株式市場動向
S&P 500は前日比0.6%上昇の43.29ポイント高の7,444.25、ナスダック総合指数は1.2%上昇の314.14ポイント高の26,402.34でそれぞれ過去最高値を更新して取引を終えました。ダウ工業株30種平均は0.1%下落ので67.36ポイント安の49,693.20となりました。4月の米卸売物価指数(PPI)が前月比1.4%上昇と4年ぶりの高い伸びを記録し、インフレ懸念と利回り上昇が先行したものの、押し目買いが入りテクノロジーおよびAI関連銘柄が相場を牽引しました。特にS&P 500は3月30日の底値から17%上昇し、この間の時価総額増加分9兆1900億ドルのうち62%を上位10社が占め、半導体セクター単独で43.8%の押し上げに貢献しています。好調な企業決算を受け、モルガン・スタンレーはS&P 500の年末目標を7,800から8,000に引き上げました。一方、欧州市場では、英FTSE 100が0.03%高、中小型株中心のFTSE 250が0.1%安と方向感に欠ける展開となりました。英国ではキア・スターマー首相の辞任を求める声が強まり、ウェス・ストリーティング保健相が辞任して党首選に挑む準備を進めているとの報道が投資家心理の重荷となりました。
為替・金利・コモディティ
【為替市場】
ブラジルレアルは対ドルで2.4%急落し、新興国通貨の下落を主導しました。ニュースサイトのThe Intercept Brasilが、10月の大統領選の右派候補であるフラビオ・ボルソナロ上院議員と、詐欺事件の渦中にあるBanco Master SAの元CEOダニエル・ボルカロ受刑者との間で、父親のジャイール・ボルソナロ前大統領の映画制作資金1億3400万レアルの支援を巡るメッセージのやり取りがあったと報じたことが背景にあります。インドルピーは今年に入り対ドルで6%下落して過去最安値を記録しており、外貨準備の保護と資金流出を防ぐため、インド政府は金と銀の輸入関税を2倍以上に引き上げました。トルコリラは4月に1.6%下落し、イスタンブール市場では1ドル=45.42リラで取引されました。イラン戦争開始後の最初の1週間でトルコ中央銀行が120億ドルを売却し、通貨防衛に動いた事実も明らかになっています。
【金利動向】
米10年国債利回りは4月のPPIデータ発表後に一時4.49%まで上昇し、その後4.469%付近で推移しました。250億ドル規模の米30年国債入札は最高落札利回り5.046%となり、2007年以来初めて投資家が5%の利回りを獲得しました。イラン戦争によるエネルギー価格の高騰がインフレを加速させるリスクに対する代償として、入札参加者がより高い固定金利を要求したことが要因です。英国市場では、30年物ギルト債利回りが1ベーシスポイント上昇して5.77%と約30年ぶりの高水準に達し、10年物利回りも5.10%となりました。原油高によるインフレ懸念に加え、スターマー政権の政治的混乱が長期債への投資を躊躇させています。日本市場でも、エネルギー価格の高騰がインフレ圧力を高め、20年物国債利回りが1997年以来の高水準を記録しました。
【コモディティ市場】
原油市場では、ブレント原油が1バレル107ドル近辺、WTI原油先物が102ドル未満で取引されました。中東情勢の緊張により、イラン戦争開始以来、世界の原油価格は約50%上昇しています。国際エネルギー機関(IEA)の月報では、2月末以降1日あたり1280万バレルの供給が失われ、今年の世界の原油市場は1日あたり180万バレル、年間で6億5700万バレルの供給不足に陥ると予測されています。貴金属市場では、AIインフラ建設に伴う実需を背景に銀と銅が連れ高となりました。また、カナダの非米国向け輸出データにおいて、2024年12月から2026年3月の間に金などの貴金属の輸出が70%急増したことが確認されました。コバルト市場では、米EVelution Energy LLCがTrafigura Groupおよびコンゴ民主共和国の国営企業EGCとの間で、水酸化コバルトの長期供給に関する覚書に署名しました。EGCは2026年および2027年にそれぞれ5,640トンの輸出枠を割り当てられています。
マクロ環境・政策動向
【地政学リスク・外交】
ドナルド・トランプ米大統領が中国の習近平国家主席との首脳会談のため、北京に到着しました。代表団にはマルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグセス国防長官、スコット・ベッセント財務長官のほか、Appleのティム・クックCEOやTeslaのイーロン・マスクCEO、さらには土壇場でNvidiaのジェンスン・フアンCEOが加わりました。トランプ大統領は中国市場の開放を求めると同時に、イランの最大の原油顧客である中国に対し、ホルムズ海峡の封鎖解除に向けた圧力をかけるよう求める方針です。中東情勢に関しては、イラク産原油200万バレルを積んだ中国所有の大型タンカー「Yuan Hua Hu」がオマーン湾を航行し、米海軍のホルムズ海峡封鎖を試す動きを見せています。また、トランプ大統領のガザ平和委員会(Board of Peace for Gaza)のニコライ・ムラデノフ特使は、ハマスの武装解除を「交渉の余地のない要件」とする15項目の計画を準備しているとエルサレムで発表しました。北大西洋条約機構(NATO)は、7月7日〜8日にアンカラで開催される首脳会議に、バーレーン、クウェート、カタール、UAEの外相を招待する計画を進めています。
【金融政策】
