株式市場動向
2026年5月21日の米国株式市場は、AI関連の成長期待と、エネルギー価格高騰に伴う消費者の圧迫という二極化の様相を呈しました。ダウ工業株30種平均は276ドル(0.6%)上昇して50,285ドル近辺で取引を終え、2月10日以来となる過去最高値を更新しました。S&P500種株価指数は約0.2%高の7,445、ナスダック総合指数は0.1%未満の上昇となる26,293で引けました。S&P500は3月下旬の底値から17%上昇しています。市場を牽引したのはテクノロジー株でしたが、一方でウォルマートなどの小売企業がガソリン価格上昇による低所得者層の消費減退を報告し、消費者心理の冷え込みが浮き彫りとなりました。また、米国とイランの停戦合意が近いとの報道が原油価格を押し下げたことも、株式市場の支援材料となりました。
日本の株式市場では、日経平均株価が6営業日ぶりに大幅反発しました。終値は前日比1,879円73銭高の61,684円14銭となり、一時は上げ幅が2,200円を超え、62,000円台を回復する場面も見られました。TOPIXやJPX日経インデックス400、東証グロース市場250指数も揃って上昇しています。東証プライム市場の売買代金は約10兆5,928億円に膨らみ、値上がり銘柄数は全体の約64%を占めました。米国での半導体株高や、大型IPOに関する報道を背景に、AIや半導体関連銘柄を中心に幅広い銘柄で買いが優勢となりました。アジア市場では、エヌビディアの好決算やサムスン電子のストライキ回避を好感し、韓国のKOSPI指数が8.4%、台湾の加権指数が3.4%それぞれ急騰しました。
欧州市場では、英FTSE100指数が0.43%下落しました。これは英国の企業活動が過去1年で最大の落ち込みを示したことや、中東情勢への懸念が重しとなったためです。トルコ市場では、野党・共和人民党(CHP)のオズギュル・オゼル党首の選出を無効とする裁判所判決を受け、ボルサ・イスタンブール100指数が6.1%急落し、市場全体でサーキットブレーカーが発動されました。
為替・金利・コモディティ
【為替市場】
ホルムズ海峡の封鎖に伴う原油価格の高騰を受け、アジアの原油輸入国の通貨が軒並み過去最安値圏まで下落しました。ドル円相場は1ドル158円台後半から159円近辺での小幅な値動きとなりました。インドネシア・ルピアが1ドル17,700ルピアまで下落したため、インドネシア中央銀行は通貨防衛として50ベーシスポイントのサプライズ利上げを実施しました。インドルピーも1ドル=97ルピアに迫り、インド準備銀行は金利引き上げや通貨スワップを含むあらゆる選択肢を検討していることが明らかになりました。フィリピン・ペソも1ドル=62ペソ付近まで下落しています。トルコでは、野党党首の失職判決直後にトルコリラが急落し、国営銀行が通貨防衛のために約60億ドル規模のドル売り介入を実施しました。これにより、リラは1ドル=45.6133リラ付近で横ばいを維持しました。
【金利動向】
米国の10年国債利回りは、一時は2025年1月以来の最高水準となる4.68%を超えましたが、米国とイランの停戦交渉進展の報道で原油価格が下落したことを受け、4.55%付近まで低下しました。2年国債利回りは4.1%に上昇し、30年国債利回りは5.141%を記録しました。この利回り上昇を背景に、米国の30年固定住宅ローン平均金利は前週の6.36%から6.51%へ跳ね上がり、昨年8月以来の高水準を記録しました。欧州では、英国の10年国債利回りが5.04%を超え、30年国債利回りは1998年以来の高水準に達しました。これはアンディ・バーナム大マンチェスター市長の財政規律に関する発言が債券市場の警戒を招いたことが要因です。日本でも10年国債利回りが2.78%、20年国債利回りが1996年以来の高水準となるなど、世界的な金利上昇が進行しました。イングランド銀行(BOE)のアラン・テイラー委員は、英国の景気後退リスクが40%に高まっていると指摘し、現在の3.75%の金利水準を維持することで十分な引き締め効果があるとの見解を示しました。
【コモディティ市場】
