#64 6月12日(金) 相場レポート

株式市場動向

2026年6月12日の米国株式市場は、主要指数がそろって上昇して取引を終えました。ダウ工業株30種平均は前日比0.70パーセント高の51202.26ポイント、S&P500種株価指数は0.50パーセント高の7431.46ポイント、ナスダック総合株価指数は0.31パーセント高の25888.84ポイントとなりました。主要3指数はそろって週間でのプラスを記録しています。市場を動かした大きな要因は、SpaceXの歴史的な株式公開と、米国とイランの間の暫定和平合意への進展による原油価格の下落です。セクター別では、SpaceXの上場をきっかけとした宇宙関連株の利益確定売りや、原油価格下落に伴うエネルギーセクターの下落が見られた一方、地政学リスクの減退を受けて幅広い銘柄が買われました。また、労働市場の底堅さから連邦準備制度理事会による高金利政策の長期化懸念が根強い中、市場のボラティリティを示すレジーム・ディスパージョン指標が94パーセンタイルに跳ね上がるなど、投資家の間での激しいセクターローテーションが続いています。

東京株式市場では、日経平均株価が大幅に続進しました。終値は前日比1800円77銭高い6万6020円4銭となり、1週間ぶりに6万6000円台を回復しました。週明けには過去5番目の下げ幅となる2500円以上の上落を記録するなど、今週の市場は激しい値動きとなりましたが、週末にかけて力強く買い戻される展開となりました。取引時間中の高値は6万7065円まで達し、一時2週間ぶりに6万7000円台を回復しました。なお、この日はメジャーSQの算出日であり、日経平均のSQ値は6万6698円40銭でした。

今回の株高を牽引したのはAIおよび半導体関連の主力銘柄であり、東京エレクトロンやアドバンテスト、キオクシアホールディングスといった値がさ株が日経平均を大きく押し上げました。一方で、東証プライム市場の全体を見ると全面高の様相ではなく、値上がり銘柄数が943で全体の約6割を占めたのに対し、値下がり銘柄数も570に上りました。小売や食品といった内需セクターには物色が向かいにくく、下落する銘柄も目立つ展開となりました。東証プライム市場の売買代金は、メジャーSQに伴う取引の膨らみもあり11兆4830億円に達しました。その他の指数では、トピックスが3日ぶりに反発して3881.96ポイントで取引を終え、東証グロース市場250指数は0.2%高と続進しました。

為替・金利・コモディティ

【為替市場】

中東での戦争を背景とした安全資産としての需要から、投資家は米ドルに対して2025年2月以来で最も強気な姿勢を強めています。商品先物取引委員会のデータによると、ヘッジファンドやアセットマネージャーなどの投機筋が積み上げた米ドルの買い越し幅は2026年6月9日時点で278億ドルに達しました。イラン戦争に伴う原油価格の上昇にドルの価値が強く連動する動きが見られています。一方、インドでは通貨ルピーが今年1米ドルあたり97ルピー近辺の過去最安値を記録したため、インド準備銀行と政府が海外資本を呼び込みルピーを支えるための各種措置を導入しています。

    【金利動向】

    米国の債券市場では、10年物国債利回りが4.48パーセントとなりました。ゴールドマン・サックス・グループの米国金利商品共同責任者であるムハンマド・クバジ氏は、インフレ高進や堅調な経済、人工知能分野への企業投資を背景に、債券トレーダーが借入コストの上昇を見込むのは妥当であると指摘しています。市場では、ケビン・ウォーシュ議長が率いる連邦公開市場委員会が年末までに利上げを行う確率を約75パーセントと織り込んでおり、2027年3月までの利上げを完全に織り込んでいます。

    【コモディティ市場】

    原油市場では、米国とイランの和平合意への期待から価格が3ヶ月ぶりの低水準に急落しました。国際指標であるロンドン・ブレント原油の8月限先物価格は前日比3.4パーセント安の1バレル87.33ドルで引け、週間では6.2パーセント下落しました。また、ニューヨーク商業取引所のウェスト・テキサス・インターミディエイトの7月限先物価格は3.2パーセント安の1バレル84.88ドルとなり、週間で6.3パーセント下落しています。在庫状況については、国際通貨基金が来月に世界の原油在庫が5年ぶりの低水準に達すると予測しており、米国の政府備蓄も1983年以来の低水準に近づいているなど、供給逼迫への懸念が石油業界から示されています。また、原材料価格高騰の影響で、先月のプラスチック樹脂・材料の卸売価格指数は14パーセント上昇し、約4年ぶりの高水準を記録しました。フランスの冬小麦の収量予測は1ヘクタールあたり7.2から7.4トンの見込みとなっています。

    マクロ環境・政策動向

    【地政学リスク・外交】

    米国とイランは、戦争の終結とホルムズ海峡の再開を目指す暫定和平合意の締結に向けて大きく前進しています。トランプ大統領はイランへの新たな軍事攻撃計画を中止し、早ければ来週フランスの主要指導者が集まるG7サミットの傍らで覚書が署名される可能性を示唆しました。交渉はカタールやパキスタンが仲介していますが、イランの最高指導者モジュタバ・ハメネイ師への連絡に数日を要するなど通信プロセスが煩雑であることが進展の障害となっています。また、ホルムズ海峡を通行する船舶は徐々に増加しており、非イラン系の原油輸送は今月に入り約50パーセント増加し、夜間に追跡信号を切るダーク・トランジットなどの手法が用いられています。

