株式市場動向
5月5日の米国株式市場は、AIブームを背景とした半導体・テクノロジー企業の好決算や強力な見通しが牽引し、主要指数が最高値を更新しました。S&P 500は0.81%上昇して7,273.26で史上最高値を更新し、ダウ工業株30種平均は0.73%上昇して49,298.26で取引を終え、3日ぶりに上昇しました。ナスダック総合指数も1.03%上昇し、25,361.05の最高値を記録したほか、小型株のラッセル2000も約1.8%急騰して2,845で最高値をつけています。これらの上昇は、米国とイランの不安定な停戦状態が維持され、ホルムズ海峡での武力衝突懸念が和らいだことで原油価格が下落し、市場の投資家心理がリスク選好に傾いたことが背景にあります。
しかし、市場の上昇は極めて少数の銘柄に偏っており、市場の牽引役が限られている実態も示されています。BofA Global Researchのデータによると、4月にS&P 500を上回るパフォーマンスを示した構成銘柄はわずか23%に留まり、1986年以降で4番目に低い月間数値を記録しました。また、PHLX半導体株指数は直近25日間で50%以上上昇し、ITバブル期である2000年3月9日以来の急激な上昇を記録しています。一方、企業による自社株買いは活発化しており、Birinyi Associatesのデータによれば、米国企業は4月までの4ヶ月間でS&P 500構成企業において過去最高の6,650億ドル規模の自社株買い計画を発表し、バリュエーションが高止まりする中でも企業のファンダメンタルズに対する自信が示されました。欧州市場では、HSBCの予期せぬ損失計上が重しとなり、英国のFTSE 100が1.04%下落しました。
COMMENT
『BofAのリサーチによると4月にS&P500を上回る上昇を視野銘柄は、全体の23%にとどまります。4月に特に上昇した銘柄は、半導体セクターの銘柄やGoogle, Amazon, Microsoftなどの以下総額の大きい銘柄です。この現状を踏まえると、これらの銘柄が利益確定され、4月に上昇していない銘柄へのリバランスが起こる可能性があります。その場合は、一度、大柄銘柄の株価が売られることになるので、S&P500が下落する可能性があると考えています。』
為替・金利・コモディティ
【為替市場】
米ドルに対してインドルピーは史上最安値を更新しました。米国とイランの緊張による原油高が燃料輸入国であるインドの国際収支を悪化させる懸念が高まったためです。インドネシアの中央銀行はルピアを下支えするために市場介入を実施しました。一方、南アフリカランドは中東紛争のなかでも底堅く推移しており、南アフリカ準備銀行のレセチャ・カニアゴ総裁は、投資家がポートフォリオを多様化させていることや、米ドルへの世界的な信頼低下が背景にあると言及しています。ユーロは米ドルに対して直近1ヶ月で約1.5%上昇し、ルーマニア・レウは対ユーロで一時0.8%下落して1ユーロ=5.234レウに達し、中央銀行が管理フロート制の下で通貨安を容認している状況が示されました。
COMMENT
『日本をはじめ、インドやインドネシアなどのアジア通貨が対ドルで非常に安くなっています。経常赤字の国や外貨準備が少ない国、また、ドル建て国債の発行額の多い国の財政が厳しくなる可能性があります。原因は異なるものの、過去にはアジア通貨危機が発生したことがあり、現在の通貨安も市場で意識される可能性があると考えています。そのため、アジアの国々の通貨安による財政への影響をさらに調査していきたいと考えています。』
【金利動向】
米国の30年国債利回りは6ベーシスポイント上昇して5.03%に達し、2025年7月以来初めて5%の節目を突破しました。原油価格の高騰やAI関連の設備投資急増によるインフレ懸念が背景にあり、スワップ市場では連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを行う前に、来年4月までに利上げを実施する確率が50%以上織り込まれています。英国では、労働党が地方議会選挙で数百議席を失う見通しなど政治的不確実性やインフレ懸念が重なり、30年国債(ギルト)利回りが11ベーシスポイント急伸して1998年以来の高水準となる5.78%に達し、10年国債利回りも18年ぶりの高水準となる5.1%に達しました。
【コモディティ市場】
原油市場では、米国とイランの停戦が維持されたことで供給懸念が後退し、Brent原油先物は約3%下落して1バレルあたり110.18ドル、WTI原油先物は3%以上下落しました。米国ではガソリンの全国平均小売価格が1ガロンあたり4.48ドルに上昇し、2022年7月以来の高値となりました。また、米エネルギー情報局(EIA)のデータによると、4月下旬の米国のガソリン総在庫は2億2200万バレルとなり、この時期としては2014年以来の低水準を記録しています。これは、ホルムズ海峡の事実上の封鎖によって欧州や中東からの従来の供給ルートが停止し、東海岸へのガソリン輸入が急減したことが原因です。
マクロ環境・政策動向
【地政学リスク・外交】
トランプ米国大統領は、来週北京で開催される中国の習近平国家主席との首脳会談でイラン戦争について議論すると発表し、中国側が敬意を払っているとして対立の懸念を和らげる姿勢を示しました。ホルムズ海峡では、米国が商船の航行を保護する「Project Freedom」を開始し、Maerskの子会社が運航する米国籍船「Alliance Fairfax」が米軍の護衛のもとで海峡を通過しました。しかし、イランが海峡での支配領域を拡大し、アラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ港の石油ターミナルを攻撃したため、依然として1,500隻以上の商船がペルシャ湾で足止めされています。これを受け、米国とその同盟国は、イランがホルムズ海峡での攻撃を停止しない場合、国連憲章第7章を発動して制裁や軍事行動の道を開く国連安全保障理事会の決議案を推進しています。その他、日本の高市早苗首相はベトナムとオーストラリアを訪問し、アンソニー・アルバニージー豪首相と会談して両国の「準同盟」関係をアピールしました。
