#46 5月19日(火) 米国時間レポート

株式市場動向

    5月19日の米国株式市場は、中東情勢やインフレ懸念を背景にハイテク株を中心に売りが先行し、主要株価指数は下落しました。ダウ工業株30種平均は0.27%安の49,549.86ドル、S&P500種指数は0.4%安、ナスダック総合指数は0.85%下落しました。ホルムズ海峡の封鎖に伴う原油価格の高止まりと、それに伴う米国債利回りの急上昇が、株式のバリュエーション、とりわけ高い成長期待に依存するAI関連銘柄の重荷となりました。アジア市場においても、韓国のKOSPI指数が3.5%下落して7,249.73となり、日本の日経平均株価も0.6%安の60,433.79となるなど、世界的な債券利回り上昇の波波が市場全体を圧迫しました。その一方で、バンク・オブ・アメリカのグローバル・ファンド・マネージャー調査によると、5月の株式へのアロケーションは過去最大の増加幅を記録し、ネットで50%のオーバーウェイトに達したほか、現金比率は2024年2月以来の大幅な低下となる3.9%にまで落ち込んでおり、テクニカルな売りシグナルが点灯している事実が示されました。セクター別では、クラウドやソフトウェア関連株が反発の兆しを見せた一方で、これまで市場を牽引してきた半導体セクターは、Nvidiaの決算発表を前に一部で利益確定の売りやヘッジの動きが強まりました。

    為替・金利・コモディティ

      【為替市場】

      パリで開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議において、日本の片山さつき財務相はG7のカウンターパートから日本のスタンスに理解を得ていると述べ、必要に応じて為替市場に介入し「大胆な行動をとる」と断言しました。日本政府が4月末から実施したとされる為替介入以降、円は対ドルで158.82円近辺での推移となっており、当局による継続的な監視と投機的動きに対する強い牽制が示されました。また、インドネシアではルピアが対ドルで過去最安値を更新したことを受け、政府が石炭やパーム油などの一次産品輸出を管理する新機関の設立を計画しており、外貨流入の最大化を図る動きが確認されています。

      【金利動向】

      米国債市場では、インフレの再燃懸念から利回りが劇的に上昇しました。10年国債利回りは4.6%を再び超えて4.68%に達し、30年国債利回りは6ベーシスポイント上昇して2007年以来の最高水準である5.18%を記録しました。この利回り急上昇の背景には、午前中の取引時間中に5年債および10年債先物で約150億ドル相当のブロックトレードによる大規模な売りが集中した事実があります。英国では、次期首相候補とされるアンディ・バーナム氏が政府の借入制限(財政ルール)の維持を明言したことでギルト債利回りは一時的に下落したものの、依然として1998年以来の高水準にあります。日本の超長期国債利回りも、高市早苗首相が補正予算の編成に方針転換したことを受けて4.13%まで上昇しました。

      【コモディティ市場】

      原油市場では、ドナルド・トランプ米大統領が19日、イランに対する軍事攻撃計画を一時的に中止したと発表したことを受け、価格が下落しました。ブレント原油先物は1.8%下落の110.13ドル、WTI原油先物は103.50ドルを下回る水準で推移しました。米国のガソリン平均価格は1ガロンあたり4.53ドル、ディーゼルは5.65ドルへと上昇し、中東での紛争開始から50%以上の値上がりを記録しています。また、金価格は3.77%下落しました。銅市場については、チリの国営銅委員会が今年の生産量を2%減の530万トンに下方修正する一方、今年の平均価格予想を1ポンドあたり4.95ドルから5.55ドルへ引き上げ、供給逼迫であることが示されました。

      マクロ環境・政策動向

        【地政学リスク・外交】

        トランプ米大統領は、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)からの要請を受け、火曜日に予定していたイランへの攻撃を中止したと発表しました。しかし、数日内に合意に至らなければ、再び「大きな打撃」を与える可能性を警告しています。ホルムズ海峡の封鎖が続く中、NATOのアレクサス・グリンケウィッチ欧州連合軍最高司令官は、7月上旬までに海峡が再開されない場合、艦船の通過を支援する軍事任務を検討していることを確認しました。また、米財務省はアミン・エクスチェンジやシャドー・フリートに関与する19隻の船舶など、イランに関連する中国やUAEの50以上の企業・団体に制裁を科しました。一方で、米国はロシアの海上輸送原油に対する制裁の適用除外(ウェーバー)を3度目の延長として6月17日まで延長し、世界のエネルギー市場安定化を優先しました。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は中国の北京に到着し、習近平国家主席と会談して「シベリアの力2(Power of Siberia 2)」ガスパイプライン計画を含む約40の文書に署名する予定です。

