#59 6月5日(金) 相場レポート

株式市場動向

    米国株式市場は大幅に下落しました。5月の雇用統計が市場予想を大幅に上回る強い結果となったことで、連邦準備制度理事会による年内の利上げ観測が急浮上し、高金利環境の長期化が懸念されて投資家心理を冷やしました。ダウ工業株30種平均は1.35パーセント下落し、S&P500種株価指数は2.64パーセント安と今年最大の1日あたりの下落率を記録し、1985年以来となる10週連続の上昇記録の達成を逃し、9週連続の上昇でストップしました。ナスダック総合指数は4.18パーセント安と大幅に反落しました。セクター別では特に半導体関連の下げが際立ち、フィラデルフィア半導体株指数は8.5パーセント急落しました。前日に人工知能向けカスタムチップ事業の弱い見通しを示したブロードコムの下落が引き金となり、投資家が利益確定売りに動いたため、エヌビディアやマイクロン・テクノロジーなどの大型ハイテク株から資金が一斉に流出しました。S&P500種株価指数に含まれる時価総額1兆ドル以上のハイテク企業9社だけで約1兆1000億ドルの時価総額が吹き飛びました。一方で、英国のFTSE100種総合株価指数は、中東戦争によるインフレ圧力への懸念が和らいだことを示すイングランド銀行の調査結果が好感され、0.45パーセント上昇しました。

    日経平均株価は、前日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数が反落した流れを受け、AIや半導体関連銘柄を中心に利益確定の売りが先行し、続落しました。前日比で一時1600円以上値下がりし、66,000円を割り込む場面も見られましたが、売り一巡後は押し目買いが入り、下げ幅を縮小しました。終値は前日比882.57円安の66,588.12円(約1.3%安)となりました。

    一方、TOPIXはわずかに続落したものの、下値は限定的でした。東証プライム市場では全体のおよそ8割にあたる銘柄が値上がりし、これまで出遅れていた海運、不動産、保険、その他製品などの内需関連や景気敏感株への資金シフトがみられました。新興市場では、東証グロース市場250指数が約3%上昇し、6日ぶりの大幅反発となりました。

    為替・金利・コモディティ

      【為替市場】

      米国の雇用統計が強い結果を示したことで労働市場の底堅さが確認され、連邦準備制度理事会による利上げ観測が強まったため、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1パーセント上昇しました。主要10通貨のほぼすべてがドルに対して下落しました。日本円は1ドル160円近辺で推移しており、円安の継続によって市場では為替介入への警戒感が徐々に高まっています。インド準備銀行は自国通貨ルピーを支援するため、政府と協調して外国人投資家による国債や株式の購入を容易にする措置を発表し、これによりルピーは上昇の支援を受けました。

      【金利動向】

      米国の雇用統計の発表直後から米国債は大きく売られ、利回りが急上昇しました。連邦準備制度理事会の金融政策の予想に最も敏感な2年国債利回りは10から12ベーシスポイント上昇して4.16パーセントから4.17パーセント近辺に達し、10年国債利回りも約6ベーシスポイント上昇して4.54パーセントとなりました。金利スワップ市場のデータによれば、トレーダーらは12月までに0.25パーセントの利上げが行われる確率を完全に織り込み、早ければ10月にも実施される確率を約70パーセントと見積もっています。クリーブランド連邦準備銀行のベス・ハマック総裁は、労働市場が均衡していることをデータが示しており、現在の傾向が続けば間もなく行動を起こすことが適切になる可能性があると発言しました。

      【コモディティ市場】

      原油市場では、米国とイランの停戦交渉が停滞していることへの不透明感から、ブレント原油は1バレル約95ドル、ウェスト・テキサス・インターミディエイトは1バレル約93ドルで取引され、小幅に下落しました。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く中、米国の原油在庫は減少を続けており、エネルギー情報局によれば戦略石油備蓄を含む在庫は7億9100万バレルと2024年2月以来の低水準に落ち込んでいます。金市場では、力強い米雇用統計を受けて金利が上昇したことで利回りを生まない金の投資妙味が薄れ、金価格は3.6パーセント下落して1オンス4337.90ドルとなり、今年の上昇分をすべて帳消しにしました。

      マクロ環境・政策動向

        【地政学リスク・外交】

        中東では米国とイランの暫定和平合意に向けた交渉が難航しています。イランはレバノンでの停戦をホルムズ海峡の通行再開と休戦延長の条件として要求しており、両者の溝は埋まっていません。米中央軍は、イランの港湾に対する封鎖を徹底するため、これまでに商船129隻の航路を変更させ、6隻を無力化したと発表しました。ウクライナ情勢では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領からの直接和平交渉の提案を拒否し、ロシア軍に戦闘の継続を指示しました。欧州連合はロシアと中国の影響力拡大を懸念し、モンテネグロなどバルカン半島諸国の加盟手続きを加速させる方針を示しています。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、加盟候補国を欧州連合に結びつける戦略的利益があると強調しました。

        【金融政策】

        米国の5月の非農業部門雇用者数は17万2000人増となり、市場予想の8万5000人から8万8000人増を大幅に上回りました。過去2カ月分の雇用増も合計9万3000人上方修正されました。失業率は4.3パーセントで横ばいでした。平均時給は前月比0.3パーセント増、前年同月比3.4パーセント増となり、4月の3.6パーセントから減速しました。この力強い指標は、就任したばかりのケビン・ウォーシュ連邦準備制度理事会トップにとって、高止まりするインフレへの対応と利下げを求めるホワイトハウスからの圧力という複雑な課題を突きつけています。カナダでは5月の雇用者数が8万7800人増加し、予想の1万人増を大きく上回りました。失業率は6.6パーセントに低下し、労働市場の強さが示されました。

