドル〜76億ドルに引き下げ、株価が24%急落しました。。
・Nebius Group NV (NBIS):AI推論事業を強化するため、AIチップのパフォーマンスを最適化するスタートアップEigen AIを、株式と現金の約6億1,500万ドルで買収することに合意しました。
・Meta Platforms Inc. (META):ヒューマノイドロボット向けAIモデルを開発するスタートアップ、Assured Robot Intelligenceを買収したことを発表しました。
【エネルギー・素材】
・Exxon Mobil Corp. (XOM):第1四半期の調整後1株当たり利益は1.16ドルとなりました。原油価格は高騰したものの、未着貨物に紐づくデリバティブ契約の時価評価損(約39億ドル)が影響し、純利益は前年同期比46%減の42億ドルとなりました。同四半期中に49億ドルの自社株買いを実施しています。
・Chevron Corp. (CVX):第1四半期の純利益は37%減の22億ドルとなりましたが、Hess Corp.の買収効果などにより、調整後1株当たり利益は1.41ドルと市場予想を上回りました。
・BP Plc (BP):負債削減と資産売却(2027年までに約200億ドル目標)の一環として、Clair Fieldの45%権益を含む英国北海のアップストリーム事業の完全または一部売却を検討しており、売却額は約20億ポンドに達する可能性があると報じられました。
・Caterpillar Inc. (CAT):AIインフラ向けの発電設備の需要急増を背景に、堅調な業績と長期的な成長目標の引き上げを発表しました。
【金融】
・Cboe Global Markets (CBOE):中核事業へのリソース集中を図るため、グローバル従業員約1,670人のうち約20%を削減し、7月6日から週4日の出社を義務化する方針を5月1日の社内メモで発表しました。55歳以上かつ勤続5年以上の米・カナダ従業員には早期退職プログラムを提供します。
・Ares Management Corp. (ARES):第1四半期の実現利益は5億270万ドル(税引き後で1株当たり1.24ドル)、手数料関連利益は4億6,440万ドルとなり、ともに市場予想を下回りました。一方で富裕層向けを中心に300億ドルの資金調達を記録し、運用資産残高は前年同期比約18%増の6,443億ドルに達しました。
【その他】
・Seaport Therapeutics Inc. (SPTX):規模を拡大した2億5,500万ドルの米国IPOを実施し、1,416万株を18ドルで販売しました。上場初日の取引で株価は21ドルで始まり、17%上昇して時価総額は11億ドルに達しました。
・Spirit Airlines:トランプ政権との間で行われていた最大5億ドルの救済融資(政府が最大90%の株式を取得するワラントとの交換)に向けた交渉が債権者の反対などでまとまらず、航空機の清算と運航停止に向けた準備を進めていると報じられました。