        【金融政策】

        ニューヨーク連銀のロベルト・ペルリ氏はアトランタ連銀の会議において、月額100億ドルに減額された財務省短期証券(Tビル)の購入について、あらかじめ決定された軌道にはなく、市場の状況や準備金の供給予測に応じて購入ペースを上下に調整する用意があると説明しました。欧州中央銀行(ECB)のヨアヒム・ナーゲル理事は、エネルギー供給ショックが長引いていることからインフレ圧力が広がる確率が高まっており、6月の政策理事会で「何らかの対応」を迫られる可能性を示唆しました。日本銀行の植田和男総裁は、企業によるコスト転嫁のペースがやや速いと指摘し、インフレの上振れリスクを注視しながら安定的なインフレ確保に向けた金融政策を継続する姿勢を強調しました。

        【制度・政策】

        米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長は、「Make IPOs Great Again」の一環として、新規株式公開(IPO)を促進するための情報開示基準の緩和案を発表しました。浮動株基準を7億ドルから20億ドルに引き上げ、新規上場企業が「大規模な前倒し提出会社(large accelerated filers)」として求められる厳格な情報開示や監査人の証明義務を最長5年間免除する内容です。欧州では、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率が29%に急増する中、連立パートナーである社会民主党(SPD)の議員会合に出席し、中道派の結束と政策推進を呼びかけました。

        個別銘柄動向

          【テクノロジー・半導体】

          ・Nvidia (NVDA):第1四半期決算の発表を控え、株価は0.77%〜1.33%下落しました。オプション市場のデータでは、決算後に上下約6.5%の変動が織り込まれており、市場の強い関心が示されています。

          ・Alphabet (GOOGL):Blackstone (BX)と共同で50億ドルの自己資本を投じ、2027年までに500メガワットの容量を持つAIクラウド事業を新たに設立することで合意しました。また、Google I/O開発者会議において、新AIモデル「Gemini 3.5 Flash」や、動画生成ツール「Omni」、SamsungおよびWarby Parkerと共同開発したスマートグラスの設計を発表しました。

          ・Apple (AAPL):ハードウェア責任者のジョニー・スルージ氏が、将来のデバイス開発のスピードアップと自社製シリコンチームの統合を目的に、製品設計の管理をケイト・バージェロン氏からシェリー・ゴールドバーグ氏とデイブ・パクラ氏に移行する組織再編を実施しました。

          ・Seagate Technology (STX):CEOが新しい容量の追加に時間がかかりすぎていると発言したことを受け、株価は1.6%下落しました。

          ・Cisco Systems (CSCO):CFOのマーク・パターソン氏が、ハイパースケーラー向けのハードウェア機器供給への移行が粗利益率の「逆風」になると警告し、株価は一時3.4%下落して114.79ドルとなりました。

          【金融】

          ・Standard Chartered (STAN):AIや自動化の導入により、2028年までにバックオフィスを中心に全従業員の約15%である7,800人の人員を削減する計画を発表しました。ビル・ウィンターズCEOはこれを「低価値の人的資本」を金融資本に置き換えるものだと説明しています。第1四半期の税引前利益はアナリスト予想を上回る24億5,000万ドルを記録しました。

          ・Blackstone (BX):Alphabetと共同でAIクラウド企業を立ち上げるため、自社ファンドを通じて初期に50億ドルを出資し、同事業の過半数所有者となることを発表しました。

          ・IG Group (IGG):市場のボラティリティ上昇により第1四半期のオーガニック収益が19%増の3億3,120万ポンドとなり、年間収益予測を上方修正しました。株価は9.8%上昇しました。

          【小売・コンシューマー】

          ・Home Depot (HD):第1四半期の既存店売上高は0.6%増となり、アナリスト予想の0.9%増には届きませんでしたが、売上高は418億ドル、調整後EPSは3.43ドルと予想を上回りました。2026年通期の業績見通しを据え置きました。

          ・Target (TGT):年初から株価が26%急騰しています。第1四半期の来店客数は前年同期比で5.1%増加し、1年ぶりにプラス成長を記録した事実が報告されました。

          【エネルギー・公益事業】

          ・NextEra Energy (NEE):同業のDominion Energyを670億ドル(負債を含めると1,200億ドル以上)で買収することで合意しました。この買収により米国最大の公益事業会社となり、AIデータセンターの急激な電力需要に対応するインフラを獲得します。買収に伴い、バージニア州などの顧客に2年間で22億5,000万ドル(1人当たり約550ドル)の請求額クレジットを提供すると発表しました。

          ・Ecolab (ECL):AIデータセンター向けの冷却技術を開発するCoolIT Systemsを47億5,000万ドルで買収するための資金調達として、5つのトランシェからなる社債発行を開始しました。

          【航空宇宙】

          ・Space X (未上場):IPOに向けた準備を進めており、株式を1対5に分割したと報じられました。企業価値は最大2兆ドルと評価されており、NASDAQへの上場が計画されています。