#67 6月17日(水) 相場レポート

株式市場動向

2026年6月17日の米国株式市場は、連邦公開市場委員会でのタカ派的な政策傾斜が嫌気され、主要3指数が揃って大幅に下落しました。ダウ工業株平均は前日比507.12ポイント安の51492.55で取引を終え、下落率は0.98%に達して6月10日以来で最大の1日あたりの下落率を記録しました。S&P 500は1.21%下落の7420.10、ナスダック総合指数は1.34%下落の26021.66となりました。市場を動かした背景には、新しく就任したケビン・ウォーシュ議長のもとで公表された経済予測において、多くの政策当局者が年内の追加利上げの可能性を示唆したことが挙げられます。これにより、これまで市場が期待していた利下げのシナリオが後退し、投資家のリスク回避姿勢が強まりました。また、新規公開を終えたばかりのSpaceX (SPCX) に小売個人投資家の取引が極端に集中したものの、市場全体のセンチメントを押し上げるには至らず、半導体セクターをはじめとする主要なハイテク株にも売りが波及しました。

日本の株式市場では、日経平均株価が米国ハイテク株安の流れを引き継ぎ、朝方は一時400円以上下落して69,000円を下回る場面がありました。しかし、寄り付き直後を安値に急速に切り返すとプラス圏に浮上し、取引時間中には一時7万円の大台に乗せ、最高値7万125円を記録する場面もありました。大引けにかけてはやや伸び悩んだものの、前日比497円75銭高い69,902円25銭で取引を終え、5日続進で連日の市場最高値を更新しました。TOPIXも反発し、終値ベースで初めて4,000ポイント台に乗せて市場最高値を更新しました。相場は半導体やAI関連株の一部、および利上げに伴う収益改善期待が高まった銀行などの内需株・景気敏感株によって下支えされました。一方、東証グロース市場250指数は取引後半に弱含み、反落して取引を終えています。

アジアの株式市場は、上海総合指数や香港ハンセン指数、台湾加権指数などが軒並み軟調に推移しました。一方で韓国総合株価指数、コスピーは切り返して強い動きをみせ、5日続進で最高値を更新しました。シンガポール市場も5日続進し、最高値を上回る水準で推移しています。

為替・金利・コモディティ

【為替市場】

外国為替市場では、米連邦準備制度理事会のタカ派的な姿勢を背景に米ドルが主要通貨に対して急伸しました。ドルインデックスは0.5%上昇の100.08となり、ブルームバーグのドル・ゲージは最大0.8%上昇して3か月ぶりの大幅な日中上昇率を記録しました。これに伴い主要通貨は一斉に下落し、日本円は対ドルで一時0.2%下落の160.79円まで売られ、2024年7月以来の安値を更新しました。この急激な円安の進行に対して片山財務大臣は、当局がいつでも為替市場の動きに対応する準備があると言及し、公式介入への警戒感をにじませています。日本政府は4月28日から5月27日までに過去最高となる11.73兆円の市場介入を実施した事実が示されていますが、日米の金利差やイラン・イスラエル間の紛争による原油価格高騰が円の重荷となっています。他の地域ではチリペソが0.5%上昇して881.19ペソとなり、ブラジルレアルは0.6%上昇して5.0599レアルを記録しました。一方でコロンビアペソは0.23%下落して3431.35ペソ、ペルーソルは0.76%上昇して3.3787ソル、メキシコペソは0.05%下落して17.1922ペソ、アルゼンチンペソの並行レートは0.68%下落して1460.0ペソで取引されました。

    【金利動向】

    米国の国債市場では、連邦公開市場委員会の利上げ示唆を受けて利回りが急上昇しました。政策金利の動向に敏感な2年債利回りは、前日比で10ベーシスポイント以上上昇して4.21%に上昇し、2025年2月以来の高水準に達しました。10年債利回りも3ベーシスポイントから0.036%ポイント上昇して4.462%から4.463%のレンジを付けました。市場ではインフレ圧力が根強いことが確認され、金利先物市場では10月までの利上げ確率の織り込みが急速に進んでいます。また、これまでの利下げ期待に基づくヘッジポジションの巻き戻しが発生し、債券売りを加速させる要因となりました。