      【金融政策】

      欧州中央銀行は、中東紛争によるエネルギーコスト上昇が広範な物価を押し上げているとして、主要政策金利を0.25パーセント引き上げ2.25パーセントとしました。これはイラン戦争開始以来、G7先進国の中で初の利上げとなります。ブラジル中銀は、5月の年間インフレ率が4.72パーセントに達し目標上限の4.5パーセントを超えたことで、来週の政策決定会合における追加利下げの余地が狭まっています。一方、ポーランド中銀のモネタリー・ポリシー・カウンシル委員であるイレネウス・ダブロフスキ氏は、5月のインフレ率が3.1パーセントに想定外に鈍化したことを受け、利上げの必要性が薄れ年内の利下げの可能性が高まったとの認識を示しました。インド準備銀行は今月の会合で金利を据え置き、非金融措置による通貨防衛を優先しています。

      【制度・政策】

      米国トランプ政権は、キューバの国営石油会社 Unión Cuba-Petróleo をブラックリストに追加し制裁を強化しました。これにより、フロリダの石油取引企業による1960年以来最大規模となる25万バレルの燃料輸送計画が中止に追い込まれ、キューバのエネルギー危機が深刻化しています。また、米国ではデータセンターに対する税制優遇措置を見直す動きが広がっており、インセンティブを提供している38州のうち約24州が減税の縮小を検討しています。ロードアイランド州のダン・マッキー知事は、富裕層への課税を強化し予算を確保するため、100万ドルを超える所得に対する最高税率を3年間で5.99パーセントから8.99パーセントに引き上げる予算案に署名しました。シンガポール金融管理局は、マネーロンダリング対策の強化と富裕層の投資誘致の両立を図るため、単一ファミリーオフィス向けの改定枠組みを6月15日に導入します。英国政府は、ロシア産原油から精製されたディーゼル燃料およびジェット燃料の第三国経由の輸入を2027年1月1日までに全面的に禁止する方針を表明しました。

      米国個別銘柄動向

      【航空・宇宙・防衛】

      ・Space Exploration Technologies Corp. (SPCX):新規株式公開を行い、1株135ドルの公募価格に対しナスダック市場での初値は11パーセント高い150ドルとなりました。その後も買いが集まり、終値は160.95ドルとなり、時価評価額は2兆ドルを突破して世界第6位の企業となりました。これにより最高経営責任者であるイーロン・マスク氏の保有資産は1兆ドルを超え、世界初の兆万長者となりました。また、大株主であるアントニオ・グラシアス氏の投資会社が保有する株式価値は65億ドルに達しています。

      ・Rocket Lab (RKLB):SpaceXの上場に伴う材料出尽くし感やポートフォリオの調整による資金流出から、株価は8パーセント下落しました。 ・Planet Labs (PL):宇宙セクター全体の利益確定売りの波に押され、株価は8パーセント下落しました。

      ・Intuitive Machines (LUNR):SpaceXへの資金集中やセクターの過熱感に対する警戒から、株価は11パーセント下落しました。

      ・AST SpaceMobile (ASTS):競合するStarlink事業の規模拡大に対する警戒感などから、株価は12パーセントを超える急落となりました。

      ・Virgin Galactic (SPCE):前日にSpaceXとティッカーシンボルが類似していることによる誤認買いで株価が20パーセント以上高騰していましたが、この日は一転して28パーセントの急落となりました。

      ・General Dynamics (GD):ジェフェリーズのアナリストであるシーラ・カヒャオグル氏が海洋部門の強い成長を理由に投資判断を買いに引き上げました。

        【テクノロジー・通信】

        ・Adobe Inc. (ADBE):最高財務責任者であるダン・ダーン氏が6月15日付で退任することが発表され、経営陣の空白への懸念から株価は6パーセントから7パーセント下落しました。

        ・Marvell Technology (MRVL):Adobeを退任するダン・ダーン氏を新たな最高財務責任者として迎える人事を発表しましたが、株価は1パーセント下落しました。

        ・Roku Inc.:ストリーミング配信端末の普及で1億以上の世帯にリーチを持つ同社が、米国のメディア企業と身売りや統合に向けた高度な交渉を行っていることが報じられ、株価は12パーセント上昇しました。

        【エネルギー】

        ・Exxon Mobil Corp. (XOM):中東紛争によるホルムズ海峡閉鎖リスクに対応し、アジア市場への液化天然ガス供給能力を強化するため、オーストラリアの Woodside Energy Group の買収を社内で初期段階の検討を行っていることが判明しました。

        【自動車・機械・製造】

        ・Tesla Inc. (TSLA):SpaceXの上場に伴う投資資金の分散や、自動車販売の苦戦というファンダメンタルズの弱さが意識され、株価は前日比でほぼ横ばいの400.64ドルとなりました。