原油価格はイランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師が濃縮ウランの国外搬出を拒否する見解を示したとの報道で一時急騰し、ブレント原油は1バレル108.50ドル、WTI原油は102ドルを超えました。しかしその後、パキスタンの仲介で米国とイランが停戦合意に達するとの報道が流れ、ブレント原油は102.30ドルまで、WTI原油は96ドルを下回る水準まで急反落しました。中国の製油所は原油高を避けるため生産量を約20%(日量840万バレル)削減し、在庫の取り崩しを行っています。米国は記録的な規模で戦略石油備備蓄の放出と輸出を拡大しており、5月前半の原油・燃料輸出量は日量1,300万バレルに達しました。農産物市場では、インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領がパーム油などの輸出を国富ファンド「ダナンタラ」の下で一元管理する計画を発表したことで市場が混乱し、ドゥマイ港の粗製パーム油価格が1キログラムあたり11,777ルピアへと23%急落し、その後約8,000ルピアまで落ち込みました。
マクロ環境・政策動向
【地政学リスク・外交】
米国とイランの紛争は、パキスタンの仲介による停戦合意の観測が浮上しています。合意案にはホルムズ海峡の航行の自由やイランに対する経済制裁の段階的解除が含まれるとされています。一方で、駐仏イラン大使のモハマド・アミンネジャド氏は、イランとオマーンがホルムズ海峡を通航する船舶から恒久的に通行料を徴収するシステムの構築を協議していることを明らかにしました。これに対し、バーレーン、クウェート、カタール、サウジアラビア、UAEの湾岸5カ国は、国際海事機関(IMO)を通じてイランの通行料徴収を公式に拒否する書簡を送付しました。また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、6万4,000人の部隊を動員した合同核演習をビデオリンクで視察しました。これに対し、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国は、ウクライナのドローンがロシア攻撃のために自国領空の通過を許可したとするロシア側の主張を「偽情報キャンペーン」として公式に非難しました。
【金融政策】
リッチモンド連銀のトーマス・バーキン総裁は、イラン紛争などによる相次ぐ供給ショックが、インフレを「やり過ごす」という連邦準備制度理事会(FRB)の能力を試していると述べました。同総裁は、米国が地政学的緊張や貿易の分断によって供給ショックが頻発する新時代に突入したとの懸念を表明しました。メキシコ中央銀行(Banxico)は議事要旨を公表し、第1四半期の経済収縮が予想以上に大きかったことを明らかにしました。同中銀は5月7日に政策金利を6.50%へ引き下げましたが、過半数の理事が金融緩和サイクルの終了を宣言し、現在の金利水準を維持することが適切であると強調しました。
【制度・政策】
トランプ米政権は、中国のテクノロジー覇権に対抗するため、量子コンピューティング企業9社に対し総額20億ドルの助成金を拠出し、見返りとしてマイノリティ出資の株式を取得する計画を明らかにしました。また、AIモデルの一般公開前に国家サイバー長官室によるセキュリティ評価を義務付ける大統領令の署名が予定されていましたが、直前で延期されました。欧州では、欧州委員会(EC)の予測により、ユーロ圏の今年の成長率が0.9%へ鈍化し、インフレ率が3%へ上昇することが示されました。特にドイツの成長率予測は0.6%へ半減し、フリードリヒ・メルツ首相にとって打撃となりました。英国では、レイチェル・リーブス財務相が生活費高騰への対策として、6月25日から9月1日まで遊園地や動物園などの夏期アトラクションの付加価値税(VAT)を20%から5%へ引き下げることを発表しました。この財源は、海外で事業を行う石油・ガス企業の非課税ループホールを塞ぐことで確保されます。米国陸軍工兵隊は、ノースダコタ州のオアヘ湖を横断するダコタ・アクセス・パイプラインの地役権を最終承認し、漏洩検知の強化を条件に長期にわたる環境審査を終了させました。
米国個別銘柄動向
【テクノロジー・通信】
・Nvidia (NVDA):第1四半期決算で売上高が前年同期比85%増の816億ドル、純利益が583億ドルとなったことを発表しました。7月期の売上高見通しを910億ドルとし、800億ドルの自社株買いと1株あたり1セントから25セントへの配当引き上げを明らかにしました。競争激化への懸念から時間外取引で株価は一時1.6%下落しました。