    【コモディティ市場】

    コモディティ市場では、米国とイランの暫定和平合意への進展を反映して、原油価格が上値の重い展開を続けました。国際指標であるブレント原油先物はわずかに上昇したものの、1バレル80ドルを下回る水準で推移しました。ニューヨーク市場のWTI原油先物ベースの連続契約価格は、1.07%下落の75.24ドルで取引を終えました。背景には、国際エネルギー機関が和平合意の成立によって来年にかけて世界的な原油供給過剰が起きるとの予測を示したことが挙げられます。一方で、米国エネルギー情報局が同日発表した統計によれば、米国の主要な原油貯蔵ハブであるオクラホマ州クッシングの原油在庫が8週連続で減少して約2000万バレルとなり、商業運用上の最低水準とされる2014年以来の深刻な低水準に落ち込んでいます。さらに、トランプ政権が燃料価格抑制のために1.72億バレルを放出している米国の戦略石油備蓄は3億4000万バレルまで減少し、1983年以来の低水準となっています。なお、金先物の連続契約価格は1.62%下落の4283.70ドルで取引を終えました。

    マクロ環境・政策動向

    【地政学リスク・外交】

    米国とイランによる暫定和平合意に関する進展が大きく注目されました。両国が電子署名を行った14箇条からなる覚書に基づき、金曜日にスイスのルツェルンでJDヴァンス副大統領とイランのモハンマド・バゲール・ガリバフ国会議長による調印式が計画されています。トランプ大統領はG7サミットでこの合意を強く擁護し、経済的破滅を避けるための手段であると説明しました。合意案にはホルムズ海峡の即時開放やイランの即時原油輸出再開に対する米国の制裁解除が含まれていますが、イラン側が60日後に通航料を徴収する意向を示しているのに対し、米国は国際法に基づく自由航行を主張しており、依然として緊張が残っています。また、イスラエルはイラン支援下の民兵組織ヒズボラによる脅威が続いていることを理由に、米国からのレバノン南部からの撤退要求を拒否しました。さらに、G7サミットの場ではトランプ大統領がロシアへの制裁強化やウクライナへの軍事支援ライセンス供与について言及し、オランダのディラン・イェシルギョズ=ゼゲリウス国防大臣がウクライナへ5億ユーロの武器支援を表明したことが発表されました。

      【金融政策】

      連邦準備制度理事会は、ケビン・ウォーシュ新議長のもとで最初の連邦公開市場委員会を開催し、政策金利を3.5%から3.75%の範囲で全員一致で据え置くことを決定しました。しかし、同時に発表された経済予測では、参加者19人のうちウォーシュ議長を除く18人が提出したドットプロットにおいて、9人が年内の利上げを見込んでおり、金利見通しの中央値は3.8%へと引き上げられました。インフレ予測も大幅に上方修正され、2026年末の個人消費支出価格インフレの見通しは3.6%、コアインフレの見通しは3.3%となりました。ウォーシュ議長は従来のフォワードガイダンスや利下げバイアスの文言を声明文から完全に削除し、声明文の長さを前回の341語から132語へと大幅に短縮する改革を断行しました。さらにウォーシュ議長は、FRBの通信、バランスシート、データ源の利用、生産性と雇用、インフレ枠組みの5分野を検証する独立したタスクフォースを立ち上げることを発表し、年末までに結論を得る方針を示しました。

      【制度・政策】

      米国証券取引委員会は、株式投資家が最良の価格を得ることを義務付ける trade-through rule を撤廃する提案を行いました。ポール・アトキンズSEC委員長が長年批判してきたこの規則が撤廃されれば、マイクロ秒単位で取引される高速な株式市場において後れを取っていた暗号資産プラットフォーム上のトークン化株式取引に対する大きな規制緩和となります。SECは今後60日間のパブリックコメント期間を設けてフィードバックを反映させる予定です。また、トランプ政権の経済指標に関連する動きとして、5月の小売売上高が前月比0.9%増加し、既存住宅販売成約指数が3.8%上昇して76.8に達したことが同日公表され、米国の消費と住宅需要の底堅さが示されました。海外では、フランス議会が水力発電市場における Electricite de France SA の支配力を弱め、毎年6ギガワットの権益をオークションにかける法案を可決し、欧州連合との長年の対立を解消する動きを見せました。