米上院はケビン・ウォーシュを次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に賛成54、反対45の僅差で承認しました。ジェローム・パウエル現議長の任期が終了する金曜日に就任する予定ですが、トランプ大統領が即時の利下げを要求していることから、FRBの政治的独立性が試されることになります。ボストン連銀のスーザン・コリンズ総裁は、5年以上にわたる目標を上回るインフレが供給ショックを静観する忍耐力を奪っていると述べ、金利を「しばらくの間」据え置くことを支持しました。カナダ銀行は4月の政策決定会合の議事要旨を公表し、政策金利を2.25%に据え置いたこと、ならびに米国の貿易関税や中東での戦争による原油高など複数のシナリオを検討し、機敏な対応が必要になる可能性があることを確認しました。欧州中央銀行(ECB)のフィリップ・レーン主席エコノミストはロンドンでの講演で、エネルギー供給ショックが経済に与える影響を慎重に調査する必要があり、金融政策のスタンス決定は会合ごとのデータに依存した「判断」であると述べ、6月の利下げについて明言を避けました。ザンビアの中央銀行は、良好なトウモロコシの収穫予測を考慮し、政策金利を13.5%から13.25%へ引き下げる3連続の利下げを実施しました。
【制度・政策】
米政府は、最高裁判所が違法と判断した約1600億ドル規模の関税について、利息を上乗せして約33万人の輸入業者への返金手続きを開始しました。関税撤回に反発するトランプ大統領の主張とは裏腹に、企業への資金還流が事実として進んでいます。ベネズエラ政府は、推定1700億ドルに上るデフォルトした国債および国営石油会社(PDVSA)の債務再編プロセスを開始し、財務アドバイザーとしてCenterview Partnersを起用したと発表しました。欧州連合(EU)では、欧州委員会が中東紛争によるコスト高騰から農家を保護するため、肥料の備蓄やEU予算を動員して農業準備金を増額する戦略の草案を作成しました。スペインでは、エンジニアリング企業TSK Electronica y Electricidadが今年初の主要市場でのIPOを実施し、1億5000万ユーロを調達しました。ポーランドのアンジェイ・ドマンスキ財務相は、米国からの報復関税の脅威にもかかわらず、最大3%のデジタルサービス税を導入する法案の作業を継続すると明言しました。
個別銘柄動向
【テクノロジー・通信】
・Cisco Systems (CSCO):第3四半期の売上高が12%増の158億ドル、調整後1株当たり利益が1.06ドルとなりました。第4四半期の売上高予想を167億ドル〜169億ドルと発表したほか、急成長するAI市場に注力するため全従業員の5%未満にあたる4,000人未満の人員削減計画を公表し、株価は時間外取引で最大17%急騰しました。
・Alibaba Group Holding (BABA):第4四半期の売上高は3%増の2433億8000万人民元となり、アナリスト予想の2465億人民元を下回りました。AIイニシアチブへの大規模な投資が負担となり、新型コロナウイルスのパンデミック以来初となる営業赤字を計上し、米国預託証券(ADR)は時間外で3%下落しました。
・Cerebras Systems (CBRS):AIチップメーカーの同社は、米国でのIPO価格を1株あたり185ドルに設定する見通しです。これは事前に提示された150ドル〜160ドルの範囲を上回るもので、3000万株の発行により55億5000万ドルを調達し、完全希薄化後の企業価値は約490億ドルに達する見込みです。
・Microsoft (MSFT):マイクロソフトのエグゼクティブであるマイケル・ウェッターが裁判で証言し、同社がOpenAIとのパートナーシップにおいて、インフラ構築やコンピューティングのホスティング費用を含めて現在までに1000億ドル以上を支出した事実を明らかにしました。
・Nvidia (NVDA):ジェンスン・フアンCEOがトランプ大統領の中国訪問に土壇場で同行したことが好感され、株価は2.3%上昇しました。
・VNET Group:中国のバッテリー大手Contemporary Amperex Technology(CATL)に関連する事業体であるPJ Millennium LPのユニットが、既存株主からVNETのクラスA株式最大6億5000万株を1株1.4486ドル(総額最大9億4200万ドル)で取得し、最大38%の株式を握ることで合意しました。
【エネルギー・公益】
・Fervo Energy (FRVO):新規株式公開(IPO)価格27ドルに対し、取引初日に36.54ドルで引け、35%の急騰を記録しました。18億9000万ドルの資金調達に成功し、時価総額は104億ドルに達しました。
・Ford Motor (F):モルガン・スタンレーが、同社のエネルギー貯蔵ビジネス「Ford Energy」がハイパースケーラー(大規模データセンター事業者)との契約を獲得し、評価額が100億ドルに達する可能性があるとの強気なレポートを発表したことを受け、株価は13.2%高の13.57ドルで引け、2020年3月以来最大の単日上昇率を記録しました。
【金融・投資】
・Blue Owl Capital Corp (OBDC):第1四半期決算で純資産を3%減の72億ドルに引き下げたものの投資家の評価は厳しく、株価は報告された純資産価値(NAV)に対して78%のディスカウント水準で取引されています。
・IKB Deutsche Industriebank:米Lone Star Funds傘下の同ドイツ銀行は、破綻した英国の住宅ローン会社Market Financial Solutions(MFS)のネットワーク内にあるCredit Capital Corporationに対して実施した2900万ポンドのローンについて、評価損を計上する見込みであると明らかにしました。
【小売・消費財】
・Walmart (WMT):業務の重複を解消するため、1,000人のコーポレート部門の雇用を削減すると発表しました。株価は今年17%上昇してS&P 500のパフォーマンスを上回り、予想株価収益率(P/E)44倍の過去最高値水準で取引されています。
・Skechers USA (SKX):3G Capitalによる94億ドル規模の買収価格を不服としてヘッジファンドなどが起こした訴訟の解決に向け、和解案を1株あたり64ドルから65ドルへ引き上げました。