・Space Exploration Technologies (SPCX):史上最大規模となる最大750億ドルの資金調達を目指し、評価額2兆ドルでのIPOを申請しました。目論見書によると、2025年の売上高は187億ドルでしたが、xAIなどの投資が重荷となり純損失は494億ドルでした。同社は銀行団から実効金利4.58%で200億ドルのつなぎ融資を確保し、XおよびxAIの最大12.5%のジャンク債175億ドルを借り換え、年間約10億ドルの支払利息を削減しました。
・Anthropic PBC:今四半期に48億ドルの売上高に対し5億5,900万ドルの初の営業黒字を計上する見通しであることが判明しました。また、コンサルティング会社Fractional AIを買収し、SpaceXに対して今後3年間で450億ドル(月額12億5,000万ドル)のコンピューティングリソース利用料を支払う契約を結びました。
・International Business Machines (IBM):米政府から10億ドルの資金提供を受け、新たに「Anderon」という独立企業を設立し、量子コンピューティングチップの専門ファウンドリを構築することが報じられました。株価は時間外および日中取引で12.4%上昇しました。
・GlobalFoundries (GFS):米政府から量子コンピューティング開発のための3億7,500万ドルの資金提供を受けることが報じられ、株価は一時15%急騰して過去最高値を更新しました。
・Microsoft (MSFT):Xbox部門の立て直しのため、ゲーム業界のアナリストであるマシュー・ボール氏を最高戦略責任者(CSO)に任命しました。また、コンサルティング会社EYと提携し、顧客のAI導入促進のために10億ドルを投資することを発表しました。
・Zoom Video Communications (ZM):第1四半期の売上高が前年同期比5.5%増の12億4,000万ドルとなり、AI搭載機能の普及により2027年1月期の通期売上高見通しを最大50億9,000万ドルへ引き上げました。時間外取引で株価は約4%上昇しました。
・Spotify Technology (SPOT):投資家向け説明会で、Live Nation Entertainmentと提携し、加入者向けにコンサートチケットの先行販売オプションを提供することを発表しました。また、AI生成の「Personal Podcasts」機能を導入し、長期的な目標として10億人の加入者と20%以上の営業利益率を掲げました。株価は11%急騰しました。
・Take-Two Interactive Software (TTWO):大作ゲーム「Grand Theft Auto VI」の発売日を2026年11月19日と公式に確認しました。通期の予約売上高見通しを80億ドルから82億ドルと発表し、時間外取引で株価が7%以上上昇しました。
【小売り・消費財】
・Walmart (WMT):第1四半期の米国既存店売上高が4.1%増、総売上高が1,778億ドルとなり、Eコマース売上も26%増加したと発表しました。しかし、第2四半期の調整後EPS見通しを0.72~0.74ドルとし、アナリスト予想を下回ったことや、ガソリン価格上昇による消費者への圧迫を警告したため、株価は約7%下落しました。
・Birkenstock Holding (BIRK):株価の最近の下落を受け、2億5,000万ドルの自社株買いを加速的に実施すると発表しました。通期の売上高成長率見通し(13%〜15%)は据え置かれ、株価は17%近く急騰して38.66ドルを付けました。
【資本財・素材】
・Deere & Co (DE):第2四半期の純利益が17億7,000万ドル(1株あたり6.55ドル)であったと発表し、通期の純利益見通しを45億ドルから50億ドルに据え置きました。農業市場の低迷が重しとなり、株価は7.5%下落しました。
・Perpetua Resources (PPTA):アイダホ州のStibnite金・アンチモンプロジェクトのために、米国輸出入銀行(EXIM)から29億ドルの融資を確保したと発表しました。中国の供給網依存から脱却する米国政府の戦略の一環であり、株価は12%以上上昇しました。
・Parker-Hannifin (PH):KKR傘下のCircorの航空宇宙・防衛部門を25億ドル以上で買収する契約で合意に達したことが報じられました。
・Airbus (AIR) / Air France-KLM (AF):パリ控訴院は、2009年のエールフランス447便墜落事故において両社に過失致死の有罪判決を下し、それぞれに法定最高額である22万5,000ユーロの罰金の支払いを命じました。