      米国個別銘柄動向

      【金融】

      ・Bank of America Corp. (BAC):Matthew McQueenパブリック・ファイナンス部門責任者が、地方自治体の提案依頼書への対応を効率化するために人工知能の導入を拡大し、人員を増やさずに引受業務を強化する方針を明らかにしました。同行は今年これまでに460億ドル以上の長期地方債の売却を管理しています。

      ・Oaktree Capital Management (Brookfield Corp.):同社のStrategic Credit Fundにおける第2四半期の解約請求が前四半期の8.5%から4.5%へとほぼ半減し、ファンドの解約上限である5%を下回ったため、投資家からの払い戻し要求を満たすことができたと発表されました。

      ・Citadel Securities:6月12日のSpaceX (SPCX) の新規公開日に個人投資家による米株の買い付けが過去最高を記録したデータを公表し、現在市場で個人投資家が機関投資家と同様の銘柄に集中する洗練された動きを見せていると分析しました。また、外部運用者であるBenjamin Pass氏のToms Capital Investment Managementへ5億ドルの資金を提供したことが事実として言及されています。

      ・Brevan Howard Asset Management:株式ロングショート戦略などを展開する外部のヘッジファンド運用者に対して資金を配分する新しい取り組みのために、UBSからMichael Dwier氏とAdolfo Oliete氏を招聘して Separately Managed Accounts 経由での出資準備を進めていることが明らかになりました。

      ・Mutares SE & Co.:同社が保有するポルトガルのエンジニアリンググループであるEfacecについて、JPMorgan Chase & Co. をアドバイザーに起用し、リスボン市場での新規公開または売却を含む選択肢を検討していることが報じられました。

        【消費財・小売・自動車】

        ・CarMax Inc. (KMX):既存店売上高が0.8%減少して4四半期連続のマイナスとなり、中古車1台あたりの粗利益も減少したことが嫌気され、株価はニューヨーク市場の取引序盤で最大9.4%急落しました。Keith Barr最高経営責任者は、価格戦略の改善などを進める方針を示しています。

        ・BYD Co. (比亜迪):同社最大となる全長17フィートの7人乗り電動SUV「Great Tang」を中国国内で想定を下回る239,900元から発売しました。4月の北京モーターショーでの初公開以来、事前予約が15万台を超えており、ブレードバッテリーの生産が需要に追いつかない状況に直面しています。

        ・Stellantis NV (STLA):Antonio Filosa最高経営責任者がイタリア議会の公聴会に出席し、高級車ブランドであるMaseratiやカッシーノ工場の売却可能性を完全に否定したうえで、技術調達に向けた2社の有力な潜在的パートナーと交渉中であると証言しました。

        【テクノロジー・AI・宇宙】

        ・SpaceX (SPCX):新規公開後の3取引日間で小売個人投資家から総額3億6980万ドルのネット買い越しを記録し、主要ハイテク株であるマニフィセント・セブン銘柄への投資額を上回る異例の資金集中が発生しました。水曜日の株価はミッドデー取引で約3%下落の193.33ドルで推移しました。

        ・Anthropic PBC:トランプ政権による国家安全保障上の輸出規制に基づき、商務省のハワード・ラトニック長官から外国人によるアクセス禁止を命令されたため、同社は最新のAIモデルである Fable 5 と Mythos 5 へのアクセスを全面的に遮断しました。同社はIPOを控えており、5月時点での企業価値は965億ドルとされています。

        ・OpenAI:秋の新規公開に向けて CONFIDENTIAL での申請書を今月提出しており、リードアンダーライターを務める Goldman Sachs と Morgan Stanley が情報隔絶のための独立した専門チームを組織して準備にあたっていることが明らかになりました。

        ・ASML Holding NV (ASML):Christophe Fouquet最高経営責任者は、イーロン・マスク氏が主導する半導体製造プロジェクトである「Terafab」に対して、最先端の露光装置の供給制限やサービス遅延が生じないよう、サプライチェーンの管理を徹底する必要があると述べました。

        【エネルギー】

        ・TotalEnergies SE (TTE):2024年に20億ユーロで取得した北海の1.5ギガワット洋上風力発電プロジェクト「NSE2」について、コスト上昇とグリッド接続の遅延を理由に政府へ権益の返還を求めていましたが、カテリーナ・ライ希経済大臣が契約の履行を理由にこれを公式に拒否しました。

