#21 4月29日(水) 米国時間レポート

1. 株式市場動向

2026年4月29日から30日にかけての米国株式市場は、主要株価指数がまちまちな値動きとなりました。ダウ工業株30種平均は約280ドル下落し、5日連続の続落となりました。S&P500種株価指数は前日終値付近のほぼ横ばいで推移し、ナスダック総合指数は小幅に上昇しました。

市場では、Google、Microsoft、Meta、Amazonの決算発表や、連邦公開市場委員会(FOMC)による金利据え置きの決定が主な材料となりました。セクター別では、NXP SemiconductorsやSeagate Technologyなどの好決算を背景に半導体関連株が買われ、相場を牽引しました。一方で、原油価格の高騰や長期金利の上昇が重荷となり、一般消費財セクターなどは下落しました。

2. 為替・金利・コモディティ

【為替市場】

米連邦準備制度理事会(FRB)の金利据え置き決定を受け、ドルは小幅に上昇して推移しました。

【金利動向】

米国債利回りは上昇基調となりました。指標となる10年債利回りは4.40%台に達し、約1カ月ぶりの高水準を記録しました。2年債利回りも上昇し、一時3.9%から4.0%付近で推移しました。また、住宅ローン金利も国債利回りの上昇に追随し、30年固定住宅ローン金利の平均は前日から7ベーシスポイント上昇して6.45%となり、4月3日以来の高水準となりました。

【コモディティ市場】

原油価格は急騰しました。米国によるイランの港湾封鎖を背景に、WTI原油先物は約7%上昇し1バレル107ドル付近まで到達、4月7日以来となる100ドル超えを記録しました。国際指標であるブレント原油も119ドルから120ドル付近まで上昇しました。これに伴い、全米の小売ガソリン平均価格は1ガロンあたり4.22ドルに達し、過去4年間で最高値水準となりました。

COMMENT
『原油価格が再び上昇し、WTI先物は110ドル台まで上昇、イランとアメリカの戦闘開始直後に記録した115ドル台に再び近づいています。一方で、Googleの決算などを背景に、Nasdaq先物は史上最高値を更新しています。
このように、イランとアメリカの戦闘や主要銘柄の決算発表など、複数の要因が重なり、市場の方向感は判断が難しい局面となっています。しかし、4月の株価指数の急上昇に対する調整や原油価格と株価指数の乖離が回帰する可能性を踏まえると、株価指数が下落する展開も考えられます。
また、4月30日の引け後にはAppleの決算発表が控えており、その後しばらくは主要銘柄の決算がありません。こうした材料の出尽くしも意識される中で、株価指数の下落が近いうちに起きる可能性があると考えます。』

3. マクロ環境・政策動向

【地政学リスク・外交】

米国によるイラン港湾の封鎖が継続しています。トランプ大統領は、イランの核開発計画に関する懸念に対処する合意が成立するまで同封鎖を維持する方針を表明しました。米国中央軍(CENTCOM)は交渉の行き詰まりを打破するため、イランのインフラ施設に対する限定的な攻撃計画を準備していると報じられています。この中東での紛争により、ホルムズ海峡を経由する肥料などの物流に混乱が生じています。米国防総省の当局者は、イランとの紛争に関する費用が弾薬を中心にこれまでに約250億ドルに上ると議会で証言しました。

【金融政策】

連邦公開市場委員会(FOMC)は、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを3.50%〜3.75%に据え置くことを決定しました。今回の決定ではミラン理事、ローガン総裁(ダラス地区連銀)、カシュカリ総裁(ミネアポリス地区連銀)、ハマック総裁(クリーブランド地区連銀)の4人が反対票を投じ、1992年10月以来最多の反対票数となりました。ローガン総裁、カシュカリ総裁、ハマック総裁は声明文における緩和バイアス(easing bias)の削除と中立的なスタンスへの移行を求め、ミラン理事は0.25%の利下げを主張しました。 ジェローム・パウエルFRB議長は、現在の任期(5月15日終了予定)において今回が最後のFOMC会合となる見込みである一方、FRBの独立性を巡る法的な攻撃や調査への対応として、任期終了後も理事として一定期間とどまる意向を表明しました。次期議長に指名されているケビン・ウォルシュ氏の承認人事は、上院銀行委員会を13対11の賛成多数で通過し、今後、上院本会議での採決が行われる予定です。

