#36 5月12日(火) 米国時間レポート

株式市場動向

米国株式市場は、人工知能(AI)ブームを牽引してきたハイテク株の急騰が一服したことや、予想を上回るインフレ指標が重石となり、主要指数がまちまちの展開で取引を終えました。ダウ工業株30種平均は0.11%上昇の49,760.56と小幅に続伸した一方で、S&P 500は0.16%下落の7,400.96、Nasdaq Compositeは0.71%下落の26,088.20と下落しました。市場の下げを主導したのは半導体セクターであり、PHLX Semiconductor Index は一時6.8%下落した後、最終的に3.01%安で引けました。米労働省が発表した4月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比3.8%上昇と2023年5月以来の高い伸びを記録したことで、エネルギー価格の上昇が他の経済部門に波及する懸念が強まり、連邦準備制度理事会による利下げ期待が後退して市場心理を冷やしました。

為替・金利・コモディティ

【為替市場】

インフレ懸念と中東の地政学リスクを背景に、Bloomberg Dollar Spot Indexは約0.4%上昇しました。英国ポンドは、労働党のスターマー首相に対する辞任要求が高まる政治的混乱を受けて売られ、対ドルで最大0.8%下落して1.35ドルとなりました。米国のベッセント財務長官は東京を訪問し、日本銀行による金融政策の正常化と通貨安定化に向けた取り組みを支持するとともに、「過度な変動は望ましくない」と言及しました。

【金利動向】

4月のCPIデータを受け、米国の10年国債利回りは約4.46%へ上昇し、30年国債利回りは一時5.03%を超える水準まで上昇しました。金利スワップ市場では、2027年4月までに0.25%の利上げが行われる確率が約70%から85%織り込まれ、インフレの長期化に対する警戒が強まっています。英国では、新たな労働党のリーダーが財政規律を緩めるのではないかとの懸念から国債が売られ、30年国債利回りが1998年以来の高水準である5.81%に達しました。

【コモディティ市場】

原油価格は、トランプ大統領がイランとの停戦について否定的な見解を示したことで供給懸念が強まり上昇しました。ブレント原油先物は約3.5%上昇し1バレル107.86ドル、WTI原油先物も102ドルを超える水準まで上昇しました。ホルムズ海峡の封鎖が続いており、世界の原油在庫が急減しています。銅価格は、中国の需要回復や中東からの硫黄供給の混乱を背景に、ロンドン金属取引所(LME)で0.6%上昇し、1トン14,025ドルをつけました。

マクロ環境・政策動向

【地政学リスク・外交】

ドナルド・トランプ大統領は、イランとの停戦合意が「大規模な生命維持装置(massive life support)」の状態にあると述べ、ホルムズ海峡の封鎖解除や制裁緩和を求めるイラン側の要求を「ゴミ(garbage)」と一蹴しました。一方、クウェート外務省は、イランのイスラム革命防衛隊がクウェート領内の島で小競り合いを起こしたと発表し、主権侵害として非難しました。こうした中、トランプ大統領は中国の習近平国家主席との首脳会談のため北京へ出発し、イラン問題よりも貿易と関税を優先議題とすると述べました。また、米国政府はイラン産原油を中国へ販売したとして、12の個人および団体に制裁を科しました。

【金融政策】

シカゴ連銀のグールズビー総裁は、エネルギー以外のサービスインフレの上昇が経済の過熱を示唆している可能性があると述べ、インフレの連鎖を断ち切る方法を考える必要があると警告しました。米国上院は、Kevin WarshのFRB理事への指名を賛成51、反対45で承認しました。議長就任に向けた承認投票は今週後半に行われる予定です。