        ・Cummins Inc.:UBSのアナリストが、データセンター向けのバックアップ用ディーゼル発電システムへの強い需要が収益を支えるとして、投資判断を買いに引き上げました。

        【金融・サービス・その他】

        ・BlackRock Inc. (BLK):同社の主力プライベートクレジットファンドにおいて、第2四半期に投資家から全体の13.3パーセントにのぼる解約請求が寄せられたことが明らかになりました。なお、実際の買い戻しは規定に基づき5パーセントに制限されます。

        ・Western Asset Management Co.:元スター債券トレーダーで共同最高投資責任者であったケン・リーチ氏が、特定の顧客に利益の出る取引を不正に割り当てていたチェリー・ピッキング疑惑を巡り、証券取引委員会の調査を妨害したとする1件の罪状について有罪を認める方針を示しました。

        ・Ensemble Health Partners:プライベートエクエティエグゼクティブのマット・ホルト氏が率いる投資会社ソロー・グループが、アポロ・グローバル・マネジメントの支援を受けて同社を約120億ドルで買収する最終交渉を進めていることが報じられました。

        ・Paramount Skydance:Warner Bros. Discovery Inc.との1100億ドル規模の合併計画について、米国司法省が反トラスト法に基づく調査を条件変更なしで終結したことが判明しました。

        日本個別銘柄動向

        【半導体・AI・テクノロジー】

        ・キオクシアホールディングス(6600A):株価が前日比8%を超える急伸となり、終値ベースで初めて8万円台に乗せました。取引時間中の高値は8万340円に達し、時価総額は44兆円台に膨らみました。

        ・東京エレクトロン(8035):株価が前日比10%近く急伸し、上場来高値を更新しました。取引時間中には一時7万1000円台をつけ、日経平均の上昇を大きく牽引しました。

        ・ソフトバンクグループ(9984):米国市場で傘下のアーム・ホールディングスが11%高と急進したものの、国内市場での買いの勢いは限定的となり、株価は前日比3%近くの上昇にとどまりました。

        【宇宙・インフラ・製造】

        ・アストロスケールホールディングス(186A):SpaceXの上場思惑やJAXAによるH3ロケットの打ち上げ成功を背景に宇宙関連株に買いが向かい、東証グロース市場での売買代金が211億円に達するなか、株価は5%超の大幅高となりました。

        ・丸前(6264):2026年8月期の連結純利益予想を、半導体市場の拡大に伴う受注増加を理由に、前期比2.4倍となる33億円へと上方修正しました。あわせて期末配当の増額も発表したことが好感され、株価は一時ストップ高をつけ、前日比20%高と急伸しました。

        ・日立製作所(6501):米GEベルノバとの小型モジュール炉に関する最終協議の報道が出たものの、物色資金が半導体株へ集中したことなどから材料視する動きは限定的となり、前日終値を挟んだ横ばい圏での推移となりました。

        ・日本製鋼所(5631):日米政府による原発の新増設合意の報道を受け、原子炉の圧力容器用部材を手掛けていることから買われ、株価は前日比6%以上大幅に上昇しました。

        【食品・小売・サービス】

        ・アサヒグループホールディングス(2502):2025年12月期の連結純利益見通しについて、昨年9月に受けたサイバー攻撃によるシステム障害への対応費用や売上減少が響き、従来予想から475億円下方修正して前期比38%減の1200億円になる見込みを発表しました。株価は3%を超える下落となりました。

        ・ビジョナル(4194):第3四半期累計決算において純利益が過去最高を記録したものの、販売費の増加による営業利益率の低下や、四半期ごとの売上成長率の鈍化が嫌気され、株価は前日比8%安と大幅に下落しました。

        ・タイミー(215A):2027年4月期の連結純利益予想を60億円から69億円と発表しました。あわせてNTTドコモや住信SBIネット銀行との金融領域における業務提携を発表したことも好感され、株価は10%を超える急反発となりました。

        ・TKP(3479):総額35億円、発行済み株式数の5.23%にあたる200万株を上限とする自社株買いの実施を発表しました。株式還元の強化が好感され、株価は前日比15%高と急伸しました。

        ・アインホールディングス(9627):2027年4月期の純利益が前の期比13%減の150億円になる見通しを発表しました。服薬指導等へのAI導入店舗拡大など本業は堅調で営業利益は増益を確保したものの、税負担軽減の反動による最終減益見通しや内需株への逆風が重なり、株価は4%下落しました。

        ・ニチレイ(2871):香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントによる5%の大量保有や、証券会社による目標株価引き上げを背景に、年初来高値を更新しました。

        ・神戸物産(3038):中間決算において、プライベートブランド商品の好調により増収増益を確保したものの、売上高と営業利益が市場予想に届かなかったことが嫌気され、株価は反落しました。

        ・くら寿司(2695):中間決算において、北米事業が大変高調に推移し増収となったものの、コスト増に伴う国内事業の減益が響き、全体では増収減益となりました。通期予想は据え置かれ、株価は反発しました。