【金融政策】
オーストラリア準備銀行(RBA)のミシェル・ブロック総裁は、政策金利を8対1の賛成多数で引き上げ、借入コストをパンデミック後の最高水準である4.35%に戻すと発表しました。中東紛争以前からインフレ圧力が高まっていたことや生産性の低迷が要因であり、インフレ抑制のために主要国の中で最もタカ派的な対応を主導しています。欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、フランクフルトの気候会議で、イラン戦争によるエネルギー価格の高騰は欧州が化石燃料への依存を減らすための警鐘であると発言しました。一方、フランス銀行のフランソワ・ビルロワドガロー総裁は、原油価格上昇がインフレに与える影響はまだ金利引き上げを正当化するほど十分ではないと述べています。米連邦準備制度理事会(FRB)のミシェル・ボウマン副議長は、金融詐欺が金融システムに対するリスクを増大させていると警告し、米国成人の5人に1人が2024年に金融詐欺の被害に遭った事実を指摘しました。
【制度・政策】
米証券取引委員会(SEC)のPaul Atkins委員長は、上場企業に対し従来の四半期ごとの業績報告(10-Q)に代わり、半期ごとの報告(Form 10-S)を選択できるようにする規則変更案を発表しました。トランプ大統領が提唱してきたこの変更は、企業の短期的な思考を減らし、規制の柔軟性を高めることを目的としています。米商務省のAI標準・技術革新センター(CAISI)のChris Fall所長は、Google、Microsoft、xAIの3社と、AIモデルの一般公開前にセキュリティ評価を行うための新たな協定を結んだと発表しました。ドイツでは、メルツ首相が連立政権の崩壊危機に直面する中、少数与党政権の樹立や早期の解散総選挙を否定し、右派政党AfDへの権力移行を阻止する姿勢を強調しました。ケニア政府は、国内総生産(GDP)比5.3%に財政赤字を削減するため、財務省が議会に提出した2026年財政法案において、1203億シリング(約9億3100万ドル)を調達する新たな増税措置を提案しました。ルーマニアでは、Ilie Bolojan首相率いる少数与党政権が、財政削減に反対する社会民主党や極右野党の281人の議員の支持による内閣不信任決議案で崩壊しました。
個別銘柄動向
【テクノロジー / 半導体】
・Advanced Micro Devices (AMD): 第1四半期のデータセンター部門の売上高が前年同期比57%増の58億ドルに達し、全体の売上高は102億5000万ドル、調整後1株当たり利益は1.37ドルとなりました。データセンター向けチップの需要急増を背景に、第2四半期の売上高見通しを112億ドル(プラスマイナス3億ドル)と予想したことで、時間外取引で株価が12%上昇しました。
・Intel (INTC): Appleが米国でのチップ製造のために同社およびSamsung Electronicsと初期段階の協議を行ったとの報道を受けました。この提携可能性が18A先進ノードの検証につながると好感され、株価は13.37%急騰し、日中の時価総額が5470億ドルに達しました。
・Super Micro Computer (SMCI): 第3四半期の調整後粗利益率が9.9%に拡大し、1株当たり利益が84セントとなりました。AIサーバーの供給コスト管理が奏功しており、時間外取引で株価が16%上昇しました。
・Palantir Technologies (PLTR): 第1四半期の売上高は前年同期比85%増の16億3000万ドルとなり、予想の15億3000万ドルを上回りました。しかし、米国の商業向け売上高が期待外れであったため、引けで株価は6.93%下落しました。
・Shopify (SHOP): 第1四半期のマーチャントソリューション部門は39%増と好調でしたが、第2四半期の売上高成長率が前年同期比で「20%台後半」に鈍化するとの見通しを発表し、市場前取引で株価が最大11%下落しました。
・Coinbase Global (COIN): 暗号資産市場のボラティリティとAI時代の事業最適化を理由に、従業員の約14%にあたる約700人を削減すると発表しました。5000万ドルから6000万ドルのリストラ費用を計上する計画が評価され、引けで株価は6.14%上昇しました。
【金融】
・HSBC (HSBA.L): 詐欺事件に関連する4億ドルの予期せぬ損失を計上したことが明らかになり、プライベートクレジットのエクスポージャーに対する懸念から、ロンドン市場で株価が5.8%下落しました。
・Bullish (BLSH): トークン化インフラを拡大するため、株式移転エージェントであるEquinitiをSiris Capitalから42億ドル(負債18億5000万ドルを含む)で買収することに合意しました。この買収により、従来型株式とデジタルトークンを単一インフラで管理することを目指します。
【Consumer / Industrials / Other】
・Ferrari (RACE): 第1四半期の出荷台数は4.4%減の3,436台に落ち込みましたが、パーソナライゼーションの追加や高価格帯モデルの構成比改善により、EBITDAは前年同期比4%増の7億2200万ユーロを記録しました。
・GameStop (GME): eBayに対する560億ドルの買収提案を行いましたが、事業の負債増加への懸念から著名投資家マイケルバーリー氏が全株式を売却したと報じられました。
・Sterling Infrastructure (STRL): データセンターやAIインフラの建設需要を背景に、通期の利益および売上高のガイダンスを大幅に引き上げ、株価が日中で最大51%(799.49ドルまで)急騰し、1998年以来の最大の上昇を記録しました。
・Thomson Reuters (TRI.TO): 第1四半期の売上高が10%増の20億9000万ドル、調整後1株当たり利益が1.27ドルと予想を上回りました。しかし、Anthropicが金融サービス向けの新たなAIエージェントを発表したことで競合懸念が高まり、株価は一時5.1%下落しました。