【金融・サービス】
・Intuit (INTU):税務申告ソフト「TurboTax」の通期売上高見通しを下方修正し、全従業員の17%にあたる約3,000人を削減する再編計画を発表しました。株価は14%急落しました。
・Samsung Electronics (005930):労働組合との間で、営業利益の10.5%を特別ボーナスとして(主に株式で)支給する暫定合意に達し、予定されていたストライキを回避しました。メモリ半導体部門の従業員には最大6億2,600万ウォン(41万6,000ドル)のボーナスが支給される見込みであり、株価は8.5%急騰し過去最高値を更新しました。
日本個別株式
【半導体・AI関連】
・ソフトバンクグループ(9984):出資先であるOpenAIのIPO申請報道を好感し、株価はストップ高水準まで急騰しました。
・キオクシアホールディングス(285A):決算発表を機に株価が急上昇し、上場来高値を更新しました。時価総額は30兆円を突破しています。
・アドバンテスト(6857):顧客であるNVIDIAの好決算を受け、株価が大幅に上昇しました。
・東京エレクトロン(8035):米国半導体株の上昇を背景に、株価が買われました。
・イビデン(4062):半導体関連株への資金流入を受け、株価が急伸しました。
・フジクラ(5803):今期の業績見通しが保守的と受け止められ直近は下落していましたが、本日は反発しました。
【金融・保険】
・楽天グループ(4755):10月に金融事業を再編し、楽天銀行の傘下に主要な金融子会社を集約すると発表しました。
・楽天銀行(5838):金融事業再編に伴い、親会社等への種類株割り当てによる将来的な株式希薄化が懸念され、株価はストップ安水準まで急落しました。
・東京海上ホールディングス(8766):今期の純利益が56%増の8300億円になる見通しと発表しました。配当の増額と、発行済み株式の6.9%に当たる2000億円上限の自社株買いも公表しています。
・SOMPOホールディングス(8630):今期の純利益は23%減の4900億円となる見通しを発表しました。増配と自社株買いを発表したものの、株価は大幅に下落しました。
・MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725):今期は減益見通しとなる一方で、増配および発行済み株式の6.5%に当たる1900億円を上限とする自社株買いを発表しました。
・クレディセゾン(8253):前期の事業利益が過去最高を更新しました。インドやブラジルなどでのグローバル事業が収益に貢献しています。
【小売・サービス・その他】
・極楽湯ホールディングス(2340):前期の純利益が過去最高を更新し、7年ぶりの復配を発表しました。
・ブロードリーフ(3673):株式分割と実質的な配当引き上げを発表し、株価が上昇して上場来高値を更新しました。
・リンテック(7966):最先端半導体の製造に使用される防塵膜(ペリクル)の量産を年内に開始すると報じられ、株価が上昇しました。
・NIPPON EXPRESSホールディングス(9147):米投資ファンドのエリオット・マネジメントによる同社株の保有比率が6%超に上昇したことが判明しました。
・SGホールディングス(9143):自己資本比率の最適化に向けた方針を示し、株価が上昇しました。
・エアトリ(6191):純利益見通しを上方修正し、発行済み株式の11%に相当する17億円を上限とする自社株買いを発表しました。
・スカパーJSATホールディングス(9412):宇宙関連事業の成長期待から買いが集まりました。
・ジャルコホールディングス(6625):前期決算は好調でしたが、今期が減収減益予想となったことで株価が急落しました。
・セキュア(4264):無人店舗向けシステムや監視カメラ事業の展開が注目されています。
・アップガレージグループ(7134):中古タイヤなどのリユース事業が好調で、株価が上場来高値を更新しました。
・AeroEdge(7409):航空機体部品の加工を手掛ける企業を完全子会社化すると発表し、株価が上昇しました。
・データセクション(3905):AI関連の事業展開が好感され、株価がストップ高となりました。
・インティメート・マージャー(7072):イスラエル企業とのデータ連携開始を発表し、株価が上昇しました。
・ニデック(6594):内部管理体制の見直しを進めているほか、事業の選択と集中によるポートフォリオ再編に取り組んでいます。