#57 6月3日 相場レポート

株式市場動向

米国株式市場は強力な上昇相場が一時休止し主要株価指数が下落しました。ダウ工業株30種平均は621ドル安の1.2パーセント安となりナスダック総合指数は0.9パーセント下落しS&P500種株価指数は0.7パーセント下落しました。S&P500種株価指数は9週連続の上昇記録が危ぶまれる状況に直面しています。市場の下落は中東における米国とイランの紛争が継続し原油価格が上昇したことや国債利回りが上昇したことがマクロ要因として重しとなりました。一方で投資家の押し目買い意欲は根強くバンガードグループが運用するS&P500種に連動する上場投資信託であるバンガードS&P500ETFの運用資産残高が上場投資信託として史上初めて1兆ドルを突破しました。同ファンドは2026年に入り690億ドル以上の資金を吸収しています。セクター別ではプライベートクレジット市場での資金流出懸念から金融セクターの代替資産運用会社の株価が急落しました。クリフウォーターが運用する310億ドル規模のプライベートクレジットファンドで17パーセントの解約請求が発生し引き出しを5パーセントに制限したことに加えスイスのパートナーズグループも86億ドルのファンドで解約を制限したことが売りを誘発しました。またオプション市場のアナリストは株価の相関性が記録的な低水準にありコールオプションのスキューが逆転していることから市場の脆弱性が高まっておりボラティリティの急変動が起きる危険性を警告しています。

為替・金利・コモディティ

【為替市場】

米ドルは今年に入り中東紛争による原油高や国債下落の中でもほとんど変動していません。モルガンスタンレーのデビッドアダムズ率いる為替ストラテジストチームはケビンウォルシュ連邦準備制度理事会新議長が初めて主導する6月の連邦公開市場委員会が低ボラティリティ環境とキャリートレードを覆す最大のイベントリスクになると指摘しました。特に2年物国債利回りへの感応度が高いユーロや日本円およびオーストラリアドルやニュージーランドドルが大きな影響を受ける危険性があります。

    【金利動向】

    米国債利回りは上昇し10年物国債利回りは4.500パーセントへ達し2年物国債利回りは4.095パーセントとなりました。CMEフェドウォッチツールによるとトレーダーは年内の50ベーシスポイントの利上げ確率を1か月前の0.2パーセントおよび前日の12.2パーセントから約15パーセントへと引き上げました。またスワップトレーダーは年末までに25ベーシスポイントの利上げが行われる確率を約75パーセントと織り込んでいます。ダラス連邦準備銀行のロリーローガン総裁はインフレ率が2パーセントではなく2パーセント台半ばに向かって推移しているとし物価安定を回復させるために年内に利上げが必要になる可能性が高まっていると発言しました。一方ニューヨーク連邦準備銀行のジョンウィリアムズ総裁は現在の金融政策は正確に適切な位置にあると述べ現時点での利上げや利下げの必要性を否定しました。

    【コモディティ市場】

    原油価格はイランによるクウェートやバーレーンへの攻撃および米国によるイランのケシュム島への攻撃報道を受けて上昇しました。国際指標であるブレント原油は1.9パーセント上昇し1バレル97.81ドルとなり米国WTI原油は1.4パーセント上昇し95ドルを上回って取引されました。米国エネルギー情報局のデータによると米国の戦略石油備蓄から先週新たに800万バレルが放出され在庫は3億5710万バレルに減少し1980年代初頭以来の最低水準に迫っています。ビトールグループのバーデルヌールディンは米国のガソリン在庫が季節的な標準を大きく下回っており夏の行楽シーズンを控えて次に供給不足に直面するのはガソリンになる可能性があると警告しました。またトランプ政権は銅製品に対する関税規則を修正し国内で製錬および鋳造された銅の含有率の基準を95パーセントから85パーセントに引き下げ米国産として優遇措置を受けやすくしました。

    マクロ環境・政策動向

    【地政学リスク・外交】

    米国とイランの紛争は激化しておりイランは休戦合意後最悪となる30発の飛翔体による攻撃をクウェートに対して実施しクウェート国際空港の第4ターミナルとアリアルサレム空軍基地に着弾しました。バーレーンもイランからのミサイル3発と複数のドローンを迎撃しました。米国とファイブアイズの諜報機関は中国の軍事情報機関がリンクトインなどのオンライン求人プラットフォームを利用して機密情報にアクセスできる政府や軍の職員を勧誘しているという異例の共同警告を発しました。ウクライナ情勢に関してドイツとフランスおよび英国の欧州3カ国はロシアのウラジミールプーチン大統領を交渉のテーブルに着かせるための計画をウクライナ政府と協議しています。トルコは7月7日から8日にかけて開催される北大西洋条約機構首脳会議に向けて首都アンカラにミサイル防衛システムを配備しF16戦闘機を厳戒態勢に置くなど要塞化を進めておりドナルドトランプ大統領も出席する予定です。

      【金融政策】

      連邦準備制度理事会が発表した地区連銀経済報告によると米国の経済活動は最近の数週間でわずかから緩やかなペースで拡大し雇用はほとんど変化がありませんでした。ほとんどの地区が中東紛争によるエネルギーコストの上昇を主な要因として前回報告時よりも高いインフレを報告しています。クリストファーウォラー理事は12の地区連銀に分散している人事や情報技術などのバックオフィス機能を一元化し合理化する計画を推進しており連邦準備制度内部で地方連銀の自主性が損なわれるとの懸念や内紛を引き起こしています。