        【制度・政策】

        米国、メキシコ、カナダの3カ国による米国・メキシコ・カナダ協定の更新期限である7月1日を前に、合意が見送られる公算が大きくなっています。ドナルド・トランプ米大統領は自動車製造を米国に回帰させるため、免税措置の条件として米国産部品の比率を少なくとも50パーセントに引き上げる新基準を要求しています。また、米通商代表部は、強制労働によって生産された疑いがあるとして、中国、インド、日本、韓国、ブラジルなどからの輸入品に対し12.5パーセントの関税を提案し、保護主義的な通商政策を強化しています。S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズは、新規株式公開企業のS&P500種株価指数への早期組み入れを可能にするルール変更案を却下し、上場から1年間の経過と直近の四半期を含む過去1年間の黒字要件を維持すると発表しました。

        米国個別銘柄動向

          【テクノロジー・半導体】

          ・Nvidia (NVDA):株価は約6パーセント下落し、時価総額が3000億ドル以上吹き飛びました。前日のブロードコムの決算発表を契機とした人工知能関連銘柄からの資金流出が直撃しました。

          ・Broadcom (AVGO):株価は6.8パーセントから8パーセント近く下落しました。人工知能向けカスタムチップ事業の需要見通しが市場の過度な期待に届かず、半導体セクター全体の売りを主導しました。

          ・Micron Technology (MU):株価は11パーセントから13パーセント急落し、約1270億ドルの時価総額を失いました。利益確定売りの波に押されました。

          ・Advanced Micro Devices (AMD):株価は10.5パーセント下落しました。セクター全体の投資家心理の悪化が波及しました。

          ・Marvell Technology (MRVL):S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが、同社を6月22日付でS&P500種株価指数に組み入れると発表しました。この発表を受け、時間外取引で株価は6パーセント上昇しました。

          ・Flex (FLEX):マーベル・テクノロジーとともに、6月22日付でS&P500種株価指数に組み入れられることが発表されました。時間外取引で株価は4パーセント上昇しました。

          ・Alphabet (GOOGL):スペースX社に対し、2029年半ばまでのクラウドサービス提供と計算能力の対価として月額9億2000万ドルを支払う契約に合意したことが提出資料で明らかになり、人工知能インフラ分野での提携が示されました。

          ・Meta Platforms (META):人工知能インフラへの投資資金を確保するため、数十億ドル規模の株式売却による資金調達を検討していると報じられ、希薄化懸念から株価は一時7パーセント下落しました。

          【航空宇宙・防衛】

          ・SpaceX:評価額1兆7500億ドルで750億ドルの資金調達を目指す新規株式公開において、機関投資家との面談を経て募集株式数を上回る需要を集めていることが明らかになりました。1株あたり135ドルの固定価格で約5億5560万株を公開する予定です。

          【アパレル・小売】

          ・Lululemon Athletica (LULU):第1四半期の決算発表に合わせて通期の売上高見通しを従来の113億5000万ドルから115億ドルから、110億ドルから111億5000万ドルへと下方修正したことで、株価は市場前取引で10パーセント以上急落しました。北米市場での販売不振の悪化が要因として挙げられています。

          日本個別銘柄動向

          【半導体・IT・通信】

          ・ソフトバンクグループ(9984):前日の急落に対する押し目買いが入り、前日終値付近まで買い戻されて取引を終えました。

          ・キオクシアホールディングス(285A):株主還元方針への期待から上昇し、終値ベースの時価総額で上場以来初めてソフトバンクグループを上回りました。

          ・東京エレクトロン(8035):米国市場における半導体株安の流れを引き継ぎ、6日ぶりの反落となって日経平均を押し下げました。

          ・アドバンテスト(6857):半導体株セクターへの利益確定売りに押され、4日ぶりの反落となりました。

          ・トレンドマイクロ(4704):サイバーセキュリティ製品にAnthropicのAIモデルを活用すると発表し、年初来高値を更新しました。

          【金融・保険】

          ・三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306):日銀の利上げ方針への思惑から連日で買いが進み、上場来高値を更新しました。

          ・三井住友フィナンシャルグループ(8316):国内金利の上昇傾向を背景に買われ、4ヶ月ぶりに上場来高値を更新しました。

          ・T&Dホールディングス(8795):子会社の株式をPayPayに1600億円で譲渡すること、および上限300億円の自社株買いを発表し、株価が急伸しました。

          【機械・プラント・その他】

          ・三菱重工業(7011):政府が原子力発電所の建て替え目標を掲げるとの報道を受け、関連事業の手がかりから買い戻されました。

          ・カカクコム(2371):大株主であるデジタルガレージがLINEヤフーによる買収案に同意せず、EQTの買収案を支持する方針が伝わり、株価はもみ合いとなりました。

          ・フジ・メディア・ホールディングス(4676):不動産子会社の売却入札において、海外ファンドなどから1兆円を超える応札が相次いだと報じられ、株価が一時急伸しました。

          ・日本マクドナルドホールディングス(2702):5月の既存店売上高が前年同月比5.7%増となり、17ヶ月連続で前年実績を上回ったことが確認されました。