#50 5月22日(金) 相場レポート

1. 株式市場動向

米国の株式市場は、AI関連の投資熱や堅調な企業業績を背景に、S&P500種株価指数が2023年以来となる8週連続の上昇に向けた動きを見せています。S&P500構成企業の8割以上が市場予想を上回る決算を発表しており、2021年以来となる力強い利益成長を記録しています。上昇を牽引しているのは主に大手テクノロジー企業ですが、エネルギーや素材セクターなどにも業績の力強さが広がっています。一方で、AI関連銘柄を除外した均等ウェート版のS&P500は、中東での紛争勃発以降ほぼ横ばいで推移しており、一部の銘柄に上昇が集中している状況が確認されています。

また、中東情勢を受けた原油高やインフレ懸念、それに伴う長期金利の急上昇への警戒感から、米国および世界の株式ファンドからは利益確定売りによる資金流出も記録されています。さらに、最大2兆ドルの評価額が見込まれるSpaceXの新規株式公開(IPO)に向けた動きが活発化しており、宇宙関連ETFや関連銘柄が急騰している半面、過去のバブル期のような市場集中のリスクを高めるとの指摘も市場内で聞かれています。

欧州の株式市場では、英国のFTSE100指数が4週連続の下落から反発する動きを見せました。これは、英国内のインフレ鈍化や小売売上高の低下を示す経済指標が発表され、イングランド銀行(英中央銀行)による早期の利上げ観測が後退したことが背景にあります。

日本市場では、日経平均株価は大幅に続伸しました。一時1,700円を超える上昇を見せ、63,000円台を回復するとともに、5月13日に記録した過去最高値(63,272円)を上回る推移となりました。相場を牽引したのは主にAI・半導体関連銘柄であり、特定の主力株への資金集中が目立ちました。一方で、プライム市場全体では値下がり銘柄数も半数近くを占め、内需やディフェンシブセクター、不動産関連などが軟調な動きとなるなど、セクター間の選別が明確に表れています。

2. 為替・金利・コモディティ

【為替市場】

カナダドルは下落圧力を受けています。国内のインフレ率が予想を下回る伸びにとどまったことで、カナダ銀行(中央銀行)による利上げの正当性が薄れ、市場では年末に向けたさらなる通貨安が見込まれています。インドルピーも中東危機と原油価格の高騰による影響を強く受けており、インド準備銀行(中央銀行)は通貨防衛のための介入策を検討している状況です。また、アルゼンチンでは政府の資本規制によって国内にドル資金が滞留しており、現地法人のドル建て社債や政府の短期ドル建て債が米国債の利回りを下回る水準で取引されるという異例の価格歪みが発生しています。

【金利動向】

米国債市場では、イランでの紛争長期化による原油高とインフレ再燃の懸念から売りが優勢となり、10年債利回りは2025年1月以来、30年債利回りは2007年以来の高水準となる5.2%付近まで一時急上昇しました。その後は若干の落ち着きを取り戻しています。英国の国債(ギルト債)市場でも、次期首相候補の動向などの政治的要因が意識されて利回りが上昇していましたが、予想を下回るインフレ指標の発表や財政ルールの維持表明などを受けて、30年債利回りは急低下しました。

【コモディティ市場】

原油価格は、米国とイランの停戦交渉の難航やホルムズ海峡の通航制限を背景に高止まりしています。指標となるブレント原油は1バレル105ドルから106ドル近辺、WTI原油は98ドルから99ドル近辺で推移しており、米国の小売ガソリン価格も1ガロンあたり4.50ドルを超える水準に達しています。一方、銅価格は記録的な高値圏で推移しています。これは、AIデータセンターの電力網拡充に伴う膨大なインフラ需要の増加が見込まれていることや、インフレヘッジとしての資金流入が重なっているためです。

3. マクロ環境・政策動向

【地政学リスク・外交】

米国とイランの停戦交渉は、パキスタンの仲介でわずかな進展が見られたと米国務長官が言及したものの、イランのウラン濃縮プログラムの扱いやホルムズ海峡での恒久的な通行料徴収を巡る対立が続いています。アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、カタールなどの湾岸諸国は、戦闘の再開が地域経済に壊滅的な打撃を与えるとして、米国のトランプ政権に対し軍事行動の再開を控えるよう働きかけています。一方、ウクライナはロシア中部のヤロスラヴリ製油所をドローンで攻撃し、ロシアのエネルギーインフラへの打撃を続けています。また、エストニアをはじめとするバルト諸国は、ロシアが意図的にウクライナのドローンをNATO領空に誘導していると非難しています。

【金融政策】

米国では、ケビン・ウォーシュ氏がホワイトハウスでトランプ大統領によって第17代連邦準備制度理事会(FRB)議長に正式に就任しました。中東情勢によるエネルギー価格の高騰を受け、エコノミスト陣は米国のインフレ予測を上方修正しており、次回の利下げ時期の予想を12月に後ずれさせています。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、エネルギー危機がインフレを押し上げているものの、長期的なインフレ期待は目標水準に留まっていると述べています。一方、メキシコ中央銀行は政策金利を6.50%に引き下げ、2年にわたる金融緩和サイクルの終了を宣言しました。