      【制度・政策】

      トランプ政権は強制労働によって生産された商品の輸入を禁止する法律を制定または施行していないとして59カ国と欧州連合に対し10パーセントから12.5パーセントの新たな関税を課す計画を発表しました。またドナルドトランプ大統領は連邦政府の約8000の役職から雇用保障を剥奪し大統領の政策に反対するキャリア職員を自由に解雇できるようにする大統領令に署名しました。大統領はさらに住宅建設会社の後継者であるビルプルテを連邦住宅金融局長官およびファニーメイとフレディマックの会長に留めたまま国家情報長官代行に任命しました。これに対しマークワーナー上院議員ら民主党議員は経験不足と報復的な調査の経歴を理由に反発し外国情報監視法第702条の延長を阻止すると警告しています。司法省は最高裁判所が違法と判断した1660億ドルの関税の全額返還を命じたリチャードイートン裁判官の命令に対し返還プロセスの差し止めを求めて緊急控訴を行いました。

      個別銘柄動向

      【テクノロジー・通信】

        • Broadcom (AVGO):第2四半期の売上高は前年同期比48パーセント増の221億9000万ドルとなり調整後1株当たり利益は2.44ドルで市場予想を上回りました。AIチップの売上高は143パーセント増の108億ドルに達し第3四半期は200パーセント以上の成長を見込んでいますが第3四半期の全体売上高見通しが294億ドルにとどまったことで株価は時間外取引で4パーセントから6パーセント下落しました。
        • CrowdStrike Holdings (CRWD):第2四半期の売上高見通しを14億3000万ドルから14億4000万ドルと発表し調整後1株当たり利益見通しを1.16ドルから1.17ドルと市場予想に一致させましたが最近の株価上昇を維持するには不十分とみなされ株価は9パーセント以上急落しました。元Nvidiaのエンジニアであるバートリーリチャードソンを最高AIおよび自律システム責任者に任命しました。
        • Alphabet (GOOGL):AI投資の資金を調達するため株式の募集規模を当初の800億ドルから847億5000万ドルに拡大し史上最大の株式資金調達を実施しました。市場全体の下落に引っ張られ株価は0.8パーセント下落して取引を終えました。
        • Meta Platforms (META):ワッツアップやメッセンジャーおよびインスタグラムを通じて企業と顧客がチャットを行うメタビジネスエージェントへのアクセスを企業向けに初めて有料で販売開始しました。この新たな収益化の動きを受けて株価は3パーセントから3.75パーセント上昇しました。
        • Nvidia (NVDA):マイクロソフトと共同でウィンドウズPC上でインターネットに接続せずに大規模モデルを実行できるRTXスパークプロセッサを発表しました。
        • ASML Holding (ASML):株価が2.3パーセント上昇して時価総額が6740億ドルに達しノボノルディスクを抜いて欧州の上場企業として史上最大の時価総額を記録しました。
        • Palo Alto Networks (PANW):四半期決算は予想を上回りましたが非有機的な収益貢献の開示を今後中止するという経営陣の決定や決算前の株価上昇に伴う利益確定売りにより株価は4パーセント以上下落しました。
        • Adobe (ADBE):シャンタヌナラヤン最高経営責任者の後任として社内のデビッドワドワニとアニルチャクラヴァルティを候補とする一方でハイドリックアンドストラグルズを起用しAI製品の開発や収益化の経験を持つ外部候補者の探索も開始しました。
        • Anthropic:10月にも見込まれる新規株式公開を主導する金融機関としてモルガンスタンレーとゴールドマンサックスグループを選定しJPモルガンチェースも取引に参加することが明らかになりました。

        【金融】

        • Blue Owl Capital (OWL):プライベートクレジット業界における投資家の解約の波が警戒され株価は3パーセント以上下落しました。
        • KKR & Co (KKR):プライベートクレジットファンドの引き出し制限のニュースが波及し株価は4パーセント下落しました。
        • Blackstone (BX):代替資産運用会社全般への売り圧力が強まる中株価は3.7パーセントから5.19パーセント下落しました。
        • Bank of America (BAC):AIによる業務代替の懸念がある中でもジョシュブロンスタイン人事担当責任者が来週から2000人の夏季インターンと2000人の新卒フルタイム社員を採用すると発表しました。

        【航空・宇宙・防衛】

        • SpaceX:新規株式公開で史上最大となる750億ドルの調達を目指し株式5億5560万株の価格を135ドルに設定しました。この価格での評価額は1兆7700億ドルに達します。
        • Applied Aerospace & Defense (AADX):新規株式公開で上限価格に近い1株20ドルで3250万株を売却し6億5000万ドルを調達しました。ニューヨーク証券取引所での初日取引で株価は20.75ドルで寄り付き3.75パーセントから3.8パーセント上昇し時価総額は35億4000万ドルとなりました。

        【その他】

        • Walmart (WMT):ジョンファーナー最高経営責任者が年次株主総会でイラン戦争による原油価格高騰を背景としたガソリン価格の上昇が米国の消費者に圧力をかけていると指摘しました。
        • Macy’s (M):第1四半期の既存店売上高が3パーセント増となり傘下のブルーミングデールズが10.2パーセント増と好調を牽引しました。2026年の業績見通しを上方修正しています。
        • Inotiv:4億8870万ドルの債務を抱えて破産を申請しました。米国での犬の繁殖施設に対する規制強化や中国産の非ヒト霊長類に対する関税の影響を理由に挙げており株価は61パーセント急落して10セントとなりました。