#44 5月18日(月) 米国時間レポート

株式市場動向

    米国の主要株価指数は、ダウ工業株30種平均が0.3%上昇した一方、S&P 500種指数は0.1%下落、ナスダック総合指数は0.5%下落と、高値圏での方向感が分かれる結果となりました。イランとの戦争長期化に伴う原油価格の高騰と、それに連動する米国債利回りの急上昇が株式市場のバリュエーションを圧迫しています。マクロ環境の逆風が吹く中、S&P 500構成企業の第1四半期の利益が28%増と2021年以来の高い伸びを記録したことが、市場の下支え要因として機能しました。

    セクター別では、資金調達コストの上昇とインフレの直撃を受けやすい小型株や消費者関連株が特に強い売り圧力に晒されています。利益を上げていない企業や負債依存度の高い企業が多い小型株指標のラッセル2000指数は、金利上昇への警戒感から2.4%急落し、11月以来の最大の下落率を記録しました。また、住宅関連株も住宅ローン金利の上昇懸念からPHLX住宅セクター指数が3.3%下落したほか、配当利回りが魅力の公益事業セクターも、安全資産である米国債の利回り上昇によって相対的な投資妙味が薄れ、売り対象となりました。

    為替・金利・コモディティ

      【為替市場】

      インドルピーは対ドルで最大0.4%下落して96.3925ルピーとなり、今年に入り6.7%の下落とアジア通貨の中で最悪のパフォーマンスを記録しています。このルピー安と外貨準備高の減少を防ぐため、インド政府は国有銀行などの金融機関に対し、燃料消費を削減する目的で海外出張を制限し、ビデオ会議や電気自動車(EV)の利用を義務付ける指示を出しました。英ポンドは、次期首相候補のアンディ・バーナム氏の陣営が財政規律を維持する方針を明言したことで市場の安心感が広がり、対ドルで0.7%上昇して1.3415ドルを付けました。

      【金利動向】

      米10年国債利回りは、中東紛争によるインフレ高止まりと利上げ観測を背景に、一時2025年2月以来の高水準となる4.631%まで急上昇し、その後4.59%付近で推移しました。米30年国債利回りも5.159%を超え、金融危機前以来の高水準に達しています。日本では高市首相がエネルギー補助金復活のための補正予算編成へ方針を転換したことで国債増発懸念が強まり、30年国債利回りが過去最高の4.200%、10年国債利回りが1996年10月以来の高水準となる2.800%まで急騰しました。これに対し、片山財務相は、中東情勢のリスクを最小化する観点から「市場動向を十分に考慮して資金調達を検討する」と発言し、市場の動揺を牽制しました。英国では、バーナム氏側がレイチェル・リーヴス財務相の財政ルールを変更しないと確約したことで、30年国債利回りが7ベーシスポイント低下の5.78%となりました。

      【コモディティ市場】

      原油市場では、米国とイランの紛争によるホルムズ海峡の事実上の封鎖が続き、ブレント原油先物が一時1バレル111ドルから112ドル台へと上昇しました。天然ガス市場では、米国中西部などで平年を上回る猛暑が予想され、冷房用発電需要の増加が見込まれたことから、Nymexの6月限先物が5.5セント(1.9%)上昇し、3月下旬以来初めて1百万Btu当たり3.015ドルを突破しました。農産物市場では、中国が2028年まで年間少なくとも170億ドルの米国産農産物を購入することに合意したとのホワイトハウスの発表を受け、大豆、トウモロコシ、小麦の先物価格が急伸しました。

      マクロ環境・政策動向

      【地政学リスク・外交】

      トランプ米大統領は、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)からの要請を受け、イランに対する大規模な軍事攻撃の計画を中止したと発表しました。これは、イランの核兵器保有を阻止するための真剣な外交交渉が進行中であるためとしています。しかしその直後、UAEのバラカ原子力発電所に向けてドローン攻撃が行われ、緊急用ディーゼル発電機が稼働する事態が発生しました(放射能への影響はなし)。米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、中東紛争による世界的なエネルギー供給不足と燃料価格の高騰を抑制するため、タンカーに積載済みのロシア産原油および石油製品の販売を許可する制裁免除措置(ウェーバー)を新たに発行する見通しです。欧州では、ドイツのメルツ首相の閣閣が、戦争や自然災害に備えた防空壕の増設や警告アプリの開発など、市民保護対策を強化するために100億ユーロを投資する法案を承認する方針を示しました。

      【金融政策】

      米連邦準備制度理事会(FRB)の第17代議長に承認されたウォーシュ氏が、金曜日にホワイトハウスでトランプ大統領による宣誓就任式に臨むことが発表されました。インフレ圧力が高まる中での就任となり、市場は同氏の政策スタンスと独立性に注視しています。チェコ国立銀行のミフル総裁は、エネルギー価格上昇の一次的な影響には反応しないものの、世界的なリスクや国内要因がコアインフレの基調を押し上げる危険があれば「金利引き上げを恐れない」と明言し、引き締めに対する強い意志を示しました。