        ・Shumba Energy Ltd.:同社傘下の Etavi Renewables が開発を手掛けるボツワナ初の大型太陽光発電事業である100メガワット規模の Tati Solar Project について、Rand Merchant Bank を主幹事として1億ドルの資金調達を完了したと発表しました。2026年6月17日に資金手配が完了し、2027年の商業運転を目指します。

        ・Invenergy LLC:トランプ政権の内務省による洋上風力発電開発の抑制方針に伴い、ニューヨーク・バイトの84,000エーカーを含む洋上風力発電リース4件の契約が取り消され、同社に対して7億6500万ドルの払い戻しが行われる決済が成立しました。

        【バイオテック・ヘルスケア】

        ・BioNTech SE (BNTX):創業者のUgur Sahin氏とÖzlem Türeci氏が退任して新会社を設立し、技術ライセンスを移管する計画に対し、主要投資家のBernd Förtsch氏がコーポレートガバナンス上の重大な懸念を表明し、独立したフェアネス・オピニオンの取得を Supervisory Board に要求しました。需要減退に伴い国内の最大1,860人の人員削減も進めています。

        ・Telepatia:ラテンアメリカ発の医療AIスタートアップであり、4月に Andreessen Horowitz から3300万ドルのシリーズA資金調達を行いました。すでにブラジルやコロンビアの25以上の医療機関を通じて1400万人の患者へサービスを提供しており、2027年末までに地域の医師の半数への普及を目指しています。

        日本個別銘柄動向

        【電気機器・精密機器】

        ・タムロン(7740):2026年12月期の年間配当予想を従来計画から14円引き上げて51円に修正したほか、2029年12月期を最終年度とする中期経営計画を発表しました。中計ではROE20%以上、配当性向60%またはDOE8%の高い方を実施すること、および約180億円の追加還元を行う方針を明記し、株価は大幅高となりました。

        ・国際エレクトリック(6525):2027年3月期の通期営業利益について前期比30%増を見込む一方、下期は減収減益の計画としています。ただし、会社計画には足元の好調な市場環境が反映されていないため、上方修正が実施されるとの見方が示されています。株価は下落して始まり

        ・東京エレクトロン(8035):2027年3月期の会社計画は非開示であるものの、上期は前年同期比33%の増収を見込んでおり、下期も先端デバイス向けの成膜装置やエッチング装置の販売増加による高い成長を想定しています。株価は急上昇しました。

        ・太陽誘電(6976):外資系証券による投資判断の引き下げを受けて朝方は売りが先行したものの、その後切り返して3日続進となり、連日で上場来高値を更新しました。同社の佐瀬社長が日本経済新聞のインタビューに応じ、AIサーバー向けの積層セラミックコンデンサー、MLCCについて生産能力の拡大ペースを引き上げる可能性を示した一方、一部を除き値上げは検討していないことを明かしました。

        【食料品】

        ・森永乳業(2264):手掛ける乳製品やビフィズス菌に加え、ドイツ子会社のミライシャが機能性乳製品をグローバルに供給しています。決算説明会では来期にあたる2027年3月期のホエイプロテイン増産検討が示されました。株価は決算後に買われる場面がありました。

        ・ラクトジャパン(3139):日本で消費される乳製品原料の多くを輸入する独立系専門商社です。2022年から新規事業としてホエイプロテインなどの機能性食品原料の輸入販売を開始しました。中期経営計画ではライフフードサイエンス事業部門の売上高目標を145億円に設定しており、今期第1四ハン期の同部門売上高は前年同期比79%増を記録しました。株価は冴えない展開となっています。

        ・ファーマフーズ(2929):卵の研究を起点に機能性素材の食品・化粧品・繊維・創薬事業を展開しています。B2Bではボーンペップやギャバが大手企業の製品に採用されています。B2Cの通販事業が売上高の87%を占め、育毛剤であるニューモやジェル歯磨きであるドクターキュラが牽引しています。2026年7月期の通期営業利益予想を15億円から20億円へ上方修正しました。また、卵角膜を用いた繊維であるオボベールを展開するほか、データセンター向けの電池材料開発、農業分野でのバイオスティミラント開発、創薬事業での新薬共同開発などを進めており、6月末には新たな中期経営計画を発表する予定です。