【制度・政策】

米労働省発表の4月のCPIは、前年同月比3.8%上昇、前月比0.6%上昇となり、エネルギー価格(前年同月比17.9%上昇)とガソリン価格(同28.4%上昇)の高騰が全体を押し上げました。トランプ政権は、ガソリン価格高騰の対策として1ガロンあたり18.4セントの連邦ガソリン税の90日間一時停止を検討しているほか、牛肉の輸入関税を引き下げる大統領令の署名を一時保留しました。米上院銀行委員会は、暗号資産の規制枠組みとなる「Clarity Act」のテキストを公表し、銀行並みのマネーロンダリング対策や、ステーブルコインの報酬に関するルールを規定しました。また、トランプ大統領が違法に課した関税の返還について、米税関・国境警備局(CBP)が約87,000件の申告を承認し、355億ドル以上の返金処理が進められていますが、連邦巡回控訴裁判所は下級審の違法判決の効力を一時停止し、引き続き関税を徴収することを認めました。FDAのマーティ・マキャリー長官が就任後13ヶ月で辞任することが明らかになりました。ニューヨーク市のマムダニ市長は、固定資産税の約10%引き上げ案を撤回し、代わりに高額なセカンドハウスへの追加課税から5億ドルの税収を見込む総額1247億ドルの予算案を発表しました。

個別銘柄動向

【テクノロジー・半導体】

・Intel Corp (INTC):株価が6.8%下落し、半導体セクターの売りを主導しました。AIサーバー向けCPUへの期待やAppleとのチップ製造の予備合意報道などで年初来200%以上上昇していましたが、バリュエーションの高さや利益確定売りが影響しました

・Alphabet Inc (GOOGL):AIへの設備投資の資金調達を目的とし、同社初となる円建て社債の起債を開始しました。3年から40年までの8つのトランシェで構成されています。また、Android 17と新たなAI機能群「Gemini Intelligence」を発表しました。

・Qualcomm Inc (QCOM):半導体株の全面安に押され、株価が約12%急落し、2020年以来の大幅な下落となりました。

・Micron Technology Inc (MU):半導体セクターの利益確定売りの波に押され、株価が3.6%下落しました。

・CGI Inc (GIB):AIによる既存ビジネスモデルへの脅威が懸念されて株価が約40%下落するなか、François Boulanger CEOが退任し、Tim Hurlebausが新CEOに就任することが発表されました。

・Quantum Computing Inc (QUBT):第1四半期の売上高が前年同期の39,000ドルから369万ドルへ急増し、アナリスト予想の310万ドルを上回ったことで株価が24%急騰しました。

・ZoomInfo Technologies (ZI):通期の調整後営業利益見通しを下方修正し、約600人の人員削減を行うリストラ計画を発表したことで、株価が36%暴落しました。

【小売・Eコマース】

・eBay Inc (EBAY):GameStopからの560億ドル規模の買収提案について、資金調達の不確実性や統合後のリスクを理由に「信頼性も魅力もない」として正式に拒否しました。株価は2.1%下落しました。

・GameStop Corp (GME):eBayへの買収提案が拒否されたことを受け、株価が4.6%下落しました。

・Wendy’s Co (WEN):Trian Fund Managementが同社の非公開化に向けて投資家の支持を集めているとの報道を受け、株価が23%急騰しました。

【ヘルスケア】

・Hims & Hers Health Inc (HIMS):第1四半期の売上高が予想を下回り、ブランド品のGLP-1減量薬への戦略転換によるコスト増で通期見通しを下方修正したため、株価が15%下落しました。

【エネルギー・ユーティリティ】

・Venture Global LNG:TotalEnergiesおよびVitol Groupとの5年間のLNG供給契約を発表し、ルイジアナ州のCP2プロジェクトの生産能力を1000万トン拡大する計画を明らかにしました。

・American Electric Power Co (AEP):AI技術による電力需要の急増に対応するため、26億ドル規模の株式売却を通じて資金調達を行うと発表しました。株価は時間外取引で2.5%下落しました。

・Petroleo Brasileiro SA (PBR):Elea Data Centersが、Petrobras向けの4億7000万ドル規模のデータセンター・プロジェクトの第1フェーズを完了させ、稼働を開始したと発表しました。

【金融】

・JPMorgan Chase & Co (JPM):Jamie Dimon CEOがパリの会議で、英国政府が銀行に対して敵対的な増税を行った場合、Canary Wharfに計画している最大12,000人を収容する新ロンドン本社の建設計画を見直すと警告しました。また、同行の資産運用部門は、イーサリアムのブロックチェーン上でデジタルトークンを発行する2つ目のトークン化MMF「JPMorgan OnChain Liquidity-Token Money Market Fund」の登録書類を米国証券取引委員会に提出しました。