【制度・政策】

カリフォルニア州で提案されているビリオネア向け資産課税(純資産に対する1回限りの5%課税)について、同州の税収を年間35億〜45億ドル減少させる可能性があるとの試算が示されました。この課税案などを背景に、合計8,000億から1兆ドル規模の資産を持つ富裕層がフロリダ州などへ移住する動きが見られます。 また、ホワイトハウスは国防総省がAI企業Anthropicをサプライチェーンの脅威と指定した問題について、行政措置によってこれを回避し、政府機関が同社のモデルを利用継続できるようにするための協議を行っています。

COMMENT
『カリフォルニア州やニューヨーク市では、富裕層に対する課税を強化する動きが見られています。アメリカ国民の資産分布に大きな偏りがあることは事実であり、社会問題として議論されている点は否定できません。
一方で、現在のアメリカの消費動向を見ると、富裕層の消費は引き続き堅調であるのに対し、いわゆるミドルクラス以下の中低所得者層の消費は伸び悩んでいるとの報告があります。この点を踏まえると、富裕層への課税強化は、現在のアメリカ経済を支えている消費の一部を弱める可能性を内包しているとも考えられます。
短期的に大きな影響が顕在化する可能性は高くないと見られますが、長期的にはアメリカ経済に影響を及ぼすリスクもあるため、今後の動向には引き続き注目していく必要があると考えます。』

4. 個別銘柄動向

【テクノロジー・通信】

・Alphabet (GOOG):第1四半期の売上高は1,099億ドル、1株当たり利益(EPS)は5.11ドルと市場予想を上回りました。Google Cloudの売上高は前年同期比63%増の200億3,000万ドルとなり、クラウドの受注残高は前四半期比で約2倍の4,600億ドル超に達しました。通期の設備投資(CapEx)見通しを1,800億〜1,900億ドルに引き上げました。また、配当を5%引き上げ、1株当たり0.22ドルとしました。「Waymo」の完全自動運転による配車回数は週50万回を突破しました。

・Amazon (AMZN):第1四半期の売上高は1,815億2,000万ドル、EPSは2.78ドルと予想を上回りました。この利益にはAnthropicの株式評価益168億ドルが含まれています。AWS部門の売上高は前年同期比28%増の376億ドルとなりました。第2四半期の売上高見通しは1,940億〜1,990億ドル、営業利益見通しは200億〜240億ドルとしました。

・Microsoft (MSFT):第3四半期の売上高は前年同期比18%増の829億ドル、EPSは4.27ドルとなりました。Azureの売上高は40%増加しました。AIアシスタント「Copilot」の有料シート数は前四半期の1,500万から2,000万に増加し、AI事業の年換算売上高(ランレート)は前年比123%増の370億ドルを突破したと発表しました。第3四半期の設備投資は319億ドルでした。

・Meta (META):第1四半期の売上高は前年同期比33%増の563億1,000万ドルとなりました。通期の設備投資見通しを従来の1,150億〜1,350億ドルから1,250億〜1,450億ドルへ引き上げました。メタバース部門「Reality Labs」の営業損失は40億3,000万ドルとなりました。instagramやFacebookなどのSNSの1日当たりアクティブユーザー数は35億6,000万人で、イランやロシアでのインターネット接続障害などの影響により市場予想をわずかに下回りました。