【制度・政策】

米国のトランプ政権は、永住権(グリーンカード)を申請する外国人に対し、例外を除き一時帰国して手続きを行うことを義務付ける新方針を発表しました。これにより、多くの申請者や雇用主である企業に影響が及ぶと見られています。また、米商務省はCHIPS法に基づき、国内の量子コンピューティング産業の育成に向け、複数企業に総額20億ドルの資金提供と株式の取得を行う方針を決定しました。欧州では、エネルギーコスト上昇の対策としてイタリア政府が求めている財政ルールの緩和要請について、EUが検討を進めています。新興国では、インドネシアの大統領が石炭やパーム油などの戦略的資源の輸出を新設の国家機関で直接管理する方針を打ち出し、市場の警戒を呼んでいます。南アフリカは、電気自動車(EV)用バッテリーの現地生産を促すための優遇措置の改定案を発表し、ボリビアでは反政府デモの道路封鎖により深刻な食料・燃料不足が発生しています。

4. 米国個別銘柄動向

【金融】

・JPMorgan Chase (JPM): M&Aや資金調達の活発化、およびトランプ政権下での規制緩和を背景に、富裕層向け取引やトレーディング収益が記録的な高水準に達しています。

・Citigroup (C): 金融業界全体の取引増加や規制緩和の恩恵を受け、好調な事業環境下で推移しています。

・Goldman Sachs (GS): 巨額の資金調達が見込まれるSpaceXの新規株式公開(IPO)において、主幹事の座を獲得しました。

・Citizens Financial Group (CFG): 企業買収の活況を捉えるため、専門企業の買収や富裕層向けアドバイザーの採用を急速に進めています。

【テクノロジー・通信】

・Nvidia (NVDA): 市場予想を上回る決算と強気な見通しを発表し、AI向けハードウェアの領域をGPU以外にも拡大させています。直近の市場では利益確定売りに押される場面もありました。

・Salesforce (CRM): 主力AIツール「Agentforce」のマーケティングと実際の導入機能との間にギャップがあるとの懸念から、株価は年初から約30%下落しています。

・IBM (IBM): 米商務省から量子チップ製造ファウンドリー建設に向けて10億ドルの助成金を獲得したとの発表を受け、株価が11%以上急騰しました。

・Qualcomm (QCOM): 半導体セクターの広範な反発を主導し、株価が12%以上急伸しました。

・Advanced Micro Devices (AMD): 半導体関連株の反発局面において、時価総額を約1000億ドル増加させました。

・Intel (INTC): 半導体銘柄の買い戻しにより、時価総額を500億ドル以上回復させています。

・Broadcom (AVGO): 半導体セクター全体が上昇する中で、例外的に株価が下落して推移しました。

・Workday (WDAY): 第1四半期の売上高および利益が市場予想を上回ったことを受け、株価が上昇しました。

・Zoom Video Communications (ZM): 通期の売上高および利益見通しを上方修正し、第1四半期決算も予想を上回ったことで株価が上昇しました。

【一般消費財・小売】

・Walmart (WMT): 第1四半期の売上高は好調だったものの、第2四半期および通期の利益見通しが市場予想を下回ったことから、株価は約7%下落し100日移動平均線を割り込みました。

・Ford Motor (F): データセンター向けなどのバッテリー蓄電事業「Ford Energy」の展開や欧州市場向けの新型車計画が好感され、株価は約3年ぶりの高値で引けました。

・Deckers Outdoor (DECK): 第4四半期の売上高が市場予想を上回ったことで株価が上昇しました。

・Estee Lauder (EL): スペインの香水会社Puigとの合併交渉が決裂したとの報道を受け、株価が10%上昇しました。

・Italian Sea Group (TISGR.MI): 負債関連の損失によって資本金が法定の最低基準を下回ったことを公表し、株価が37%以上急落しました。

【その他】

・Booz Allen Hamilton (BAH): 2027年の調整後EBITDA見通しが市場予想を上回ったことで、株価が上昇しました。

・Take-Two Interactive Software (TTWO): 第4四半期決算が予想を上回り、「Grand Theft Auto VI」の発売日を確定させたことで株価が上昇しました。

5. 日本個別銘柄動向

【IT・通信・半導体】

・ソフトバンクグループ(9984):出資先の米OpenAIのIPO観測や、傘下の英Armの株価上昇を背景に連日の急騰となり、年初来高値を更新しました。

・キオクシアホールディングス:上場来高値を更新し、時価総額が一時31兆円を超えました。1日の売買代金は個別銘柄で初となる3兆円超を記録しています。

・太陽誘電(6976):アナリスト向けミーティングでAIサーバー向けの小型大容量品の需要増が示され、株価は上場来高値を更新しました。 ・TDK(6762):株価が上昇し、上場来高値を更新しました。

【非鉄金属・電線・機械】

・三井金属(5706):中期経営計画の業績目標を上方修正し、ROE目標を14%から17%へ引き上げました。AI向けの特殊銅箔の需要拡大を見込んでおり、株価が上昇しました。

・住友電気工業(5802):ドイツの送電大手から風力発電プロジェクト向けの送電ケーブルを約3600億円で受注したと発表し、株価が急伸しました。

・フジクラ(5803):株価が反発し大幅上昇となりました。

・川崎重工業(7012):米NVIDIAと協業し、フィジカルAIの技術をロボット分野に活用すると報じられ、株価が大幅に上昇しました。

・トヨタ自動車(7203):台湾で日本向けの主力乗用車の生産を開始し、逆輸入すると報じられました。

【内需・金融・インフラ】

・大成建設(1801):株価が下落し、年初来安値を更新しました。

・東京電力ホールディングス(9501):株価が下落し、年初来安値を更新しました。

・近鉄グループホールディングス(9041):野村絢氏が株式の2.7%を取得したことが判明しました。