      【制度・政策】

      米司法省とトランプ政権は、過去のバイデン政権下で「司法の武器化」によって不当な扱いを受けたと主張する人々を救済・補償するため、18億ドル規模の基金を創設すると発表しました。これと同時に、トランプ大統領自身がIRS(内国歳入庁)の税務情報漏洩を巡り提起していた100億ドルの損害賠償訴訟を取り下げる手続きを行いました。米証券取引委員会(SEC)は、ポール・アトキンス委員長の主導のもと、1972年から続く「ギャグ・ルール」を撤廃しました。これにより、企業や個人が不正行為を認めずに和解した場合でも、事後にSECの主張を公然と反論・批判することが可能になります。英国では、リーヴス財務相と財務省が、巨大銀行の小売り部門と投資銀行部門を分離する「リングフェンス規制」の緩和案を発表しました。銀行に対し、信用リスクのPillar 1リスク・アウェイト資産の最大10%に相当する成長枠(グロース・アローワンス)を付与することで、英国企業向けに最大800億ポンドの新規融資を解放する狙いがあります。

      個別銘柄動向

        【テクノロジー・半導体】

        ・Nvidia (NVDA): 水曜日の決算発表を控え、利益確定売りや金利上昇への警戒から株価は1.3%下落しました。Jensen Huang CEOはTrump大統領の訪中に同行し、将来的に中国市場が米国のAIチップに対して再び開かれるとの見通しをインタビューで述べました。

        ・Seagate Technology Holdings (STX): Dave Mosley CEOがJPMorganのカンファレンスにて、急増するAI向けメモリチップの需要に対し「新工場の建設は時間がかかりすぎる」と発言し、生産能力の拡大に消極的な姿勢を示したことで、株価が最大8.3%急落しました。

        ・Dell Technologies (DELL): Michael Dell CEOは、Nvidiaのチップを搭載したAIサーバー「AI Factory」の顧客企業数が過去四半期で1,000社増加し、累計5,000社に到達したと発表しました。Eli LillyやSamsung Electronicsなどが導入しています。

        ・Baidu (BIDU): 第1四半期の売上高がアナリスト予想の315億元を上回る321億元に達し、株価はプレマーケットで3%以上上昇しました。自動運転タクシー事業での一時的な足踏みはあったものの、クラウドおよびAI事業へのシフトが奏功しています。

        ・Akamai Technologies (AKAM): クラウド・インフラストラクチャー・サービスの設備投資やAnthropicとの18億ドルの計算資源提供契約に対応するため、2030年満期および2032年満期のゼロクーポン転換社債を発行し、合計26億ドルを調達すると発表しました。

        【公益事業・エネルギー】

        ・NextEra Energy (NEE): 同業のDominion Energy (D) を株式交換により約668億ドルで買収することに合意しました。Dominion株1株につき自社株0.8138株を割り当てます。この買収により、AIデータセンターが密集するバージニア州を含む広範な電力網を確保し、格付け機関が重視する規制対象事業の利益比率を現在の70%台から約80%へ引き上げます。Dominionの株価は13%急騰しました。

        【ヘルスケア・バイオ】

        ・Regeneron Pharmaceuticals (REGN): 進行性黒色腫(メラノーマ)患者を対象とした「fianlimab」と「cemiplimab」の併用療法の後期臨床試験において、無増悪生存期間を統計的に有意なレベルで改善できなかったと発表し、株価が12%下落しました。

        ・UnitedHealth Group (UNH): Berkshire Hathawayが第1四半期に同社の保有株式を全額売却したことが四半期開示で判明し、株価は下落を記録しました。

        【金融・投資】

        ・State Street (STT): 同社が運用するプライベート・クレジットETF(ティッカー: PRIV)に対し、テキサス州の公立学校向け基金(Texas Permanent School Fund)が第1四半期に約7億4,000万ドル(約2,900万株)の巨額投資を行っていたことが開示書類で判明しました。

        【金融・投資】

        Macy’s (M): Berkshire Hathawayが第1四半期に約5,500万ドル規模の同社株式を新規取得していたことが明らかになり、株価はプレマーケットで5%以上上昇しました。

        ・Delta Air Lines (DAL): 同じくBerkshire Hathawayが第1四半期に約26億ドル(3,980万株)の同社株式を取得したことが判明し、株価が2.5%上昇しました。Ed Bastian CEOは、現在の米政権下での国内M&Aには参加せず、国際路線の拡大に集中する方針を示しました。

        【その他企業】

        ・OpenAI: Elon Musk氏が「OpenAIとサム。アルトマン CEOが非営利の使命に背き、営利企業化した」として損害賠償などを求めていた訴訟で、カリフォルニア州の陪審は、マスク氏の提訴が法的な出訴期限を過ぎていたとして、OpenAI側の責任を否定する評決を全会一致で下しました。