COMMENT
『マグニフィセント7の中核をなす4社の決算が発表されました。株価の反応はまちまちで、Googleは上昇した一方、Metaは下落しています。これを受けて、Nasdaq先物は一時的に最高値を更新したものの、その後は元の水準まで下落しました。
このような値動きを踏まえると、今回の決算発表は、少なくとも短期的には相場の方向性を決定づける材料にはならなかった可能性が高いと考えられます。一方で、AI投資などの中長期的なテーマが相場に与える影響は依然として大きいと見られるため、追加レポートを作成し、より詳細に分析しました。』

追加レポート大型テック企業の決算はAI・半導体相場を再加速させたのか

・NXP Semiconductors (NXPI):自動車向け事業の回復を背景に市場予想を上回る決算を発表し、株価が約25%急騰しました。第2四半期の売上高は前四半期比8%以上の増加を見込み、データセンター向け売上高は今年倍増すると予測しました。

・Seagate Technology Holdings (STX):データストレージ需要に牽引され、第3四半期売上高が前年同期比44%増となりました。6月期の粗利益率見通しを50%とし、株価は約15%上昇しました。

・Qualcomm (QCOM):第2四半期の調整後EPSは2.65ドルとなりました。第3四半期の売上高見通しの中央値を96億ドル、EPS見通しの中央値を2.20ドルとし、市場予想を下回りました。一方で、ハイパースケーラー向けにデータセンター用チップを出荷していることを明らかにし、株価は一時下落後に急反発しました。

・Teradyne (TER):決算は予想を上回ったものの、今四半期の見通しが嫌気され、株価が下落しました。

【金融】

・Visa (V):第1四半期の非GAAPベースのEPSは20%増、売上高は17%増となりました。クロスボーダー決済額は2桁成長を記録しました。

・Robinhood (HOOD):暗号資産関連の売上高が前年比47%減少した影響などにより、2024年10月以来となるEPSの市場予想未達となりました。一方で180億ドルの純預入(ネットデポジット)を記録しました。

・SoFi Technologies (SOFI):売上高および利益が市場予想を上回りました。融資およびカード部門の売上高は増加しましたが、通期見通しを据え置いたことで株価は下落しました。

・Lemonade (LMND):第1四半期の保険料収入は32%増、売上高は70%増、粗利益は160%増となりました。自動車保険事業は前年比60%成長しましたが、今後の経費に関するガイダンスが影響し株価は下落しました。

【一般消費財・サービス】

・Starbucks (SBUX):第2四半期の米国内の既存店売上高は7%増加しました。客数と客単価の双方がプラス成長となり、通期の利益および既存店売上高の成長見通しを上方修正しました。また、20億ドル以上のコスト削減を見込んでいることを明らかにしました。

・Chipotle Mexican Grill (CMG):第1四半期のEPSは0.24ドル、売上高は前年同期比7.5%増の30億9,000万ドルとなりました。既存店売上高は0.5%増加しましたが、通期の既存店売上高見通しを横ばいとしました。牛肉や物流費のインフレによるコスト増を報告しました。

・Ford Motor (F):第1四半期のEPSは0.66ドル、売上高は398億2,000万ドルとなりました。第1四半期の利益には関税救済措置による13億ドルの利益が含まれています。EV部門で通期40億〜45億ドルの損失を見込みます。2026年の利益見通しを85億〜105億ドルに引き上げた一方で、アルミニウムを中心とするコモディティコストがさらに10億ドル増加するとの見通しを示しました。

・Carvana (CVNA):第1四半期の自動車販売台数は前年同期比40%増の87,000台となり、売上高・利益ともに市場予想を上回りました。

【ヘルスケア】

・GE HealthCare (GEHC):決算が市場予想を下回り、通期見通しを下方修正したことで株価が13%下落しました。

【資本財・エネルギー】

・Generac Holdings (GNRC):決算が市場予想を上回り、データセンター関連事業の好調を背景に、通期の純売上高見通しを上方修正しました。

・Bloom Energy (BE):決算が市場予想を上回り、ガイダンスを上方修正したことで株価が27%超上昇し、大幅な上昇を記録しました。